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第5話 初依頼

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 サウスローに入った所で、二人は早速冒険者ギルドを目指した。

「確かあれがギルドの建物だよ」

 ミレーニアメリーがダイチに伝える。

「ちょっとワクワクしてきたな、物語だと新人冒険者は厳ついチンピラ冒険者に難癖付けられたりするらしいけど、実際どうなんだろうな」

 ダイチは不安になるような事を言ってはいるが、本人は全く心配している様子はない。隣の美少女が頼もしすぎるからだろうか。

 冒険者ギルドの建物に到着した二人は、扉を開けて中に入る。
 扉を開けた瞬間、ムワっと酒の匂いがして、二人は顔を顰める。
 扉を入ってすぐ左側が酒場、正面奥が受付のカウンターになっているようだ。

 二人がカウンターに向かって進むと周囲の視線が集中するが、特に誰にも話しかけられること無くカウンターに着いた。

「こんにちは、本日のどのようなご用件でしょうか?」

 受付カウンターに座っている女性に声をかけられる。髪の長い美人受付嬢だ。
 二人はカウンターの席につき冒険者登録を依頼する。

「冒険者登録をしたい。二人とも初めてです」

「かしこまりました、少々お待ちください」

 受付嬢はそう言って席を立ち、後ろの棚に向かった。

「そう言えば今更だけど、メリーが魔族だってことバレないかな?」

 ダイチがヒソヒソとミレーニアメリーに囁く。

「うーん、大丈夫じゃないかな。魔族の中でも私は人族と見た目同じだし、よっぽど魔力の性質を分析できる人じゃないと分からないと思うよ」

 ふーん、そういうものか、とダイチは思った。

「それに、王国と魔王勢力は比較的仲良くやってて、交易もしてるしね。あまりお互い行き来しないだけで、王国では獣人も受け入れられているから、仮にバレたとしても心配いらないと思うよ」

 まあ普通の魔族だったらそうかもなと、ダイチは納得した。さすがに魔王だと知れたらどうなるか分からないが。
 また、交易してるからこそ、通貨も同じものを使っているのである。

「お待たせしました。この紙にプロフィールを書いてください」

 受付嬢が紙とペンを持って戻ってきた。
 書式は簡単なもので、二人は名前や年齢等を紙に記入する。

「ダイチさんとメリーさんですね、よろしくお願いいたします。それでは冒険者ランクやギルドの利用方法についてはお聞きになりますか?」

「お願いします」

「では、冒険者カードを作ってる間に説明させていただきますね」

 ダイチとミレーニアメリーは二十分程、冒険者ギルドについて説明を受けた。

 受付嬢の説明によると、冒険者ランクは下からE、D、C、B、A、S、SS、SSSの8ランク制でスタートは皆Eランクからとのことだ。
 冒険者ランクはそのまま、受けられる依頼のランクに連動していて、自分の冒険者ランクから2つ上の依頼までは受けることができる。例えばEランク冒険者はCランクの依頼まで受けることができる。ただ、冒険者ランクが適正な場合、二つ上のランクの依頼は実力的に達成不可能な場合が多く、ほとんどの者が同ランクの依頼か、万全の準備をして一つ上のランクの依頼を受けるに留まるそうだ。

 難易度、報酬ともにランクが上にいく程上がっていき、Sランクともなれば英雄として扱われ、報酬も莫大なものになっていく。
 そして、ランクアップは依頼の達成状況、ギルドへの貢献度等を元にギルド側が総合的に判断して決めていく。
 ダイチ達は、その他諸々の説明を受けた――――。

 説明が一通り終わったところで、ショートヘアーの女性職員が二人分の冒険者カードを持ってきて受付嬢に渡した。ショートヘアーの女性には犬耳らしきものが生えていて、たまに片耳だけピクピクしている。

「はい、こちらが冒険者カードです。再発行には費用がかかりますから、失くさないように気をつけてくださいね」

 二人は受付嬢から冒険者カードを受け取る。
 冒険者カードは木製で、名前と通し番号らしきものが書かれている。

「ありがとうございました。この後受ける依頼を見てきますね」

 ダイチがお礼を言う。

「え? もう四時ですよ? 今から出たらすぐ日が暮れて暗くなっちゃいますよ」

 受付嬢が驚いている。初心者冒険者のため、よく分かってないと思われてるのかもしれない。

「えーと、このギルドって営業時間とかあったりするんですか?」

「いえ、二十四時間営業しています」

「それでしたら多分大丈夫です。まあ無茶な事はしませんよ」
 
 少し納得していない感じの受付嬢に背を向けて、ダイチとミレーニアメリーは依頼が貼られている掲示板へと向かった。

「どれどれ、討伐依頼だとDランクの狂走猪にCランクの殺人熊ね、結構報酬がいいのもあるな」

「Cランクは楽そうね。うちの部隊長クラスでも余裕そう……」

 ウキウキしながら掲示板を眺めるダイチと、その横で呟いているミレーニアメリー

「確かに暗くなると面倒だから、サクッと行ってチャチャっと討伐部位を取ってこよう」

「そうね、夜のデ、デートもいいけど、街に戻ってきて一緒に食事したいしね……」

 若干噛み合わない様子の二人は街の外に向かって行った。


■■■


――――――――ドゴッ

「ほら、次いくぞ」

「うん」

 二人はサウスローまで乗っていた騎竜を再度呼び、あっという間に目的地付近まで来て討伐を開始していた。

「目撃証言のあった付近をくまなくローラーしていくぞ」

「分かったわ!」

 二人は騎竜に乗ったまま林の中を捜索する。

「いた! 進行方向の左前に殺人熊ニ体! メリー任せた!」

「任せて!」

 突出したミレーニアメリーがすれ違いざまに掌から魔法を放つ。

――――ボゴッ
――――ボゴッ

 殺人熊の胴体に放たれた紫色の弾が、背後の木ごと穴を穿つ。
 三メートル程ある殺人熊ニ体がその場に崩れ落ちる。ダイチは倒れた殺人熊に駆け寄り、討伐部位の牙を剥ぎ取る。

「こんなもんかな……おーい! メリー!」

「ダイチ、ここに居るよ!」

 ダイチは騎竜で駆け抜けて行ったミレーニアメリーを呼ぼうと声を張り上げたが、ミレーニアメリーは既にすぐ傍まで戻ってきていた。

「さすがミレ・・だな、俺が一人で殺人熊と闘ったら十中八九殺されるだろうな」

「大丈夫! ダイチは私がすぐ傍で守り続けるから! ずっと……」

 ミレーニアメリーの告げた言葉が愛の告白のようでいて、とても男前だった。


■■■


 ダイチとミレーニアメリーが街に着いたのは、丁度日が暮れたばかりの時間だった。
 二人はギルドに戻り、受付のカウンターに向かう。

「あら、おかえりなさい。途中で暗くなったから戻ってきたんですね」

「いや、いくらか討伐できて討伐証明部位はこのバッグの中に入ってるよ」

 ダイチがショルダーバッグを指して告げる。

「ええと……出てからまだ三時間くらいしか経ってないですよ……あ、もしかして途中で運良くはぐれた討伐対象が一体居たとかですか?」

 訝しげにしていた受付嬢は、途中でさも事情が分かったという風に尋ねてきた。

「いくつか入ってるんだけど、ここで出していいの?」

 ショルダーバッグをジャラっと揺らすダイチ。

「でしたら、すぐそこの机で確認しますね」

 そんなに多いわけがないと思っているが、そこはプロの対応、受付嬢はすぐにダイチ達を確認用の机に案内した。
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