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魂の還る惑星 第一章 Sirius-シリウス-
第一章 第三話
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「ねぇ、春休みの予定は?」
休み時間香奈が小夜と清美に声をかけてきた。
「彼氏作り!」
清美の断固とした口調に小夜は苦笑した。
清美は前から彼を欲しがっていたが周りがどんどん彼氏持ちになっていくのを見てかなり焦っているようだ。
ていうか、深雪の彼の友達、ダメだったのかな?
「小夜は?」
「特にないよ」
「小夜は柊矢さんとデートでしょ」
「誘ってくれたら行くけど……」
「自分から誘えばいいじゃん」
「うーん……」
デートはしたいがどこへ行くにしろ支払いは柊矢がすることになる。
それを考えるとお茶に行くのすら躊躇ってしまう。
ドライブならガソリン代だけで済むだろう。
しかし以前、楸矢が言っていた「後部座席」というのが気になる。
今でも意味は分からないものの、ドライブに誘って変な誤解をされたらと思うとそれも言い出しづらい。
それにガソリン代程度と言ってもそもそもガソリンが安いのかどうかも分からない。
ガソリンスタンドにはガソリンの値段が書いてあるが何故か値段がいくつも表示されてる。
おそらく大根やレタスみたいに単純に安い方を選んでいいわけではないだろう。
それにどれも一リットルの値段だと思うが柊矢の車が一リットルでどれくらいの距離を走れるのかも分からない。
というか、そもそも一リットルだけで自動車が動くものなのかどうかも不明だ。
時々ニュースでガソリンの値段がどうのと言ってるのを聞くが柊矢はガソリン代に限らず金のことは口にしない。
楸矢は「東京の人って大体そうでしょ」と言っていた。
確かに祖父も東京の人間で金のことは全く口にしたことがなかった。
だから却って経済的なことが心配で高校を選ぶときも都立にした。
祖父に年金以外の収入や蓄えがあるのか知らなくて私立へ行けるだけの余裕があるのか分からなかったからだ。
聞いてみて、仮に行っていいと言われたとしても、実際に通うことになったら祖父は小夜の知らないところで苦労して金策をすることになるかもしれないと思うと訊ねることすら出来なかった。
出来れば女子校に行きたかったから私立は無理でも国立ならと思ってお茶大附属を調べてみたのだが、入学金が都立高校より高い上に授業料以外にかかる費用もかなり高額だった。
授業料が都立高と同じくらいでも、それ以外の費用が高いのでは国立大附属を選ぶ意味がない。
お茶大附属だと通学には交通費もかかる。それで自宅から徒歩で通えた今の都立高校を選んだのだ。
東京の人間でも女性は家計のやりくりがあるから多少は気にする。
小夜自身、東京育ちだがお金のやりくりには気を遣う。
だが柊矢は特に気にしている様子はないから霧生家の経済状況は全く分からない。
それに経済的に問題がないとしても居候だと思うとお金が掛かるようなことは頼みづらい。
「予定がないなら……」
「彼氏作る予定があるんだってば!」
「はいはい」
香奈は清美を軽くいなすと、
「実は親戚が春休み、一家揃って海外旅行行くからその間の留守番頼まれてるんだけど一緒に行かない? そこの近くの神社、縁結びの神様なんだよ。お参りすると彼が出来るんだって」
と本題に入った。
「ホント!?」
即座に清美と涼花が食いついた。
「去年お姉ちゃんが留守番に行ったとき、そこでお参りしたらホントに彼が出来たんだよ。お姉ちゃん、今年はデートするからあたしに留守番に行ってって言うんだよね。だから皆で一緒に行かない?」
「行く!」
清美が速攻で答えた。
「香奈のご両親や親戚はあたし達が行ってもいいって言ってるの?」
涼花が訊ねた。
「うん。うちの親、仕事があるから一緒に行けないんだ。それで一人じゃ心配だから女の子だけなら友達誘っていいって」
香奈はそう答えると、
「小夜は?」
と訊ねてきた。
「え? 私は柊矢さんに聞いてみないと……」
「柊矢さん、心配性だもんね」
清美が言った。
「そういえば、ひったくりに遭っただけで最近まで送り迎えしてもらってたよね」
「聞くだけ聞いてみてよ。人数多い方が楽しいし」
