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18.興味津々エメちゃん未来の占い
しおりを挟む出店を見ていると、元気な少年の客引きが聞こえた。
「魔法植物コオリバナ占いはココだけやでー!おねーさん運勢の占いはどーうでーすかー!?」
店の前で少年が一生懸命私を呼んでいる。上の姪っ子マドレーヌと同じくらいだから、10歳くらいかな?
その背後では他の出店より狭いスペースに天幕のような物があり、おばあさんが座っていた。
少年の声に足を留めた私を見て、ソレイユ様が「やってみますか?」と声をかけてくれた。
占いがしたいなんて女の子の友人と来たならまだしも…と思いながら、ものすごく気になるので寄り道をお願いした。
「コオリバナの運勢占いってなあに?」
「おねーさんコオリバナは知っとる?!3日以上晴れた雪原でしか咲かへん透明の花なんやけど」
これこれめっちゃ綺麗やろー!?と少年が見せてくれた。
ガラス細工のような質感で肉厚の花びらをしている。全て透明で作り物のようなお花だ。
「これ奇跡の花って呼ばれててん!魔力を通すと色付くんやで!それが人それぞれ違うっちゅーもんでその形や色で占うんや!!」
うちのばーちゃんは巫女やから占い結果もよー当たるって評判なんや!と自慢気に言う少年に、やってみたいと申し出た。
「ソレイユ様もどうですか?」
「せっかくなので私もお願いしたいです」
そ、ソレイユ様の占い結果なんて貴重だ。少年よ、光る話術で素晴らしい仕事をしてくれたな。
お金を払ったらそれぞれコオリバナを一輪ずつもらった。
「そこの茎から魔力を通してや。魔力が少なかったら血でもかまへん」
言われた通り茎から魔力を流すと、ピンク色にどんどん色づいていき、青色や緑色、赤色なども混じって複雑な模様で染まった。
全体は緑やピンクが多め、なのかな?
魔力を流しただけなのに不思議な魔法植物…と驚きながら観察した。
ソレイユ様も染め終わっていて、彼のもまた色とりどりだが、また違った複雑な模様をしている。心なしか彼のほうがピンク味が多い気がする。紫も印象的だな~。
「ふむ、姉さんはいま楽しそうやね。けど近いうちに心が寒とうなることがありそうや。…ああ、あんまし心配することないで。そのあとの人生は"平穏"と"これまで以上の喜びと幸せ"や。この近いうちの悲しみは深そうやけど落ち込みすぎんよう気ぃつけや。あんたの未来は明るい」
どぅえええええ。今幸せだしこれからも幸せじゃないの!
結果的に幸せになれるならいいのか?悲しみってソレイユ様関係ないよね?仕事の失敗とか?
勝手に都合よく解釈して、うんうんと消化しておいた。
ソレイユ様の結果はどうだろう。
「兄さんは…まあオトコにありがちやな。自分を律することや」
おばあさんから一瞬視線を感じた気がするが、ソレイユ様のコオリバナから目を上げた時には、おばあさんはコオリバナを見ていた。気のせいだったみたい。
「この青や紫は"心配事"や"やきもきした感情"をあらわしてんねん。人生を通して見られるから感情に振り回されんようにな。…まあたまになら振り回されても問題なさそうやで。あんたは自分が思っとる以上に愛されとるで安心しぃ」
ソレイユ様が愛されてるのは当たり前だ!こんな天使のような人みんな好きになるに決まってる!!!
…ところで感情に振り回されるソレイユ様とか想像もできないけれど、そういうこともあるのだろうか。
いつも余裕たっぷりな、のほほん王子様なのに。
興味深い内容で楽しかった、と満足満足。
占いが終わったら、呼び込みに戻っていた少年がすかさず近づいてきて、「コオリバナ持って帰れるで加工したらどうや?」とお勧めしてくれた。
芸術品のような花を捨てるには勿体ないなと思っていたので、ありがたく彼の案内で隣の金属加工店に入る。
「おっちゃんコオリバナ加工2つ頼むでー!」
お店のおじさんに通じたと思ったら、ほなな!とすぐに外に出た。
次の客引きに移るのだろう、逞しい少年だ。
コオリバナに保存魔法をかけ紙に固定したあと小さな額に入れて、飾れるようにしてくれるらしい。
美しく複雑な色合いのコオリバナ。私の人生を表現していると思うと愛着が湧く。
出来上がった額を2人で並べて見てみる。
「人生を表した模様だと思うと愛着が湧きますね」
「私も同じことを考えていました」
こんなところの感想も気が合って好きだ。
加工店の会計カウンターにあったこの地域の焼き菓子をついでに2つ買って店を出た。
先程の頑張り屋の少年にお菓子を渡す。
「さっきはありがとう。とても素敵な占い屋さんね。これ、良かったらおばあさんと食べて?」
少年は驚いたあと、お菓子と私を見比べて
ニカッと笑って受け取ってくれた。
「あんたえらい綺麗な人やと思っとったけど心まで美人とかにーさんも大変やなぁ!俺も惚れてまいそうや!おおきに!!」
ポルティエ特有の明るい調子だな~。
マドレーヌと同じくらいなんだからまだ10歳前後だろうに、既に女性賛美ができている。
くすくすと笑って少年に別れを告げ、今度こそご飯を食べようと屋台へ向かう。
「うちの姪っ子と同い年くらいなのにすごくしっかりした子で驚きました」
「商魂逞しい少年でしたね。僕よりしっかりしてました」
ソレイユ様は何か考えながら頷いている。
「ソレイユ様も頼もしいですよ?」
「あはは、ありがとうございます」
不思議そうにする私に苦笑された。返事を間違えちゃったのかな?
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