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魂の還る惑星 第十章 Seirios -光り輝くもの-
第十章 第三話
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大して照れた様子もなく礼を言ったということは称賛されるのは珍しくないのだろう。
普通科の知り合いはほとんどいないと言っていたし、音楽科の友人や教師なら音楽に長けているのだから耳が肥えてるはずだ。
そんな人達に褒められ慣れてるとしたらやはり腕は確かなのではないのだろうか。
おそらく、ずば抜けた才能があった柊矢と比べてしまうから大したことがないように思えるだけだ。
とはいえフルートはうっかり「歌が聴こえる」などと口走ってしまったときのための予防策として祖父が物心つく頃に始めさせたもので当人が望んだわけではない。
フルート自体は好きだと言っていたがキタリステースは基本的に演奏を好むからフルートを習ってなくても遠からず何かしらの楽器を始めていただろう。
望んで始めたわけではなく、単に演奏が好きなだけだから音楽家になりたいとは思ってないのだ。
地球人なら音大付属に推薦では入れるだけの腕があれば音楽家になって名声を得たいという野心を抱くだろうがムーシコスはその手の欲求とは無縁だ。
楸矢の夢はフルート奏者として舞台に立つことではなく普通の家庭を築くことなのだから。
「前にさ、ムーシコスが愛を確かめ合う行為はムーシカを奏でることだって言ってたじゃん」
「うん」
楸矢は夕辺見たムーシケーの意識の話をした。
「魂はムーシカで出来てて、ムーシケーとムーシケーのもの全ての魂は繋がってる……すごいね」
「ホント、全員で一つの魂なんてね。しかも惑星とまでなんて」
「それもあるけど……。夕辺、小夜ちゃん二度と呪詛が作れないようにしちゃったでしょ。それって魂を変質させたって事だよね。人一人分くらいならともかく、惑星やムーシコスを含めたムーシケーのもの全ての魂って、相当な大きさ、っていうか量なんじゃない? それだけのものを変成させたって事だから……」
「そっか、全員分だとそういうことになるのか」
楸矢はそこまで思い至ってなかったようだ。
楸矢は感心したような表情を浮かべた後、話を続けた。
「基本的にはムーシコスの親はムーシコスだけど、中には親がムーシコスじゃない人もいるのかもね。夕辺の女の人は死んじゃった後だったけどムーシコスになったみたいにさ。子供が少ないのに絶滅しなかったっていうのもそのせいかも。ムーシコスって、ムーシケーと魂が繋がってる人のことだから血とか関係ないし」
「なるほど」
だとしたらムーシカは魂で聴いているのかもしれない。
だから、どれだけ離れていても、そして聴力を失っても聴こえるのだろう。
そうなると朝子や朝子の父が見ていたムーシカというのは一体なんなのかよく分からなくなるが。
魂を知覚すると言うことはないだろうし、知覚しなければ他の感覚を刺激したりすることもないだろう。
……そういえば楸矢君、よく「異星人」って言ってるな。
もしかしたら異星人の『声』が〝見えて〟いたのかもしれない。
ムーシカは魂を通して聴いているとしても、知覚としては脳内で音として処理されていたから視覚と結びついてムーシカが〝見えた〟のかもしれない。
演奏だけのムーシカはないから必ずムーソポイオスの声は聴こえる。
「あんた、前に言ったよね。パートナーが死ぬと一緒に死んじゃうことがあるって」
「うん」
「ムーシコスってパートナーとは魂が強く結びつくんだよね。殆ど一つになっちゃうくらい。魂って命の事じゃん。魂が強く結びついてるから片方が死んじゃうともう一方も死んじゃうんじゃないの? ずっと不思議だったんだよね。なんで柊兄が小夜ちゃんだけ特別扱いなのか。でも、魂が一つになっちゃうほどの相手ならそりゃ当然だよね」
楸矢から聞いた話を総合するとムーシコスとはムーシケーと魂が繋がっている人間の事で、それとは別にパートナーとは魂が一つになってしまうくらい強力に結びつく。
それは魂を共有しているといってもいい状態だ。
地球人が言うところのベターハーフ、魂の片割れである。
地球人なら厳密には魂=命ではないし、ベターハーフも必ずしも魂の片割れを指しているわけではなく、単に最愛の人のことを言う場合もある。
だがムーシコスとは魂自体を指していて、パートナーとは魂が一つになっているのだからベターハーフは文字通り魂の片割れだ。片方が命を落として魂がムーシケーへ還ってしまえば同じ魂を共有しているパートナーも一緒に逝ってしまうのも頷ける。
本体が魂なら愛を確かめ合う行為が身体的接触ではなく魂を構成しているムーシカを奏でることなのも納得がいく。
「まぁ、でも、魂と身体が別々に存在してて生き物に取り憑いてるって訳じゃないし、生まれてきた人間の魂がムーシコスで、その上で地球人の血も入ってて、魂には地球人の部分もあるから地球人らしいところが強かったり弱かったりしてるみたい。しかも、地球で地球人に交じって暮らしてるわけだから嫌でも地球人の影響は受けるだろうし」
「道理でね。帰還派は否定するだろうけど、実は残留派より帰還派の考え方の方がずっと地球人に近いんだよね」
「あ、それ、バレンタインのとき、沙陽の〝歌〟聴いて思った」
楸矢の言葉に椿矢が笑った。
「ホント、あれ、完全に〝歌〟なのに歌ってる本人は全然気付いてないんだから笑っちゃうよね」
