タイトルは最後に

月夜野 すみれ

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第7話

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「小夜、なに作るの? クッキーは湿気しけちゃうよね?」
「そうだね。三週間以上だし、ものによってはいたんじゃうね」

 それを考えると包装されたものの方がいいのかも……。

いたみそうなものは前の日に作って夜か朝早くに入れればいいかな」

 同居してるとその手が使えるんだ……。

「でも小さいの毎日一個だけ作るのは不経済だし、かといって前の日のおやつと同じものって言うのも……。やっぱりいたまないお菓子の方がいいのかな」
 小夜が首をかしげた。
「清美、どれにするの?」
 清美は考えた末、
「これにする」
 と言って金色の星の形をしているアドベントカレンダーを手に取った。
 二人分なら予算より高めのものを選べる。
「なら、私はこれ」
 小夜が赤い四角錐のオーナメントを選んだ。

 じゃ、小夜には家の形してるのにしよ。

 会計をませて店を出ると、
「ね、小夜、中に入れるお菓子、あたしにも作れそうなら教えて」
 と頼んだ。
「うん、何入れるか考えておくね」
 清美は店の前で小夜と別れた。
 小夜の姿が人混みに消えると店に戻った。


「清美ちゃん、ホントごめん」
 楸矢が電話口の向こうで謝った。
 清美は部屋で楸矢とスマホで通話していた。
「椿さん、忙しいらしくてレポート自力でやらないといけないんだ……」
「なんのレポートですか?」
「哲学」
「……頑張って下さい」
「あはは、やっぱ清美ちゃんでも無理か~」

 楸矢の高校は音大付属だから一般科目の成績は参考程度にしか見ないのだが、それでも本来なら進学させられないと言うほどひどかったらしい。
 そんな成績でも進学出来たのはそれに目をつぶってもらえるほどフルートの腕が良かったからである。
 清美の高校は都立高の中では十位以内、国立や私立を合わせても四百校以上ある中で三十位以内に入るかどうかと言う上位校である。
 清美の高校は定期テストの結果ごとに各科目のクラス分けが変わるのだが清美と小夜は常に一番上のクラスにいる。
 だから数学や国語など一部の科目は清美が楸矢に教えられるレベルなのだ。
 音楽家を目指すならそのままフルートの腕をみがけばいのだろうが一般企業に就職したいなら勉強をしなければ就職試験には受からない。
 サラリーマンになりたい楸矢は今から必死で勉強しているのだ。

「元々あたしが手伝えそうな科目はほとんどありませんから」
 大学ともなると一般科目でも高校では習わないものが多い。
 しかも音楽科だと教養科目でも音声学や音楽療法など普通科には無い科目がある。
 そう言う科目は付け焼き刃の清美より既に高校である程度教わっている楸矢の方が詳しいはずだ。
「そういう訳で当分空き時間は出来そうにないんだ。ごめんね」
「いいんです。勉強、頑張って下さいね」
「ありがと」
 スマホを置いた清美は溜息をいた。
 アドベントカレンダーは十二月一日から開け始めるものだから十一月中に渡したい。

 小夜から渡してもらうしかないか……。

 翌朝、清美は、
「小夜、お菓子どうするか決めた?」
 登校してきたばかりの小夜に訊ねた。
「うん、いくつか日持ちしそうなのあったよ。キャンディとか」
「あたしにも作れる? チョコはともかくキャンディって作った事ないんだけど」
「キャンディもチョコと同じだよ。溶かして型に流し込むだけ」
「自信ないから作り方教えて」
「いいよ。柊矢さんのだけだと材料が余っちゃうから一緒に作ろ」
「ありがと」

 十一月三十日、清美は学校が終わると小夜と一緒に霧生家にやってきた。

「抹茶パウダーはチョコに掛けるから分かるとして食紅は何に使うの?」
「キャンディに色を付けるんだよ」
「ナッツはチョコに入れるの?」
「チョコもだけど、キャンディも。後アーモンドは砂糖掛けとシュトレン」
「柚とかオレンジは? フルーツ使ったものって傷まない?」
「ピールは保存食だから」

 清美は小夜に教わりながら二十四日分のお菓子を作った。
 小夜は数種類の材料だけで複数のお菓子を作り出してしまった。
 その中にはマカロンもあった。
 かなり苦戦したが小夜が丁寧に教えてくれたのでかろうじて失敗せずに出来た。
 マカロンは日持ちがしないので冷蔵庫の奥に隠しておき、明日開けるオーナメントの中に置き場所を書いたメッセージカードを入れる。

「ラップで巻くのはいいんだけどさ、なんか見栄え良くないよね」
 出来たお菓子を前に清美が言った。
「こうすればいいんだよ」
 小夜はチョコを一つラップの真ん中に置いて巻くと両脇をじった。
 余ったはしをハサミで切るとキャンディの包みのようになった。
「そっか~」
「これにシールを貼れば可愛くなるよ」
 小夜はそういってシールを手に取った。

 それでテーブルの上に置いてあったんだ……。

 なぜ台所にシールがあるのかと不思議だったのだ。
「すぐに食べるならラッピングペーパーでもいいんだけど何日も常温保存するとなるとラップを巻いておかないと心配だし……」
「そうだね。チョコは溶けちゃうしね」
「柊矢さんがイブまでリビングに暖房入れなくていって言ってくれたけど……」
 清美はリビングに目を向けた。

 一戸建ての一階で暖房なし……。
 クリスマスまで寒くてリビング使えないんじゃ……。
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