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第11話 サウスローでのデート

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 ダイチとミレーニアメリーは冒険者ギルドの裏口から外に出た。
 表から出ると、騒ぎになりそうということでギルバートが手配してくれたのだ。

「メリー、まだ時間も早いし街の中を回ってみないか」

 まだ昼過ぎということもあり、ダイチはミレーニアメリーを街の散策に誘った。

「え!? 回る、回る! 一緒に回る! デートだねっ!」

 ミレーニアメリーが瞬時に食いついた。散々二人きりで行動しておいて今更だが、街中は特別ということだろうか。

「まあ、なんでもいいよ……バジリスクの討伐お疲れ様だしね。食事と買い物は、俺が持つよ。あまり高い物は手持ちが無いから無理だけど」

「ホントに! でもダイチどうしたの? らしくないね。あ! ついに私の魅力に気づいちゃったとか?」

 ニヤニヤしながら肘でダイチをウリウリするミレーニアメリー

「ほら、早くしろ。気が変わるかもしれないぞ」

 スタスタと街中に向かっていくダイチ。

「待ってよー!」

 ダイチの後を追うミレーニアメリー。いつもの光景であった。


■■■


「ほら、ここのスイーツ美味しいでしょ。見た目も可愛くて人気なのよ」

 得意気なミレーニア。
 街のメインストリートにある、お洒落な喫茶店。
 そのテラス席でマッタリ過ごしているダイチとミレーニア。
 テーブルには紅茶とお店オススメのケーキ。ケーキはシットリフワフワの生地で甘さ控えめの生クリームが添えられている。

 空は晴れていて、すぐ傍を通る石畳のメインストリートは様々な人種、職業の人々が忙しなく行き交っている。

「ああ、城でもこういうの作れるようにするのもいいかもな。それにしても、サウスローの街は初めて来たけど、思ってた以上にいいところだな」

 道行く人々は活気に満ちているし、様々な人種が仲良く生活を営んでいる様子は、ダイチが聞いていた以上だったようだ。

「だよねー、うちも将来こんな風にしていきたいんだよねー」

 ミレーニアは魔王勢力の今後に思いを馳せている。

 魔王勢力は魔王城を中心に、その周囲に生活圏を作っているが、大きな街は存在せず、せいぜい大きな村程度のものが複数あるくらいだ。それぞれの村は族長が治めていて、中には複数の村を治めている族長もいる。

 近年、魔王に協力的な族長が魔王の臣下となり勢力の連帯感は強まってきているが、非協力的な村等も多く纏まりきれてないのが現状だ。

「そうだな…………案外お前なら上手くやってしまう気もするけどな」

 通りを眺めながら呟くダイチ。

「ど、どうしたの? こういう時、熱があるっていうんだっけ?」

 目をパチクリさせるミレーニア。

「失礼だな……まあ上手くやって、毎月滞納無く家賃払ってくれよ」

 ミレーニアをじっと見つめるダイチ。

「うん……いつものダイチだ……」

 なんとなくホッとするミレーニアだった。


■■■


「お嬢様、やはり白がとても似合いますわ! 綺麗な赤い髪がとても映えてます!」

 ミレーニアを褒める従業員。
 メインストリートにある大衆向けの衣料品店だが、質が高い物も多く置いてある評判のお店だ。

「ダイチ? どう?」

 少し恥ずかしそうに、その場でクルリと回るミレーニア。
 白いワンピースがフワッと広がり、そこだけ花が咲いたかのようだ。

「ああ、道行く人が振り返りそうだな」

 冷静な様子で淡々と告げるダイチ。

「えー、他人はいいよー。ダイチはー?」

 頬を膨らませながら、ミレーニアが再度問いかける。

「定員さん、さっき試着したのと、今来てるの精算お願いします」

 ミレーニアをスルーして支払いに向かうダイチ。

「うーん、似合ってたってことでいいのかな……? そういうことにしておこう……」

 自分を納得させるミレーニアだった。


■■■


「明日、バジリスクの報酬を受け取ったら一度城に戻ろう。報酬が滞納分に足りなかったら、少しだけ依頼受けてからな」

 屋台で串焼きを買って、近くのテーブルで食べているダイチとミレーニア。

「うん、二人だけで遠出するの初めてだし、皆心配してるかな」

 串焼きを美味しそうに食べているミレーニア。大きめの串焼きだが、既に食べ終わった串が五本、ミレーニアの手元の皿にある。

「帰ったらまたロイスに絡まれそうだな」

 自分を炭にしようとした青年を思い出して、苦笑いのダイチ。

「そんなことさせないんだから、ロイスにはきつく言っておくんだからっ」

 ミレーニアの串焼きを食べる速度が上がっていく。

「まあ、ロイスのお前に対する忠誠心が本物だってことで、有り難いことではあるんだけどな」

「そうだけど……」

 何か納得いかないとばかりに、ミレーニアは追加の串焼きを食べ続ける。

「そんなに食べると太るぞ」

「なっ!? ふ、ふとっ!?」

 串焼きが美味しかったこともあり、無意識に食べ続けていたことに気づいたミレーニア。
 食べ終えるタイミングで、すかさずミレーニアの手元の皿に串焼きを追加してたダイチも大概だが。

「だ、大丈夫よ、いざとなったら空間魔法で……食べた物を……」

 わざとらしくニヤリと笑うミレーニア。

「魔法と、食べ物の無駄遣いをするとセシリアに報告しなきゃな」

「あ、嘘よ! 今のは嘘、その分明日も動くようにするから。バジリスク十体くらい倒しちゃうんだからっ」

 他愛もない話を続ける二人。
 傍から見たら仲の良いカップルにしか見えなかった。
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