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第一章 桜と出会いと
第六話
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教室に入ると弁当箱を机に置きながら左脇に下がってるはずの鞄に手を伸ばした。
手は空を切った。
あれ?
机の脇に目をやって鞄が無いのを確認する。
右側は今、席に向かいながら見ていたのだから掛かってないのは分かっている。
椅子を引いてみたがそこにも無い。
「どうかしたのか?」
季武の問いに、
「な、なんでもない」
六花は慌てて首を振ると、教室の床に視線を走らせて落ちてないのを確認してから廊下に有るロッカーに向かった。
ロッカーの中にも上にも無いし廊下にも落ちてない。
六花は途方に暮れた。
他にどこを探したらいいんだろう。
六花は嫌われていると言うより気味の悪いものとして避けられていた為イジメらしいイジメは受けた事が無い。
化物みたいな扱いだったから近付くと祟られるとでも思われていたのか何かされた事が無かった。
人に嫌がらせをされたのが初めてだからどうしたらいいか分からない。
それでもやったのは女子だろう、くらいの見当は付いた。
女子に聞いて回れば誰か教えてくれるかな。
「おい、どうしたんだ?」
季武の声に驚いて心臓が飛び出しそうになった。
いつの間にか季武が隣に立っていた。
自分が嫌われていると季武には知られたくなかった。
今は未だ。
嫌われ者だって知られたら季武君にも嫌われる。
『嫌われ者』
それだけで嫌われる理由になる事を六花は身を以て知っていた。
何度か何も知らない転校生と仲良くなれた。
けれど『嫌われ者』と知られた途端皆離れていった。
少しの間だけでも季武と仲良くしていたい。
一回でも多くお弁当を食べて欲しい。
「あ、えっと……」
ロッカーを閉めようとして辞書に気付いた。
次は英語の時間だ。
「辞書、取りに来ただけ」
英和辞典を手に取ってロッカーから出した。
季武はそれを見て納得したらしく教室へ足を向けた。
取り敢えず誤魔化せたが休み時間中に鞄を探し出さなければ次の授業を教科書やノートが無い状態で受けなければならない。
鞄を隠されたのは季武と一緒にお昼を食べたからだろうし、六花の隣は季武しか居ない。
季武に教科書を見せてもらったりしたら更に嫌がらせをされるのは目に見えている。
どうしよう……。
「如月さん」
声の方を向くと鈴木が六花の鞄を持っていた。
「これ、如月さんのだよね?」
「ありがとう。どこにあったの?」
六花は、ほっとしながら礼を言った。
「えっと……」
鈴木は口籠もった。
よほど酷いところにあったらしい。
「とにかく、ありがとう」
六花は再度礼を言った。
「良いよ。気を落とさないでね」
鈴木は慰めるようにそう言うと自分の教室に戻っていった。
「どういう事だ?」
季武の低い声に慌てて振り返った。
「鞄、誰かに隠されてたのか?」
「あ、その……」
六花は自分の顔が青褪めたのが分かった。
どうしよう。
季武君に嘘吐いたのバレちゃった。
「ご、ごめんなさい」
六花は頭を下げた。
「なんでお前が謝るんだ」
「季武君に嘘吐いたから……」
季武は不機嫌そうな表情で自分の席に戻った。
嫌われちゃった……。
六花は肩を落とした。
まさか、こんなに早く嫌われるなんて……。
六花は落ち込んだまま自分の机に鞄を掛けると席に座った。
すると石川達の笑い声が聞こえてきた。
「ねぇ、なんか臭くな~い?」
「トイレの臭いだよね~」
「後ろの席からだよね~」
「きったな~い」
石川の取り巻き達が聞こえよがしに言いながらこちらに視線を向けた。
トイレに置いてあったんだ……。
鈴木が持ってきたと言う事は男子トイレだろう。
「後ろの席」という言葉を聞いた途端、季武が椅子を蹴って立ち上がったかと思うと、石川達の方へ大股で向かっていった。
六花がびっくりして見ていると石川達が怯えた様子で後退っている。
六花には季武の後ろ姿しか見えないが、どうやら怖い顔をしているようだ。
「お前達が隠したのか!」
季武が凄い剣幕で詰め寄った。
六花は慌てて席を立つと季武の元へ向かった。
「ち、違……」
取り巻きの一人が首を振った。
「鞄を持ってきた奴はどこに置いてあったか言わなかった! 知って……」
「季武君! これ、ちょっとしたイタズラだから……」
六花がとりなしの言葉を掛けると季武が振り返った。
相当腹を立てているようだ。
かなり怖い顔をしている。
六花の怯んだ表情を見ると季武は不機嫌そうな顔で席に戻っていった。
六花は季武がすぐに矛を収めてくれた事に安堵した。
「あ、あの、ごめんね」
六花が謝ると石川達はお前が悪いとばかりに睨んできた。
六花は目を伏せると席に戻った。
元から碌に話した事も無いのだ。
更に嫌われた所でこれまでと大して変わらないだろう。
放課後を告げるチャイムが鳴った。
六花は帰り支度をしながら季武の方を窺った。
今日家に来るって言う約束、どうなったかな。
「家、どこだ?」
季武が鞄を取りながら訊ねてきた。
「中央公園の向かい」
六花は安心しながら答えた。
でも約束したから仕方なくかも。
明日からも口利いてくれるかな。
手は空を切った。
あれ?
