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第2話
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あえて詳しい用件を伝えずに訪問の予定を取り付け、私とお父様はインガーロ男爵領へと向かった。
領主の館では歓迎されたので、きっとインガーロ男爵はアシューの浮気を知らないのだろう。
そのまま応接室へと通された。
「よく来てくれた。何やら重大な話があるということだが、婚約の関係かな?」
「そうだ」
「アシューも今、呼びにやっている。間もなく来るだろう」
「では本題はアシュー殿が来てからにしよう」
そう言って雑談が始まった。
お父様もインガーロ男爵も旧知の間柄。
友人なのかもしれないけど、その関係も終わってしまうだろう。
やがてアシューがやってきた。
「お待たせしました」
「遅いぞ、アシュー。あまりルビア嬢を待たせるなよ」
「待たせてすまなかったな、ルビア」
「いえ………」
信じられなかった。
浮気しているのにアシューは平然と私に話しかけてきたのだ。
浮気相手に本気になっているのに私との関係を取り繕おうとするなんて酷い。
浮気の事実をインガーロ男爵に隠しているのは確定ね。
と思ったけど、もしかしたらインガーロ男爵も共犯かもしれない。
それは話していけば明らかになるだろうけど。
「さて、では本題に入ろうか。今日、この場を設けてもらったのはアシュー殿のことだ」
「ほう?アシューがどうかしたのか?」
「インガーロ男爵は何も知らないのか?」
「何なんだ?もったいぶるなよ」
アシューの様子を窺ったけど、相変わらず平然としている。
浮気がバレていないと本気で思っているの?
「アシュー殿、浮気は良くないな」
「…………」
お父様の発言に対し、アシューの答えは沈黙だった。
否定しないのは肯定ということ。
別にアシューが浮気しているとは一言も言っていない。
でも浮気の事実があるから何も言えなかったのだろう。
「おい、アシュー。まさか…本当なのか!?」
「……………」
取り乱したインガーロ男爵に対しても、アシューの反応は、またしても沈黙。
アシューが言わないなら私から教えてあげる。
「別に何も言わなくても調査済みなので問題ありません。アシュー様はエナという平民女性に夢中です」
「…………………」
「おい、アシュー!どうなんだ!!」
「…エナとは本気です」
「なんということだ……」
インガーロ男爵は頭を抱えてしまった。
演技とは思えないし、本当にアシューの浮気は知らなかったのだろう。
それは災難かもしれないけど、インガーロ男爵家として責任を取ってもらわないといけない。
「浮気の事実が明らかになった。インガーロ男爵家としてはどう責任を取ってくれるんだ?」
「……まずは謝罪を。知らなかったとはいえアシューが許されないことをした」
頭を下げるインガーロ男爵。
でも問題を起こした当事者であるアシューは頭を下げない。
そのことに気付いたインガーロ男爵がアシューの頭に手を伸ばし、テーブルに叩きつける勢いで無理矢理頭を下げさせた。
アシューの頭が机にぶつかりお茶がこぼれる。
幸いにも私にはかからなかったけど、もしかかっていたら問題の上塗りになってしまうのに。
これはもうインガーロ男爵のパフォーマンスなのだろう。
真摯に謝罪しているように見せかけているだけ。
頭を下げて許されるなら浮気なんてし放題じゃない。
婚約を軽んじるようなインガーロ男爵家だったのね。
「別に頭なんか下げなくてもいい。それよりも慰謝料と婚約破棄だ。文句はないよな?」
「…当然だ。慰謝料は支払うし、婚約破棄も受け入れる」
インガーロ男爵は殊勝な態度だけど、アシューは相変わらず反応が薄い。
何よりまだ謝罪の言葉の一つもない。
別に謝罪されたくもないけど、謝罪すらしないのはアシューは悪いことをしたとは思っていないからだろう。
どこまで私をコケにすれば気が済むのだろうか。
ふと、こぼれたとはいえ中身がまだ残っているお茶が目に入った。
私はカップに手を伸ばし、もう温くなったお茶をアシューに浴びせかけた。
「何をするんだ!?」
アシューが怒声を発したけど、それに屈する私ではない。
「やっと反応したわね。でもそんなことを言う前に私に言うことがあるのでは?」
「もう終わった関係だ。今更言うべきことはない」
開き直るアシューに唖然としてしまった。
謝罪すらする気がないなら、その分盛大に制裁するしかない。
「それがインガーロ男爵家の誠意か。失望したよ」
私が言いたかったことをお父様が言ってくれた。
「おい!アシュー!!謝罪しろ!!!」
「これ以上何も言うことはない。失礼する」
「おい、待て!」
立ち上がったアシューは引き止めるインガーロ男爵を無視し、そのまま退室してしまった。
アシューの気持ちは理解できたし、慰謝料や制裁についてはアシューがいなくとも問題ない。
