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魂の還る惑星 第九章 Ka'ulua-天国の女王-
第九章 第二話
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「これが、あんたの言ってた唄?」
「ああ」
「ホントに天女みたいな声だね。あんたにはいつもこんな綺麗な声と楽の音が聴こえてたんだ」
ずっとアトが聴きたがっていた唄だ。
地球人でも肉声なら聴こえるから小夜は歌ったのだ。
やがてアトは悲しげに西の方を見た。
多分アトの逝くべき場所が見えているのだろう。
男も寂しそうな表情で北の空を見上げている。
男の行き先は北なのだろう。おそらくムーシケーがその方向にあるのだ。
男は帰ってきた。
二人が地上に留まる理由は無くなった。
それぞれ逝くべき所へ向かわなければならない。
生きている小夜に、アトや男の視線の先にあるものは見えないが、別々の方向を見ているという事はムーシコスの魂が還る場所と地球人の逝く先は違うのだろう。
やっと再会できたのにまた離れ離れになってしまう。このままでは二人はもう二度と会えないかもしれない。
なんとかしてあげたい……。
小夜はクレーイスを握りしめた。
ムーシカが終わったとき、クレーイスから溢れ出した光に辺りが包まれた。
小夜は眩しさに思わず目を閉じた。
目を開けてないのに周囲が見えた。
いや、見えるというのは正確ではない。視覚的に見えているのではなく感じているのだ。
小夜は温かく優しい光に包まれているのが分かった。すぐ側に柊矢の存在も感じる。
ムーシケーが昔のテクネーを見せたときとは違い、地球の音や身体の感覚がない。
何も見えないし聴こえないが優しい旋律を感じる。不安は全くない。優しい温もりに包まれていて懐かしさを感じる。
完全に意識だけがここに居るんだ。
居る、というか、これは自分の意識そのものだ。
自分の意識であり、ムーシコスを含めた全てのムーシケーのもの達の意識でもあり、ムーシケーの意識でもある。そして意識とは魂の事だ。
ここは自分の意識の中であると同時にムーシケーの魂の中でもあるのだ。
ムーシケーとはこの魂のそのものだ。
そして、この魂の宿っている惑星をムーシケーと呼んでいるのだ。
ムーシケーで生まれた全てのものはムーシケーと魂が繋がっている。
その魂はムーシカで出来ていた。
ムーシカは創られると魂の一部になるから、魂が繋がっているムーシコスや、ムーシケーに存在する全てのものが知ることが出来るのだ。
ムーシカが魂に刻まれるというのはこういう事だったのだ。
ムーシコスというのは魂がムーシケーと繋がっている人を指すのだ。
そしてムーシコスの魂はパートナーが出来ると互いに強く結びつく。
だからパートナーとの絆が強いのだ。
小夜が今、柊矢の存在を感じているのも魂が強く結びついているからだ。
あの男の人の魂が還る場所はここだ。
だけど、アトさんは……。
そのときムーシケーのムーシカが伝わってきた。
小夜が目を開けると元の場所に戻っていた。柊矢と楸矢の方を向くと二人と視線が合った。
柊矢と楸矢が前奏を始めると小夜が歌い始めた。
悲しげな表情で西の方に顔を向けていたアトが驚いたように北の空を見上げた。
アトにも男と同じ場所が見えるようになったのだ。
アトが訊ねるように小夜を振り返った。
小夜は歌いながら微笑んで促すように北の空に手を向けた。
アトは嬉しそうに男の顔を見上げた。
男も笑顔を返すと手を差し出した。アトがその手を取った。
二人は手を繋ぐとムーシケーに向けて足を踏み出し消えていった。
二人の魂はムーシケーへと還っていった。
ムーシコスになりたいと望んだアトをムーシケーは迎え入れた。
ムーシコスに生まれ変わりがあるのかは分からない。
だが、もしあるとしたら次にアトが生まれてくるときはムーシコスとしてこの世に生を受けるだろう。
ムーシケーのムーシカを歌い終えると、男が創ったムーシカを柊矢がキタラで弾き始めた。楸矢がそれに続く。小夜と椿矢が一緒に歌い始めた。
風に乗って男の創ったムーシカが流れていく。
歌い終えると男が歌ったムーシカは魂に刻まれていた。
これでようやく男の創ったムーシカは魂の一部になることが出来た。
ムーシケーは地球で彷徨っていた男の魂を還らせるため、そしてムーシコスになりたいと望んでいたアトをムーシケーに迎え入れるために小夜達を寄越したのだ。
「ちょっと、兄さん、これ、どういうこと?」
不意に榎矢の声が聞こえた。いつの間にか榎矢が近くに立っていた。
「なんでその人達ムーシカ奏でてんの? これ、うちに来た依頼でしょ」
「小夜ちゃん達はクレーイス・エコーとしてムーシケーの意志を実行したんだ」
「クレーイス・エコー? 地球人の幽霊なのに? じゃあ、それで森から出られなかったんだ……」
「森?」
椿矢が問い返すと榎矢はしまったという表情を浮かべた後、渋々、
「……昨日もだけど、ムーサの森で迷子になってここに来られなかったんだよ」
と答えた。