机の脇に目をやって鞄が無いのを確認する。
右側は今、席に向かいながら見ていたのだから掛かってないのは分かっている。
椅子を引いてみたがそこにも無い。
「どうかしたのか?」
季武の問いに、
「な、なんでもない」
六花は慌てて首を振ると、教室の床に視線を走らせて落ちてないのを確認してから廊下に有るロッカーに向かった。
ロッカーの中にも上にも無いし廊下にも落ちてない。
六花は途方に暮れた。
他にどこを探したらいいんだろう。
六花は嫌われていると言うより気味の悪いものとして避けられていた為イジメらしいイジメは受けた事が無い。
化物みたいな扱いだったから近付くと祟られるとでも思われていたのか何かされた事が無かった。
人に嫌がらせをされたのが初めてだからどうしたらいいか分からない。
それでもやったのは女子だろう、くらいの見当は付いた。
女子に聞いて回れば誰か教えてくれるかな。
「おい、どうしたんだ?」
季武の声に驚いて心臓が飛び出しそうになった。
いつの間にか季武が隣に立っていた。
自分が嫌われていると季武には知られたくなかった。
今は未だ。
嫌われ者だって知られたら季武君にも嫌われる。
『嫌われ者』
それだけで嫌われる理由になる事を六花は身を以て知っていた。
何度か何も知らない転校生と仲良くなれた。
けれど『嫌われ者』と知られた途端皆離れていった。
少しの間だけでも季武と仲良くしていたい。
一回でも多くお弁当を食べて欲しい。
「あ、えっと……」
ロッカーを閉めようとして辞書に気付いた。
次は英語の時間だ。
「辞書、取りに来ただけ」
英和辞典を手に取ってロッカーから出した。
季武はそれを見て納得したらしく教室へ足を向けた。
取り敢えず誤魔化せたが休み時間中に鞄を探し出さなければ次の授業を教科書やノートが無い状態で受けなければならない。
鞄を隠されたのは季武と一緒にお昼を食べたからだろうし、六花の隣は季武しか居ない。
季武に教科書を見せてもらったりしたら更に嫌がらせをされるのは目に見えている。
どうしよう……。
「如月さん」
声の方を向くと鈴木が六花の鞄を持っていた。
「これ、如月さんのだよね?」
「ありがとう。どこにあったの?」
六花は、ほっとしながら礼を言った。
「えっと……」
鈴木は口籠もった。
よほど酷いところにあったらしい。
「とにかく、ありがとう」
六花は再度礼を言った。
「良いよ。気を落とさないでね」
鈴木は慰めるようにそう言うと自分の教室に戻っていった。
「どういう事だ?」
季武の低い声に慌てて振り返った。
「鞄、誰かに隠されてたのか?」
「あ、その……」
六花は自分の顔が青褪めたのが分かった。
どうしよう。
季武君に嘘吐いたのバレちゃった。
「ご、ごめんなさい」
六花は頭を下げた。
「なんでお前が謝るんだ」
「季武君に嘘吐いたから……」
季武は不機嫌そうな表情で自分の席に戻った。
嫌われちゃった……。
六花は肩を落とした。
まさか、こんなに早く嫌われるなんて……。
六花は落ち込んだまま自分の机に鞄を掛けると席に座った。
すると石川達の笑い声が聞こえてきた。
「ねぇ、なんか臭くな~い?」
「トイレの臭いだよね~」
「後ろの席からだよね~」
「きったな~い」
石川の取り巻き達が聞こえよがしに言いながらこちらに視線を向けた。
トイレに置いてあったんだ……。
鈴木が持ってきたと言う事は男子トイレだろう。
「後ろの席」という言葉を聞いた途端、季武が椅子を蹴って立ち上がったかと思うと、石川達の方へ大股で向かっていった。
六花がびっくりして見ていると石川達が怯えた様子で後退っている。
六花には季武の後ろ姿しか見えないが、どうやら怖い顔をしているようだ。
「お前達が隠したのか!」
季武が凄い剣幕で詰め寄った。
六花は慌てて席を立つと季武の元へ向かった。
「ち、違……」
取り巻きの一人が首を振った。
「鞄を持ってきた奴はどこに置いてあったか言わなかった! 知って……」
「季武君! これ、ちょっとしたイタズラだから……」
六花がとりなしの言葉を掛けると季武が振り返った。
相当腹を立てているようだ。
かなり怖い顔をしている。
六花の怯んだ表情を見ると季武は不機嫌そうな顔で席に戻っていった。
六花は季武がすぐに矛を収めてくれた事に安堵した。
「あ、あの、ごめんね」
六花が謝ると石川達はお前が悪いとばかりに睨んできた。
六花は目を伏せると席に戻った。
元から碌に話した事も無いのだ。
更に嫌われた所でこれまでと大して変わらないだろう。
放課後を告げるチャイムが鳴った。
六花は帰り支度をしながら季武の方を窺った。
今日家に来るって言う約束、どうなったかな。
「家、どこだ?」
季武が鞄を取りながら訊ねてきた。
「中央公園の向かい」
六花は安心しながら答えた。
でも約束したから仕方なくかも。
明日からも口利いてくれるかな。
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