香奈が両手を合わせた。
「うん、分かった」
そう答えたものの、香奈には申し訳ないが断るつもりだった。
以前、柊矢が祖父の遺産を受け取れるように手続きをしてくれたというと、
「それなら、高校には通えるんだね」
と清美が言った。
その言葉に小夜は改めて高校の学費を調べた。
入学金と初年度の授業料は入学時に支払い済みだから関係ないとして、授業料が年間十一万八千八百円、それに諸経費がかかる。修学旅行のお金や施設使用料などだ。
小夜の通ってる高校の公式ホームページにはそれらの費用のことは載っていなかった。
さすがに都立高校の普通科で諸経費がバカ高いとは思えなかったが念の為、担任の教師に具体的な金額を聞いてみた。
先生は心配そうな表情で詳細を教えてくれた後、都の就学支援金の制度について説明してくれた。
小夜が遺産があるので大丈夫だと答えると安心したようだった。
柊矢から高校と大学にかかる費用は遺産で十分賄えると言われていた。
家賃や食費は柊矢に受け取らないと言われてしまったので遺産から引かれているのは学費と通学のための定期券代、それと月々の小遣い。
後はこの先、春物と夏物の服を買わなければならないが普段着に高いものは着ない。
正装は学生だから制服で間に合うし、以前、柊矢が買ってくれたブレザーもある。
遺産で高校の学費は問題ないし大学も私立を含め大抵のところは行かれるとのことだった。
霧生家は持ち家だから家賃を支払う必要がない代わりに固定資産税と、あとは家を建てたときやリフォームなどでローンを組んでいればローンの支払いがあるはずだが具体的にどれくらい掛かっているのか分からないから小夜が家賃を払うとしたらいくらになるのか見当がつかない。
食費に関しては材料を買いに行くのも料理しているのも自分だから、おおよその費用は分かっている。
なるべく安いものを選んで出来る限り材料が無駄にならないように作っているから食費は大した負担にはなってないはずだ。
柊矢も楸矢も贅沢はしていないがお金に困っている様子はない。
二人の高校や大学も私立だ。
大学の話をしていたとき、楸矢が私立大の医学部に行っても問題ないと言っていたから小夜一人くらい増えても経済的負担にはなってないだろう。
休み時間香奈が小夜と清美に声をかけてきた。
「彼氏作り!」
清美の断固とした口調に小夜は苦笑した。
清美は前から彼を欲しがっていたが周りがどんどん彼氏持ちになっていくのを見てかなり焦っているようだ。
ていうか、深雪の彼の友達、ダメだったのかな?
「小夜は?」
「特にないよ」
「小夜は柊矢さんとデートでしょ」
「誘ってくれたら行くけど……」
「自分から誘えばいいじゃん」
「うーん……」
デートはしたいがどこへ行くにしろ支払いは柊矢がすることになる。
それを考えるとお茶に行くのすら躊躇ってしまう。
ドライブならガソリン代だけで済むだろう。
しかし以前、楸矢が言っていた「後部座席」というのが気になる。
今でも意味は分からないものの、ドライブに誘って変な誤解をされたらと思うとそれも言い出しづらい。
それにガソリン代程度と言ってもそもそもガソリンが安いのかどうかも分からない。
ガソリンスタンドにはガソリンの値段が書いてあるが何故か値段がいくつも表示されてる。
おそらく大根やレタスみたいに単純に安い方を選んでいいわけではないだろう。
それにどれも一リットルの値段だと思うが柊矢の車が一リットルでどれくらいの距離を走れるのかも分からない。
というか、そもそも一リットルだけで自動車が動くものなのかどうかも不明だ。
時々ニュースでガソリンの値段がどうのと言ってるのを聞くが柊矢はガソリン代に限らず金のことは口にしない。
楸矢は「東京の人って大体そうでしょ」と言っていた。
確かに祖父も東京の人間で金のことは全く口にしたことがなかった。
だから却って経済的なことが心配で高校を選ぶときも都立にした。
祖父に年金以外の収入や蓄えがあるのか知らなくて私立へ行けるだけの余裕があるのか分からなかったからだ。
聞いてみて、仮に行っていいと言われたとしても、実際に通うことになったら祖父は小夜の知らないところで苦労して金策をすることになるかもしれないと思うと訊ねることすら出来なかった。
