14 / 15
第14話
しおりを挟む
私はお父様と一緒にインガーロ男爵に抗議しに行った。
顔色の悪いインガーロ男爵のもとへ案内され、事態を正しく把握していることがわかった。
とはいえここでの抗議はお父様が主役。
私はお父様の活躍を見守ることから始まる。
「アシュー殿にはずいぶんと迷惑をかけられた訳だが、その責任はどうやって取ってくれるんだ?」
「申し訳ない」
いつぞやと同じように、インガーロ男爵はテーブルに頭をぶつける勢いで頭を下げた。
このパフォーマンスはもう見飽きたし、何の効果もないことだって実証済み。
「そんなことよりもアシュー殿にどう責任を取らせるのかだ。どうお考えなのだ?」
「…アシューにも至らないところがあったとはいえ、そちらもやり過ぎではないのか?」
「ほほう、契約を反故にするのか」
「そうは言っていない。ただ、やり過ぎではないかと言っただけだ」
「それは文句であろう?一切文句を言わない契約だったはずだが?」
「……それはそうだが、限度があるだろう」
結局アシューの親だから似たようなものね。
どういった内容の契約であっても同意したのだから履行してもらわないと困る。
契約を軽んじるならそれでも構わないけど。
それからもくだらないやり取りが続いた。
インガーロ男爵は一貫して責任を回避しようとし、お父様は契約を遵守すべきという立場を崩さなかった。
「もういいです、お父様」
「…そうか」
これ以上は無駄なので私が止めた。
私のためにお父様ががんばってくれているのだから、私がもういいと言えばそれで終わり。
でも終わりにするのはこの場の無駄なやり取りだけ。
決して許した訳ではない。
「やはりアシューは処刑にでもすべきでしたね。こうやって何度も繰り返し迷惑をかけられたのですから。下手な温情は余計な問題しか引き起こさないことを学ばせてもらいました」
「そうか、それは良い学びとなったな。ではアシュー殿は処刑か?別にこれ以上生かしておく必要もないのだろう?」
「ま、待ってくれ」
インガーロ男爵が顔色を変えて制止してきた。
まさか本気にしたの?
こんなの本気ではないし、あくまでもインガーロ男爵に要求を飲ませるための嘘でしかないのに。
「また言い訳か?どうせその場逃れのことを言い出すのだろう?」
「ち、違う!アシューとは縁を切って追放する!だから処刑なんて言わないでくれ!」
「…どうする、ルビア」
「縁切りと追放ですか。本当にそうするなら構いませんよ。でももし嘘だったら…」
これは脅しを演じているだけ。
でもセレオン様と婚約した私にはソーウェル伯爵家が味方してくれるだろう。
本当に脅しになってしまうかも。
「嘘ではない!絶対に守る!」
「…期待せずに待ってますよ」
「ルビアがそれなら構わない。頼むぞ、インガーロ男爵」
「ああ……」
インガーロ男爵は力なく同意の言葉を発した。
アシューの処分が決まったのだから用は済んだので帰ることにする。
インガーロ男爵の言葉に嘘がないかは近日中に明らかになるはず。
あえて期日を決めなかったけど、誠意があるなら近日中にアシューが縁切りされて追放される。
また言い訳するようなら…それこそインガーロ男爵家の最後かもしれない。
そうなれば必然的にアシューも終わりだし、追放されても終わるだろう。
私はどちらでも構わない。
私を裏切ったアシューにはお似合いの末路しか残されていない。
顔色の悪いインガーロ男爵のもとへ案内され、事態を正しく把握していることがわかった。
とはいえここでの抗議はお父様が主役。
私はお父様の活躍を見守ることから始まる。
「アシュー殿にはずいぶんと迷惑をかけられた訳だが、その責任はどうやって取ってくれるんだ?」
「申し訳ない」
いつぞやと同じように、インガーロ男爵はテーブルに頭をぶつける勢いで頭を下げた。
このパフォーマンスはもう見飽きたし、何の効果もないことだって実証済み。
「そんなことよりもアシュー殿にどう責任を取らせるのかだ。どうお考えなのだ?」
「…アシューにも至らないところがあったとはいえ、そちらもやり過ぎではないのか?」
「ほほう、契約を反故にするのか」
「そうは言っていない。ただ、やり過ぎではないかと言っただけだ」
「それは文句であろう?一切文句を言わない契約だったはずだが?」
「……それはそうだが、限度があるだろう」
結局アシューの親だから似たようなものね。
どういった内容の契約であっても同意したのだから履行してもらわないと困る。
契約を軽んじるならそれでも構わないけど。
それからもくだらないやり取りが続いた。
インガーロ男爵は一貫して責任を回避しようとし、お父様は契約を遵守すべきという立場を崩さなかった。
「もういいです、お父様」
「…そうか」
これ以上は無駄なので私が止めた。
私のためにお父様ががんばってくれているのだから、私がもういいと言えばそれで終わり。
でも終わりにするのはこの場の無駄なやり取りだけ。
決して許した訳ではない。
「やはりアシューは処刑にでもすべきでしたね。こうやって何度も繰り返し迷惑をかけられたのですから。下手な温情は余計な問題しか引き起こさないことを学ばせてもらいました」
「そうか、それは良い学びとなったな。ではアシュー殿は処刑か?別にこれ以上生かしておく必要もないのだろう?」
「ま、待ってくれ」
インガーロ男爵が顔色を変えて制止してきた。
まさか本気にしたの?
こんなの本気ではないし、あくまでもインガーロ男爵に要求を飲ませるための嘘でしかないのに。
「また言い訳か?どうせその場逃れのことを言い出すのだろう?」
「ち、違う!アシューとは縁を切って追放する!だから処刑なんて言わないでくれ!」
「…どうする、ルビア」
「縁切りと追放ですか。本当にそうするなら構いませんよ。でももし嘘だったら…」
これは脅しを演じているだけ。
でもセレオン様と婚約した私にはソーウェル伯爵家が味方してくれるだろう。
本当に脅しになってしまうかも。
「嘘ではない!絶対に守る!」
「…期待せずに待ってますよ」
「ルビアがそれなら構わない。頼むぞ、インガーロ男爵」
「ああ……」
インガーロ男爵は力なく同意の言葉を発した。
アシューの処分が決まったのだから用は済んだので帰ることにする。
インガーロ男爵の言葉に嘘がないかは近日中に明らかになるはず。
あえて期日を決めなかったけど、誠意があるなら近日中にアシューが縁切りされて追放される。
また言い訳するようなら…それこそインガーロ男爵家の最後かもしれない。
そうなれば必然的にアシューも終わりだし、追放されても終わるだろう。
私はどちらでも構わない。
私を裏切ったアシューにはお似合いの末路しか残されていない。
324
お気に入りに追加
2,781
あなたにおすすめの小説

