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第八章 疑惑と涙と

第六話

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 見ると大きな鬼の大群がこちらへ向かってくる所だった。

 頼光が飛び降りてきてドラム缶を蹴り、横に倒した。
 膝丸で穴を開け流れ出してきたオイルの中に火のいたライターを投げ入れる。
 オイルが燃え上がった。

「綱、金時、のまま仕留しとめろ! 季武、貞光、連中を足止めしろ! 奴等やつらごん属性だ!」
 頼光の言葉に貞光は炎の中から大弓を取り出した。
 季武も背負っていた弓を手に取った。
 こちらへ向かってくる鬼を属性の矢で次々と仕留しとめていく。

 しかし鬼はかなりの大群だった。
 核を再生出来るぎりぎりのサイズまで細かく砕いたのだ。
 鬼の大群が徐々に近付いてくる。

 貞光は弓を捨てると大太刀を抜いて鬼の群れの先頭に駆け寄った。
 大太刀を横に薙ぎ、二体、三体とまとめてほふっていく。
 それでも徐々に鬼達の群れが近付いてくる。

 季武も弓を背に戻すと炎の中から大太刀を取り出して鬼の群れに向かっていった。
 季武と貞光がらした鬼を頼光が次々に射貫いていく。

 綱が振り下ろした髭切を酒呑童子がはじいた。
 酒呑童子が刀を横にいだ。
 綱は膝を折って刀をける。
 そのまま足をバネにして酒呑童子の懐に飛び込んだ。

 そのとき周囲に土煙が立ち込めた。

「今更遅い!」
 綱の髭切が酒呑童子を貫いた。
 酒呑童子が核に戻った。
 核が異界へと消える直前、何かが素早くそれを奪った。

 何!?

 綱が周囲に目を走らせたが煙で何も見えなかった。

 金時が振り下ろしたまさかりを受けきれず茨木童子の手から刀が離れた。
 金時が茨木童子を斬り上げた。
 茨木童子が真っ二つになって消滅した。

 その瞬間、金時の背後から何かが飛んできた。

「金時! 後ろだ!」
 綱が叫んだ。
 すんでのところでけた金時の脇を何かがかすめた。

 同時に何かが茨木童子の核を奪った。

「茨木童子の核を取られた!」
「くそ! 茨木童子もか! えず、残りの鬼を片付けるぞ」
 綱と金時は頼光達と戦っている鬼の群れに向かって行った。

これで最後だ!」
 綱が髭切を振り下ろした。
 鬼が真っ二つになって消えた。

 夜半を大分過ぎている。
 半日近く戦っていたため頼光以外の四人は疲弊しきっていた。

「よし、終わったな」
 頼光が膝丸を納刀した。
「頼光様、実は問題が……」

 金時が酒呑童子と茨木童子の核が盗られたむねを伝えた。

ったって如何どうやって……」
 貞光が訊ねた。
「煙で見えなかった。えず此方こちらを先に片付けた方がいかと思いまして」
 綱が頼光に言った。

 頼光は四天王と共に核が消えた辺りに向かった。
 地面に白い物がへばり付いていた。

「土蜘蛛の糸……」
「やはり土蜘蛛が手を貸してるのか」
「人の気配は無いが、一応の辺りを捜索してから帰れ。私は一旦異界むこうに戻って報告してくる」
 頼光の言葉に四天王は四方に散った。

 六花は物音で目を覚ました。
 時計を見ると真夜中をとっくに過ぎている。
 ベッドから起き上がるとカーテンから、そっとベランダを覗く。
 ベランダに季武が倒れていた。

「季武君!」
 六花は慌ててサッシを開いて季武を抱き起こした。
「息はしてるけど……」
 六花は季武を引きって部屋に入れた。

「シマ、ごめんね」
 寝ているシマを抱き上げて椅子の上に移すと苦労して季武をベッドに寝かせた。
「どうしよう。シマ、どうしたらいと思う?」
 シマは椅子の上で丸くなって寝ていて見向きもしなかった。

 血も出てないし服も破れてないから怪我ケガはしてないと思うが、六花は異界の者も血を流すのか知らない。
 服も鬼と戦っている時は道着だから、今着ている物が破れていないからと言って怪我ケガをしていないとは言い切れない。
 しかし服を脱がせても怪我ケガをしているのかどうか六花には判断出来ないだろう。
 六花はベッドサイドに置いて有るスマホを手に取って電話帳を開いた。
 貞光達に掛けてみたが誰も出なかった。

 後は……。

 季武は頼光の連絡先も六花の電話帳に登録していたが、もし異界むこうの世界にるとしたら六花のスマホでは繋がらないかもしれない。

 季武君、勝手にごめんね。

 六花は心の中で謝りながら季武のポケットからスマホを取り出し頼光の連絡先に掛けた。

「季武、如何どうした」
「よ、頼光様、夜分遅くにすみません」
「六花ちゃん!?」
 頼光が驚いたような声を出した。
「あ、あの、今、季武君が私の部屋にいるんですが……」
「こんな時間にか。まない」
「それはいんですけど、季武君、意識が無くて、どうしたらいのか……」
 六花の狼狽うろたえた声に頼光が呆れたように溜息をいた。

「疲れて寝ているだけだ。の辺に転がしておいてくれ。体力が回復すれば目を覚ますから」
「大丈夫なんですね」
「心配ない」
「……もしかして、頼光様もお疲れでしたか? その、も、申し訳ありません!」
「気にしなくてい。私は其奴そいつらより体力が有るから」
 通話が切れると六花は安堵あんどの溜息をいた。

 頼光様が疲れてるって言ってたよね。

 だとしたら食事を用意しておいた方がいだろうが今作ったら冷めてしまうかもしれない。
 悩んだ末、六花はえず用意しておく事にした。
 季武が目覚めた時にめていたら温め直せばいだけだ。
 六花は両親が物音で起きないように気を付けながら食事の用意をした。
 ベッドの横に座って季武を眺めている内に眠ってしまった。
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