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魂の還る惑星 第六章 Al-Shi'ra -輝く星-
第六章 第九話
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すると祖父の日記に沢口と言う知人に関する記述が見つかった。
以前、新宿で見かけた朝子の父親だ。
呪詛の依頼があったと思われる頃、沢口は知り合いの子供を養女にしていた。
それが朝子である。
彼女は養子だったのだ。
沢口の知り合い――朝子の実父――は自分もムーシコスであるにも関わらずムーシコスは邪悪だなどと言っていたらしい。
そして邪悪な存在だと言いながら歌える人間を知らないかと沢口に訊ね、自分でも捜していたらしい。
ムーソポイオスを捜していたということは朝子の父はキタリステースだったのだろう。
沢口は呪詛などとは無縁の人だったから、朝子の父がムーシコスを邪悪だと言いながらムーソポイオスを捜すと言う矛盾した行動に困惑して椿矢の祖父に話したらしい。
沢口は呪詛に限らず、ムーシカの中には何らかの効力を発揮するものがあることを知らなかったから何故ムーソポイオスが必要なのか分からなかったのだ。
祖父は迷ったが、結局ムーシカの中には効果があるものが存在することは教えず、その人は心の病ではないかと答えた。
沢口は「確かに彼はムーシカが『見える』などと言っているからその通りなのかもしれない、もう関わらないようにする」と答えた。
しかし彼のおかしな言動に愛想を尽かした妻が出て言ってしまった後、突然彼が亡くなり妻の行方も分からなかったので沢口が遺された娘(朝子)を引き取った。
朝子の母は地球人だし朝子はまだ小学生だったから、ムーシコスのことを知らない母親を捜し出して託すより自分が引き取った方がいいだろうと判断したらしい。
呪詛の依頼があったと思われる頃にムーシコスは邪悪だなどと言ってムーソポイオスを捜していた者がいたのは偶然とは思えない。
依頼を断られた直後に亡くなったならリストに載ってた人達が無事だった事も説明がつく。
だが小夜の母が子供の頃に遭った事故は朝子の父が亡くなってから十年は経っていたはずだし小夜が呪詛されたのはついこの前だ。
朝子の父が誰かと組んで呪殺を企んでいたのだとしたら計画は完遂していたはずだ。
小夜ちゃんを狙ったのは別の人物なのか?
ムーシコスを狙うような人間がそんなに大勢いるとは考えづらいが……。
とりあえず小夜の母親のことはおいといて、以前推測したとおり小夜が両親と事故に遭った後、ムーシケーが最近まで小夜のことを隠していたのだとしたら?
昔、小夜を狙った者が最近になって、ようやく彼女を見つけ出したのだとしたら?
だが十四年の歳月を経て、なお小夜を抹殺したい理由が分からない。
ムーシケーとの共感力が強いといっても基本的にムーシケーはよほどのことがない限り干渉はしてこないし、それもムーシケーやムーシカに関係のあることだけなのだから小夜がいてもいなくても大して変わらないと思うのだが。
それに霧生兄弟の両親や祖父のこともある。
霧生兄弟の両親と小夜の両親に繋がりがあったとは考えづらい。
両親の事故のとき霧生兄弟は一緒ではなかった。
つまり狙いは両親だ。片方は巻き添えかもしれないが。
楸矢が、柊矢は後見人になるとき小夜のことを調べたと言っていた。
調べた結果、霧生家と霞乃家に何らかの繋がりが見つかったという話は楸矢からは聞いてない。
柊矢が意図的に楸矢に黙っているのでないとすれば霧生家と霞乃家に接点は無かったのだ。
いずれにしろ呪詛の依頼にも、霧生家や小夜の両親の事故にも、雨宮家の者は関わってなかったし標的にもされてなかった。
だが完全に蚊帳の外だったとなると雨宮家にある資料からは辿りようがない。
椿矢は溜息を吐くと蔵に入って日記を棚に戻した。
「これ、清美ちゃんが作ったの?」
楸矢がタコさんウィンナに差した爪楊枝を摘まんだ。
小夜達は近所の公園に来ていた。
「作ったなんて大袈裟ですよ~。切って焼いただけなんですから」
「でも、美味しいよ」
「ホントですか!?」
「うん! 後はどれ作ったの?」
「後はこれです」
清美がサラダを指した。
「美味しい。清美ちゃん、料理上手いね」
「やだ~、お料理なんて言えるほどのものじゃないですよ~」
清美が頬に手を当てて、しなを作りながら言った。
小夜は呆れ顔で清美を見た。
確かに洗って切っただけのものを料理とは言わない。
ドレッシングも店で買ったものだし。
「……柊矢さん」
「ん?」
「楸矢さんも清美も、いつも私達のこと痛いって言ってますけど、あの二人もかなり痛くないですか?」
「自分の姿は見えないものだからな」
柊矢は白けた顔で弁当を食べながら答えた。
そのときデュエットのムーシカが聴こえてきた。
「家に戻って歌うか?」
「そうですね」
清美は楸矢と二人で楽しそうにしているから小夜達がいなくなっても気にしないだろう。
二人はランチボックスを片付けると家に戻った。
楸矢と清美は完全に二人の世界に入っていて柊矢と小夜がいなくなったことに気付いていなかった。
清美と盛り上がりながら弁当を食べていた楸矢は小夜の歌声で顔を上げた。
柊矢達が座っていた方に目を向ける。
つられた清美が小夜達がいたところに顔を向けて二人がいないのに気付いた。
「柊矢さんと小夜、いなくなっちゃいましたね」
「そうだね」
キタラの音が聴こえるから音楽室にいるのだろう。
折角デートのお膳立てしたのに結局家で歌うのか……。
この感覚、柊兄がヴァイオリニストになりたかったわけじゃないっていうのが本心だったって分かったときと似てる……。
デートしてなかったのは出掛けるより一緒にムーシカ奏でてる方が楽しかったってだけだったのか。
以前、新宿で見かけた朝子の父親だ。
呪詛の依頼があったと思われる頃、沢口は知り合いの子供を養女にしていた。
それが朝子である。
彼女は養子だったのだ。
沢口の知り合い――朝子の実父――は自分もムーシコスであるにも関わらずムーシコスは邪悪だなどと言っていたらしい。
そして邪悪な存在だと言いながら歌える人間を知らないかと沢口に訊ね、自分でも捜していたらしい。
ムーソポイオスを捜していたということは朝子の父はキタリステースだったのだろう。
沢口は呪詛などとは無縁の人だったから、朝子の父がムーシコスを邪悪だと言いながらムーソポイオスを捜すと言う矛盾した行動に困惑して椿矢の祖父に話したらしい。
沢口は呪詛に限らず、ムーシカの中には何らかの効力を発揮するものがあることを知らなかったから何故ムーソポイオスが必要なのか分からなかったのだ。
祖父は迷ったが、結局ムーシカの中には効果があるものが存在することは教えず、その人は心の病ではないかと答えた。
沢口は「確かに彼はムーシカが『見える』などと言っているからその通りなのかもしれない、もう関わらないようにする」と答えた。
しかし彼のおかしな言動に愛想を尽かした妻が出て言ってしまった後、突然彼が亡くなり妻の行方も分からなかったので沢口が遺された娘(朝子)を引き取った。
朝子の母は地球人だし朝子はまだ小学生だったから、ムーシコスのことを知らない母親を捜し出して託すより自分が引き取った方がいいだろうと判断したらしい。
呪詛の依頼があったと思われる頃にムーシコスは邪悪だなどと言ってムーソポイオスを捜していた者がいたのは偶然とは思えない。
依頼を断られた直後に亡くなったならリストに載ってた人達が無事だった事も説明がつく。
だが小夜の母が子供の頃に遭った事故は朝子の父が亡くなってから十年は経っていたはずだし小夜が呪詛されたのはついこの前だ。
朝子の父が誰かと組んで呪殺を企んでいたのだとしたら計画は完遂していたはずだ。
小夜ちゃんを狙ったのは別の人物なのか?
ムーシコスを狙うような人間がそんなに大勢いるとは考えづらいが……。
とりあえず小夜の母親のことはおいといて、以前推測したとおり小夜が両親と事故に遭った後、ムーシケーが最近まで小夜のことを隠していたのだとしたら?
昔、小夜を狙った者が最近になって、ようやく彼女を見つけ出したのだとしたら?
だが十四年の歳月を経て、なお小夜を抹殺したい理由が分からない。
ムーシケーとの共感力が強いといっても基本的にムーシケーはよほどのことがない限り干渉はしてこないし、それもムーシケーやムーシカに関係のあることだけなのだから小夜がいてもいなくても大して変わらないと思うのだが。
それに霧生兄弟の両親や祖父のこともある。
霧生兄弟の両親と小夜の両親に繋がりがあったとは考えづらい。
両親の事故のとき霧生兄弟は一緒ではなかった。
つまり狙いは両親だ。片方は巻き添えかもしれないが。
楸矢が、柊矢は後見人になるとき小夜のことを調べたと言っていた。
調べた結果、霧生家と霞乃家に何らかの繋がりが見つかったという話は楸矢からは聞いてない。
柊矢が意図的に楸矢に黙っているのでないとすれば霧生家と霞乃家に接点は無かったのだ。
いずれにしろ呪詛の依頼にも、霧生家や小夜の両親の事故にも、雨宮家の者は関わってなかったし標的にもされてなかった。
だが完全に蚊帳の外だったとなると雨宮家にある資料からは辿りようがない。
椿矢は溜息を吐くと蔵に入って日記を棚に戻した。
「これ、清美ちゃんが作ったの?」
楸矢がタコさんウィンナに差した爪楊枝を摘まんだ。
小夜達は近所の公園に来ていた。
「作ったなんて大袈裟ですよ~。切って焼いただけなんですから」
「でも、美味しいよ」
「ホントですか!?」
「うん! 後はどれ作ったの?」
「後はこれです」
清美がサラダを指した。
「美味しい。清美ちゃん、料理上手いね」
「やだ~、お料理なんて言えるほどのものじゃないですよ~」
清美が頬に手を当てて、しなを作りながら言った。
小夜は呆れ顔で清美を見た。
確かに洗って切っただけのものを料理とは言わない。
ドレッシングも店で買ったものだし。
「……柊矢さん」
「ん?」
「楸矢さんも清美も、いつも私達のこと痛いって言ってますけど、あの二人もかなり痛くないですか?」
「自分の姿は見えないものだからな」
柊矢は白けた顔で弁当を食べながら答えた。
そのときデュエットのムーシカが聴こえてきた。
「家に戻って歌うか?」
「そうですね」
清美は楸矢と二人で楽しそうにしているから小夜達がいなくなっても気にしないだろう。
二人はランチボックスを片付けると家に戻った。
楸矢と清美は完全に二人の世界に入っていて柊矢と小夜がいなくなったことに気付いていなかった。
清美と盛り上がりながら弁当を食べていた楸矢は小夜の歌声で顔を上げた。
柊矢達が座っていた方に目を向ける。
つられた清美が小夜達がいたところに顔を向けて二人がいないのに気付いた。
「柊矢さんと小夜、いなくなっちゃいましたね」
「そうだね」
キタラの音が聴こえるから音楽室にいるのだろう。
折角デートのお膳立てしたのに結局家で歌うのか……。
この感覚、柊兄がヴァイオリニストになりたかったわけじゃないっていうのが本心だったって分かったときと似てる……。
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