出来れば女子校に行きたかったから私立は無理でも国立ならと思ってお茶大附属を調べてみたのだが、入学金が都立高校より高い上に授業料以外にかかる費用もかなり高額だった。
授業料が都立高と同じくらいでも、それ以外の費用が高いのでは国立大附属を選ぶ意味がない。
お茶大附属だと通学には交通費もかかる。それで自宅から徒歩で通えた今の都立高校を選んだのだ。
東京の人間でも女性は家計のやりくりがあるから多少は気にする。
小夜自身、東京育ちだがお金のやりくりには気を遣う。
だが柊矢は特に気にしている様子はないから霧生家の経済状況は全く分からない。
それに経済的に問題がないとしても居候だと思うとお金が掛かるようなことは頼みづらい。
「予定がないなら……」
「彼氏作る予定があるんだってば!」
「はいはい」
香奈は清美を軽くいなすと、
「実は親戚が春休み、一家揃って海外旅行行くからその間の留守番頼まれてるんだけど一緒に行かない? そこの近くの神社、縁結びの神様なんだよ。お参りすると彼が出来るんだって」
と本題に入った。
「ホント!?」
即座に清美と涼花が食いついた。
「去年お姉ちゃんが留守番に行ったとき、そこでお参りしたらホントに彼が出来たんだよ。お姉ちゃん、今年はデートするからあたしに留守番に行ってって言うんだよね。だから皆で一緒に行かない?」
「行く!」
清美が速攻で答えた。
「香奈のご両親や親戚はあたし達が行ってもいいって言ってるの?」
涼花が訊ねた。
「うん。うちの親、仕事があるから一緒に行けないんだ。それで一人じゃ心配だから女の子だけなら友達誘っていいって」
香奈はそう答えると、
「小夜は?」
と訊ねてきた。
「え? 私は柊矢さんに聞いてみないと……」
「柊矢さん、心配性だもんね」
清美が言った。
「そういえば、ひったくりに遭っただけで最近まで送り迎えしてもらってたよね」
「聞くだけ聞いてみてよ。人数多い方が楽しいし」
香奈が両手を合わせた。
「うん、分かった」
そう答えたものの、香奈には申し訳ないが断るつもりだった。
以前、柊矢が祖父の遺産を受け取れるように手続きをしてくれたというと、
「それなら、高校には通えるんだね」
と清美が言った。
その言葉に小夜は改めて高校の学費を調べた。
入学金と初年度の授業料は入学時に支払い済みだから関係ないとして、授業料が年間十一万八千八百円、それに諸経費がかかる。修学旅行のお金や施設使用料などだ。
小夜の通ってる高校の公式ホームページにはそれらの費用のことは載っていなかった。
さすがに都立高校の普通科で諸経費がバカ高いとは思えなかったが念の為、担任の教師に具体的な金額を聞いてみた。
先生は心配そうな表情で詳細を教えてくれた後、都の就学支援金の制度について説明してくれた。
小夜が遺産があるので大丈夫だと答えると安心したようだった。
柊矢から高校と大学にかかる費用は遺産で十分賄えると言われていた。
家賃や食費は柊矢に受け取らないと言われてしまったので遺産から引かれているのは学費と通学のための定期券代、それと月々の小遣い。
後はこの先、春物と夏物の服を買わなければならないが普段着に高いものは着ない。
正装は学生だから制服で間に合うし、以前、柊矢が買ってくれたブレザーもある。
遺産で高校の学費は問題ないし大学も私立を含め大抵のところは行かれるとのことだった。
霧生家は持ち家だから家賃を支払う必要がない代わりに固定資産税と、あとは家を建てたときやリフォームなどでローンを組んでいればローンの支払いがあるはずだが具体的にどれくらい掛かっているのか分からないから小夜が家賃を払うとしたらいくらになるのか見当がつかない。
食費に関しては材料を買いに行くのも料理しているのも自分だから、おおよその費用は分かっている。
なるべく安いものを選んで出来る限り材料が無駄にならないように作っているから食費は大した負担にはなってないはずだ。
柊矢も楸矢も贅沢はしていないがお金に困っている様子はない。
二人の高校や大学も私立だ。
大学の話をしていたとき、楸矢が私立大の医学部に行っても問題ないと言っていたから小夜一人くらい増えても経済的負担にはなってないだろう。
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