「ムーシカとしては落第点だし、地球の歌としても、技術は評価されるかもしれないけど、地球の音楽も技術だけを判断基準に評価する訳じゃないから難しければいいってもんじゃないんだよね。技術的な部分だけを見て評価する人もいるけどさ」
「そうなんだ」
普通科の知り合いはほとんどいないと言っていたし、音楽科の友人や教師なら音楽に長けているのだから耳が肥えてるはずだ。
そんな人達に褒められ慣れてるとしたらやはり腕は確かなのではないのだろうか。
おそらく、ずば抜けた才能があった柊矢と比べてしまうから大したことがないように思えるだけだ。
とはいえフルートはうっかり「歌が聴こえる」などと口走ってしまったときのための予防策として祖父が物心つく頃に始めさせたもので当人が望んだわけではない。
フルート自体は好きだと言っていたがキタリステースは基本的に演奏を好むからフルートを習ってなくても遠からず何かしらの楽器を始めていただろう。
望んで始めたわけではなく、単に演奏が好きなだけだから音楽家になりたいとは思ってないのだ。
地球人なら音大付属に推薦では入れるだけの腕があれば音楽家になって名声を得たいという野心を抱くだろうがムーシコスはその手の欲求とは無縁だ。
楸矢の夢はフルート奏者として舞台に立つことではなく普通の家庭を築くことなのだから。
「前にさ、ムーシコスが愛を確かめ合う行為はムーシカを奏でることだって言ってたじゃん」
「うん」
楸矢は夕辺見たムーシケーの意識の話をした。
「魂はムーシカで出来てて、ムーシケーとムーシケーのもの全ての魂は繋がってる……すごいね」
「ホント、全員で一つの魂なんてね。しかも惑星とまでなんて」
「それもあるけど……。夕辺、小夜ちゃん二度と呪詛が作れないようにしちゃったでしょ。それって魂を変質させたって事だよね。人一人分くらいならともかく、惑星やムーシコスを含めたムーシケーのもの全ての魂って、相当な大きさ、っていうか量なんじゃない? それだけのものを変成させたって事だから……」
「そっか、全員分だとそういうことになるのか」
楸矢はそこまで思い至ってなかったようだ。
楸矢は感心したような表情を浮かべた後、話を続けた。
「基本的にはムーシコスの親はムーシコスだけど、中には親がムーシコスじゃない人もいるのかもね。夕辺の女の人は死んじゃった後だったけどムーシコスになったみたいにさ。子供が少ないのに絶滅しなかったっていうのもそのせいかも。ムーシコスって、ムーシケーと魂が繋がってる人のことだから血とか関係ないし」
「なるほど」
だとしたらムーシカは魂で聴いているのかもしれない。
だから、どれだけ離れていても、そして聴力を失っても聴こえるのだろう。
そうなると朝子や朝子の父が見ていたムーシカというのは一体なんなのかよく分からなくなるが。
魂を知覚すると言うことはないだろうし、知覚しなければ他の感覚を刺激したりすることもないだろう。
……そういえば楸矢君、よく「異星人」って言ってるな。
もしかしたら異星人の『声』が〝見えて〟いたのかもしれない。
ムーシカは魂を通して聴いているとしても、知覚としては脳内で音として処理されていたから視覚と結びついてムーシカが〝見えた〟のかもしれない。
演奏だけのムーシカはないから必ずムーソポイオスの声は聴こえる。
「あんた、前に言ったよね。パートナーが死ぬと一緒に死んじゃうことがあるって」
「うん」
「ムーシコスってパートナーとは魂が強く結びつくんだよね。殆ど一つになっちゃうくらい。魂って命の事じゃん。魂が強く結びついてるから片方が死んじゃうともう一方も死んじゃうんじゃないの? ずっと不思議だったんだよね。なんで柊兄が小夜ちゃんだけ特別扱いなのか。でも、魂が一つになっちゃうほどの相手ならそりゃ当然だよね」
楸矢から聞いた話を総合するとムーシコスとはムーシケーと魂が繋がっている人間の事で、それとは別にパートナーとは魂が一つになってしまうくらい強力に結びつく。
それは魂を共有しているといってもいい状態だ。
地球人が言うところのベターハーフ、魂の片割れである。
地球人なら厳密には魂=命ではないし、ベターハーフも必ずしも魂の片割れを指しているわけではなく、単に最愛の人のことを言う場合もある。
だがムーシコスとは魂自体を指していて、パートナーとは魂が一つになっているのだからベターハーフは文字通り魂の片割れだ。片方が命を落として魂がムーシケーへ還ってしまえば同じ魂を共有しているパートナーも一緒に逝ってしまうのも頷ける。
本体が魂なら愛を確かめ合う行為が身体的接触ではなく魂を構成しているムーシカを奏でることなのも納得がいく。
「まぁ、でも、魂と身体が別々に存在してて生き物に取り憑いてるって訳じゃないし、生まれてきた人間の魂がムーシコスで、その上で地球人の血も入ってて、魂には地球人の部分もあるから地球人らしいところが強かったり弱かったりしてるみたい。しかも、地球で地球人に交じって暮らしてるわけだから嫌でも地球人の影響は受けるだろうし」
「道理でね。帰還派は否定するだろうけど、実は残留派より帰還派の考え方の方がずっと地球人に近いんだよね」
「あ、それ、バレンタインのとき、沙陽の〝歌〟聴いて思った」
楸矢の言葉に椿矢が笑った。
「ホント、あれ、完全に〝歌〟なのに歌ってる本人は全然気付いてないんだから笑っちゃうよね」
「ムーシカとしては落第点だし、地球の歌としても、技術は評価されるかもしれないけど、地球の音楽も技術だけを判断基準に評価する訳じゃないから難しければいいってもんじゃないんだよね。技術的な部分だけを見て評価する人もいるけどさ」
「そうなんだ」
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