御祓いをされてしまうとアトを迎えることが出来なくなってしまうからムーシケーが榎矢を足止めしていたのだろう。
「ああ」
「ホントに天女みたいな声だね。あんたにはいつもこんな綺麗な声と楽の音が聴こえてたんだ」
ずっとアトが聴きたがっていた唄だ。
地球人でも肉声なら聴こえるから小夜は歌ったのだ。
やがてアトは悲しげに西の方を見た。
多分アトの逝くべき場所が見えているのだろう。
男も寂しそうな表情で北の空を見上げている。
男の行き先は北なのだろう。おそらくムーシケーがその方向にあるのだ。
男は帰ってきた。
二人が地上に留まる理由は無くなった。
それぞれ逝くべき所へ向かわなければならない。
生きている小夜に、アトや男の視線の先にあるものは見えないが、別々の方向を見ているという事はムーシコスの魂が還る場所と地球人の逝く先は違うのだろう。
やっと再会できたのにまた離れ離れになってしまう。このままでは二人はもう二度と会えないかもしれない。
なんとかしてあげたい……。
小夜はクレーイスを握りしめた。
ムーシカが終わったとき、クレーイスから溢れ出した光に辺りが包まれた。
小夜は眩しさに思わず目を閉じた。
目を開けてないのに周囲が見えた。
いや、見えるというのは正確ではない。視覚的に見えているのではなく感じているのだ。
小夜は温かく優しい光に包まれているのが分かった。すぐ側に柊矢の存在も感じる。
ムーシケーが昔のテクネーを見せたときとは違い、地球の音や身体の感覚がない。
何も見えないし聴こえないが優しい旋律を感じる。不安は全くない。優しい温もりに包まれていて懐かしさを感じる。
完全に意識だけがここに居るんだ。
居る、というか、これは自分の意識そのものだ。
自分の意識であり、ムーシコスを含めた全てのムーシケーのもの達の意識でもあり、ムーシケーの意識でもある。そして意識とは魂の事だ。
ここは自分の意識の中であると同時にムーシケーの魂の中でもあるのだ。
ムーシケーとはこの魂のそのものだ。
そして、この魂の宿っている惑星をムーシケーと呼んでいるのだ。
ムーシケーで生まれた全てのものはムーシケーと魂が繋がっている。
その魂はムーシカで出来ていた。
ムーシカは創られると魂の一部になるから、魂が繋がっているムーシコスや、ムーシケーに存在する全てのものが知ることが出来るのだ。
ムーシカが魂に刻まれるというのはこういう事だったのだ。
ムーシコスというのは魂がムーシケーと繋がっている人を指すのだ。
そしてムーシコスの魂はパートナーが出来ると互いに強く結びつく。
だからパートナーとの絆が強いのだ。
小夜が今、柊矢の存在を感じているのも魂が強く結びついているからだ。
あの男の人の魂が還る場所はここだ。
だけど、アトさんは……。
そのときムーシケーのムーシカが伝わってきた。
小夜が目を開けると元の場所に戻っていた。柊矢と楸矢の方を向くと二人と視線が合った。
柊矢と楸矢が前奏を始めると小夜が歌い始めた。
悲しげな表情で西の方に顔を向けていたアトが驚いたように北の空を見上げた。
アトにも男と同じ場所が見えるようになったのだ。
アトが訊ねるように小夜を振り返った。
小夜は歌いながら微笑んで促すように北の空に手を向けた。
アトは嬉しそうに男の顔を見上げた。
男も笑顔を返すと手を差し出した。アトがその手を取った。
二人は手を繋ぐとムーシケーに向けて足を踏み出し消えていった。
二人の魂はムーシケーへと還っていった。
ムーシコスになりたいと望んだアトをムーシケーは迎え入れた。
ムーシコスに生まれ変わりがあるのかは分からない。
だが、もしあるとしたら次にアトが生まれてくるときはムーシコスとしてこの世に生を受けるだろう。
ムーシケーのムーシカを歌い終えると、男が創ったムーシカを柊矢がキタラで弾き始めた。楸矢がそれに続く。小夜と椿矢が一緒に歌い始めた。
風に乗って男の創ったムーシカが流れていく。
歌い終えると男が歌ったムーシカは魂に刻まれていた。
これでようやく男の創ったムーシカは魂の一部になることが出来た。
ムーシケーは地球で彷徨っていた男の魂を還らせるため、そしてムーシコスになりたいと望んでいたアトをムーシケーに迎え入れるために小夜達を寄越したのだ。
「ちょっと、兄さん、これ、どういうこと?」
不意に榎矢の声が聞こえた。いつの間にか榎矢が近くに立っていた。
「なんでその人達ムーシカ奏でてんの? これ、うちに来た依頼でしょ」
「小夜ちゃん達はクレーイス・エコーとしてムーシケーの意志を実行したんだ」
「クレーイス・エコー? 地球人の幽霊なのに? じゃあ、それで森から出られなかったんだ……」
「森?」
椿矢が問い返すと榎矢はしまったという表情を浮かべた後、渋々、
「……昨日もだけど、ムーサの森で迷子になってここに来られなかったんだよ」
と答えた。
御祓いをされてしまうとアトを迎えることが出来なくなってしまうからムーシケーが榎矢を足止めしていたのだろう。
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