ある意味ここからが本番。
「さて、どうケジメをつけてくれるのか、話し合おうか」
お父様が悪そうな顔で言った。
領主の館では歓迎されたので、きっとインガーロ男爵はアシューの浮気を知らないのだろう。
そのまま応接室へと通された。
「よく来てくれた。何やら重大な話があるということだが、婚約の関係かな?」
「そうだ」
「アシューも今、呼びにやっている。間もなく来るだろう」
「では本題はアシュー殿が来てからにしよう」
そう言って雑談が始まった。
お父様もインガーロ男爵も旧知の間柄。
友人なのかもしれないけど、その関係も終わってしまうだろう。
やがてアシューがやってきた。
「お待たせしました」
「遅いぞ、アシュー。あまりルビア嬢を待たせるなよ」
「待たせてすまなかったな、ルビア」
「いえ………」
信じられなかった。
浮気しているのにアシューは平然と私に話しかけてきたのだ。
浮気相手に本気になっているのに私との関係を取り繕おうとするなんて酷い。
浮気の事実をインガーロ男爵に隠しているのは確定ね。
と思ったけど、もしかしたらインガーロ男爵も共犯かもしれない。
それは話していけば明らかになるだろうけど。
「さて、では本題に入ろうか。今日、この場を設けてもらったのはアシュー殿のことだ」
「ほう?アシューがどうかしたのか?」
「インガーロ男爵は何も知らないのか?」
「何なんだ?もったいぶるなよ」
アシューの様子を窺ったけど、相変わらず平然としている。
浮気がバレていないと本気で思っているの?
「アシュー殿、浮気は良くないな」
「…………」
お父様の発言に対し、アシューの答えは沈黙だった。
否定しないのは肯定ということ。
別にアシューが浮気しているとは一言も言っていない。
でも浮気の事実があるから何も言えなかったのだろう。
「おい、アシュー。まさか…本当なのか!?」
「……………」
取り乱したインガーロ男爵に対しても、アシューの反応は、またしても沈黙。
アシューが言わないなら私から教えてあげる。
「別に何も言わなくても調査済みなので問題ありません。アシュー様はエナという平民女性に夢中です」
「…………………」
「おい、アシュー!どうなんだ!!」
「…エナとは本気です」
「なんということだ……」
インガーロ男爵は頭を抱えてしまった。
演技とは思えないし、本当にアシューの浮気は知らなかったのだろう。
それは災難かもしれないけど、インガーロ男爵家として責任を取ってもらわないといけない。
「浮気の事実が明らかになった。インガーロ男爵家としてはどう責任を取ってくれるんだ?」
「……まずは謝罪を。知らなかったとはいえアシューが許されないことをした」
頭を下げるインガーロ男爵。
でも問題を起こした当事者であるアシューは頭を下げない。
そのことに気付いたインガーロ男爵がアシューの頭に手を伸ばし、テーブルに叩きつける勢いで無理矢理頭を下げさせた。
アシューの頭が机にぶつかりお茶がこぼれる。
幸いにも私にはかからなかったけど、もしかかっていたら問題の上塗りになってしまうのに。
これはもうインガーロ男爵のパフォーマンスなのだろう。
真摯に謝罪しているように見せかけているだけ。
頭を下げて許されるなら浮気なんてし放題じゃない。
婚約を軽んじるようなインガーロ男爵家だったのね。
「別に頭なんか下げなくてもいい。それよりも慰謝料と婚約破棄だ。文句はないよな?」
「…当然だ。慰謝料は支払うし、婚約破棄も受け入れる」
インガーロ男爵は殊勝な態度だけど、アシューは相変わらず反応が薄い。
何よりまだ謝罪の言葉の一つもない。
別に謝罪されたくもないけど、謝罪すらしないのはアシューは悪いことをしたとは思っていないからだろう。
どこまで私をコケにすれば気が済むのだろうか。
ふと、こぼれたとはいえ中身がまだ残っているお茶が目に入った。
私はカップに手を伸ばし、もう温くなったお茶をアシューに浴びせかけた。
「何をするんだ!?」
アシューが怒声を発したけど、それに屈する私ではない。
「やっと反応したわね。でもそんなことを言う前に私に言うことがあるのでは?」
「もう終わった関係だ。今更言うべきことはない」
開き直るアシューに唖然としてしまった。
謝罪すらする気がないなら、その分盛大に制裁するしかない。
「それがインガーロ男爵家の誠意か。失望したよ」
私が言いたかったことをお父様が言ってくれた。
「おい!アシュー!!謝罪しろ!!!」
「これ以上何も言うことはない。失礼する」
「おい、待て!」
立ち上がったアシューは引き止めるインガーロ男爵を無視し、そのまま退室してしまった。
アシューの気持ちは理解できたし、慰謝料や制裁についてはアシューがいなくとも問題ない。
ある意味ここからが本番。
「さて、どうケジメをつけてくれるのか、話し合おうか」
お父様が悪そうな顔で言った。
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