元婚約者が愛おしい
碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。
留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。
フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。
リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。
フラン王子目線の物語です。

婚約者を解放してあげてくださいと言われましたが、わたくしに婚約者はおりません
碧桜 汐香
恋愛
見ず知らずの子爵令嬢が、突然家に訪れてきて、婚約者と別れろと言ってきました。夫はいるけれども、婚約者はいませんわ。
この国では、不倫は大罪。国教の教義に反するため、むち打ちの上、国外追放になります。
話を擦り合わせていると、夫が帰ってきて……。

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

殿下が望まれた婚約破棄を受け入れたというのに、どうしてそのように驚かれるのですか?
Mayoi
恋愛
公爵令嬢フィオナは婚約者のダレイオス王子から手紙で呼び出された。
指定された場所で待っていたのは交友のあるノーマンだった。
どうして二人が同じタイミングで同じ場所に呼び出されたのか、すぐに明らかになった。
「こんなところで密会していたとはな!」
ダレイオス王子の登場により断罪が始まった。
しかし、穴だらけの追及はノーマンの反論を許し、逆に追い詰められたのはダレイオス王子のほうだった。

妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます
なかの豹吏
恋愛
「わたしも好きだけど……いいよ、姉さんに譲ってあげる」
双子の妹のステラリアはそう言った。
幼なじみのリオネル、わたしはずっと好きだった。 妹もそうだと思ってたから、この時は本当に嬉しかった。
なのに、王子と婚約したステラリアは、王子妃教育に耐えきれずに家に帰ってきた。 そして、
「やっぱり女は初恋を追うものよね、姉さんはこんな身体だし、わたし、リオネルの妻になるわっ!」
なんて、身勝手な事を言ってきたのだった。
※この作品は他サイトにも掲載されています。

私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。
木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。
彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。
しかし妾の子である意網を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。
だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。
父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。
そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。
程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。
彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。
戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。
彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。

奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら
キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。
しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。
妹は、私から婚約相手を奪い取った。
いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。
流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。
そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。
それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。
彼は、後悔することになるだろう。
そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。
2人は、大丈夫なのかしら。

【完結】まだ結婚しないの? 私から奪うくらい好きな相手でしょう?
横居花琉
恋愛
長い間婚約しているのに結婚の話が進まないことに悩むフローラ。
婚約者のケインに相談を持ち掛けても消極的な返事だった。
しかし、ある時からケインの行動が変わったように感じられた。
ついに結婚に乗り気になったのかと期待したが、期待は裏切られた。
それも妹のリリーによってだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる