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魂の還る惑星 第五章 Sothis-水の上の星-
第五章 第四話
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柊矢は小夜の後見人になる前、小夜の父方の親戚を見つけた。
それで会いに行ったが、小夜の祖父が亡くなったと告げた途端、祖父の遺産のことを聞いてきて、その親戚には相続権がなく小夜の後見人になっても遺産の管理状況を定期的に裁判所へ報告する義務があって自由にならないと知ると引き取りを拒まれ、福祉施設に連絡するように言われた。
小夜が両親を失った時にもまず彼らに連絡が行っていた。
だが小夜の両親には財産と呼べるようなものは何もなかった。
生命保険すら掛けておらず、唯一の財産と呼べるものは車だけだったが、それは事故で鉄屑になってしまった。
だから親戚は引き取りを断り小夜は福祉施設に送られたのだ。
柊矢は元々小夜に身寄りがなければ引き取ろうと考えていたとはいえ、身内なのに金にならないという理由で拒絶した親戚の話をするときは不愉快そうだった。
祖父は福祉施設から引き取った後すぐに小夜を養子に出そうと考え、実際、話もまとまっていたようで書類も金庫の中に残っていた。
何故その養子先に引き取られなかったのか分からなかったので一応その夫妻にも会いに行って話を聞いた。
夫は既に亡くなったとのことだったので妻の方に話を聞いたのだが、それによると夫妻が引き取りに行くと幼い小夜は祖父にしがみついて泣き叫んだという。
祖父や夫妻は宥めようとしたが、どうしても嫌がったので結局祖父が育てることにしたそうだ。
事故に遭ったことや、突然親がいなくなって福祉施設に入れられたことが余りにもショックだったらしく祖父に引き取られた当初は酷く怯えていた。
いきなり泣き出すことも珍しくなかった。
祖父はもう定年退職していたので小夜を安心させようと付きっきりだったそうだ。
ようやく小夜が落ち着いた頃、夫妻が迎えに来た。
それで、また施設に連れて行かれると思って怖かったのではないかと女性が言っていたそうだ。
夫妻はその後、別の子供を養子にしていた上、夫が亡くなっているので小夜は引き取れないと言うので柊矢が後見人になった。
「柊兄が、小夜ちゃんのお母さんを養子に出したのは、娘が事故に遭ってうちの祖父ちゃんの警告を信じたからじゃないかって。自分との関係がバレないように全く連絡とらなかったんだろうって言ってた」
小夜の養父母になるはずだった夫妻の書類が残っていたのに、実際に養子に出した娘のものは一切残っていなかったのは火事で焼失したのではなく人に知られないようにするために処分したと考えるのが妥当だろう。
小夜の養子先の書類が残っていたのは自分にもしものことがあったとき引き取ってもらえるように備えていたのだ。
小夜が福祉施設にいたのは二歳の時の短い間だから覚えていないはずだが、物心ついた時から祖父と二人きりだったから未だにお祖父さんのことを口に出せないんだと思うと楸矢は付け加えた。
楸矢の言葉に椿矢は黙り込んだ。
ついこの前の交通事故の件は別だが、以前小夜を狙ったのは間違いなく帰還派だし、彼女を排除しようとしたのはムーシケーに行くのに邪魔だったからだ。
帰還派が出来たのは沙陽がムーシケーに行った後だからまだ十年も経ってない。
小夜の両親が亡くなったのは十四年前だから帰還派は関係ない。
仮に当時、既に帰還派がいたとしても二歳の小夜が邪魔するはずないのだから狙われる理由がない。
呪詛の依頼があった頃は椿矢の祖父がクレーイス・エコーだったが祖父の名前はなかったから狙いはクレーイス・エコーではないだろうがムーシコスを抹殺したい理由が分からない。
雨宮家のようにムーシカを利用して何かをするムーシコスは稀で、ほとんどは普通のムーシカを奏でているだけの無害な人間だ。
呪詛をするような危険なムーシコスを排除しようというのなら真っ先に雨宮家の人間を狙うだろう。
リストに載っていた椿矢の知り合いもムーシカの悪用はしていなかったし、小夜も祖父がムーシコスだと知らなかったようだからムーシカは奏でていなかったということだし、それなら当然利用もしていなかったはずだ。
だとすればリストに名前があった他の人達もムーシカの悪用はしていなかっただろう。
小夜の祖父と椿矢の知り合いは互いのことを知らなかったはずだ。
椿矢の知り合いが知っているムーシコスは雨宮家の人間だけで妻にも話してないと言っていた(妻は地球人で子供はいなかった)。
互いにムーシコスだと知っていたのだから名前までは明かさなくてもムーシコスの知り合いが他にもいるということを隠す必要はない。
実際、祖父は雨宮家、霍田家以外のムーシコスの知り合いを話題にしていた。
小夜の祖父の遺産は全て小夜が相続したし、知り合いの財産は妻が受け継いだから金目当てではないだろう。
だが遺産以外で小夜の祖父と椿矢の知り合いが亡くなることで得する何かがあったとは思えない。
小夜の祖父は西新宿に住んでいたが呪詛の依頼があったのはバブル期よりもずっと前だから地上げ屋はまだいなかった。
それに椿矢の知り合いは神奈川県に住んでいたから土地目当てでもないだろう。
ムーシコスを捜し出すのは地球人には無理だし、ムーシコス同士でもムーシカを奏でてるときに出会さない限り分からない。
それで会いに行ったが、小夜の祖父が亡くなったと告げた途端、祖父の遺産のことを聞いてきて、その親戚には相続権がなく小夜の後見人になっても遺産の管理状況を定期的に裁判所へ報告する義務があって自由にならないと知ると引き取りを拒まれ、福祉施設に連絡するように言われた。
小夜が両親を失った時にもまず彼らに連絡が行っていた。
だが小夜の両親には財産と呼べるようなものは何もなかった。
生命保険すら掛けておらず、唯一の財産と呼べるものは車だけだったが、それは事故で鉄屑になってしまった。
だから親戚は引き取りを断り小夜は福祉施設に送られたのだ。
柊矢は元々小夜に身寄りがなければ引き取ろうと考えていたとはいえ、身内なのに金にならないという理由で拒絶した親戚の話をするときは不愉快そうだった。
祖父は福祉施設から引き取った後すぐに小夜を養子に出そうと考え、実際、話もまとまっていたようで書類も金庫の中に残っていた。
何故その養子先に引き取られなかったのか分からなかったので一応その夫妻にも会いに行って話を聞いた。
夫は既に亡くなったとのことだったので妻の方に話を聞いたのだが、それによると夫妻が引き取りに行くと幼い小夜は祖父にしがみついて泣き叫んだという。
祖父や夫妻は宥めようとしたが、どうしても嫌がったので結局祖父が育てることにしたそうだ。
事故に遭ったことや、突然親がいなくなって福祉施設に入れられたことが余りにもショックだったらしく祖父に引き取られた当初は酷く怯えていた。
いきなり泣き出すことも珍しくなかった。
祖父はもう定年退職していたので小夜を安心させようと付きっきりだったそうだ。
ようやく小夜が落ち着いた頃、夫妻が迎えに来た。
それで、また施設に連れて行かれると思って怖かったのではないかと女性が言っていたそうだ。
夫妻はその後、別の子供を養子にしていた上、夫が亡くなっているので小夜は引き取れないと言うので柊矢が後見人になった。
「柊兄が、小夜ちゃんのお母さんを養子に出したのは、娘が事故に遭ってうちの祖父ちゃんの警告を信じたからじゃないかって。自分との関係がバレないように全く連絡とらなかったんだろうって言ってた」
小夜の養父母になるはずだった夫妻の書類が残っていたのに、実際に養子に出した娘のものは一切残っていなかったのは火事で焼失したのではなく人に知られないようにするために処分したと考えるのが妥当だろう。
小夜の養子先の書類が残っていたのは自分にもしものことがあったとき引き取ってもらえるように備えていたのだ。
小夜が福祉施設にいたのは二歳の時の短い間だから覚えていないはずだが、物心ついた時から祖父と二人きりだったから未だにお祖父さんのことを口に出せないんだと思うと楸矢は付け加えた。
楸矢の言葉に椿矢は黙り込んだ。
ついこの前の交通事故の件は別だが、以前小夜を狙ったのは間違いなく帰還派だし、彼女を排除しようとしたのはムーシケーに行くのに邪魔だったからだ。
帰還派が出来たのは沙陽がムーシケーに行った後だからまだ十年も経ってない。
小夜の両親が亡くなったのは十四年前だから帰還派は関係ない。
仮に当時、既に帰還派がいたとしても二歳の小夜が邪魔するはずないのだから狙われる理由がない。
呪詛の依頼があった頃は椿矢の祖父がクレーイス・エコーだったが祖父の名前はなかったから狙いはクレーイス・エコーではないだろうがムーシコスを抹殺したい理由が分からない。
雨宮家のようにムーシカを利用して何かをするムーシコスは稀で、ほとんどは普通のムーシカを奏でているだけの無害な人間だ。
呪詛をするような危険なムーシコスを排除しようというのなら真っ先に雨宮家の人間を狙うだろう。
リストに載っていた椿矢の知り合いもムーシカの悪用はしていなかったし、小夜も祖父がムーシコスだと知らなかったようだからムーシカは奏でていなかったということだし、それなら当然利用もしていなかったはずだ。
だとすればリストに名前があった他の人達もムーシカの悪用はしていなかっただろう。
小夜の祖父と椿矢の知り合いは互いのことを知らなかったはずだ。
椿矢の知り合いが知っているムーシコスは雨宮家の人間だけで妻にも話してないと言っていた(妻は地球人で子供はいなかった)。
互いにムーシコスだと知っていたのだから名前までは明かさなくてもムーシコスの知り合いが他にもいるということを隠す必要はない。
実際、祖父は雨宮家、霍田家以外のムーシコスの知り合いを話題にしていた。
小夜の祖父の遺産は全て小夜が相続したし、知り合いの財産は妻が受け継いだから金目当てではないだろう。
だが遺産以外で小夜の祖父と椿矢の知り合いが亡くなることで得する何かがあったとは思えない。
小夜の祖父は西新宿に住んでいたが呪詛の依頼があったのはバブル期よりもずっと前だから地上げ屋はまだいなかった。
それに椿矢の知り合いは神奈川県に住んでいたから土地目当てでもないだろう。
ムーシコスを捜し出すのは地球人には無理だし、ムーシコス同士でもムーシカを奏でてるときに出会さない限り分からない。
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