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第4話 ミレーニアの偽名
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「今日これから、借金をお前の体で返してもらうからな!!」
「え!? 今日これからすぐなの?? こ、心の準備がまだ……」
ミレーニアは顔を真っ赤にして、オロオロと慌てふためいている。
「……嫌ってわけじゃないのよ、ただ順序ってものが……あったり……なかったり……」
ダイチに聞こえないくらい小さな声でミレーニアがぶつぶつ呟いている。
サキュバスのお姉様セシリアがミレーニアを見てニヤニヤしている。
「ふぅ……お前ら何か勘違いしてるようだけど、ミレには俺に付き添ってもらって日銭稼ぎに行くって事だからな」
「へっ?」
「前から一度行ってみたかったんだが、西の王国に行って冒険者やるんだよ。ミレには頑張って依頼をこなしてもらうからな」
「う、うん……」
自分の考えてた方向性が違ったことに気付き、戸惑うミレーニア。
「帝国は……今後問題になっていきそうだけど、今はどうしようもないから放置しつつ監視でどうだ?」
「わ、私もそれがいいと思うわ」
ダイチの提案に同意するミレーニア。
「じゃあ、ミレが魔王なんだから、皆に帝国の監視を徹底するように伝えて。それと暫く俺とミレは城を空けるから、そのこともよろしく」
「ふ、二人きりでお出かけ?」
「なんだ? 嫌なのか?」
「い、嫌じゃない! むしろ……」
ミレーニアは借金を返す為のお出かけということを忘れ、目をキラキラさせている。
「ふっ……」
そのミレーニア様子を見て、ダイチが微笑ましいものを見るような目をする。
「じゃあ、セシリア、城は任せるよ」
ダイチはサキュバスお姉様に魔王城のことをお願いする。
「二代目の方こそ、ミレーニア様をよろしくね」
微笑みながらダイチに返す。相変わらず一々色気があるグラマラスお姉様。
「あーそうだ、ロイスがその内戻って来ると思うから、適当に言っておいて」
ダイチの発言に、「またいつもみたいに何かじゃれ合ったのね」と理解したセシリアは、了解したとばかりに微笑んだ。
■■■
魔王城の北方には帝国があるが、魔王城から西に進むとルナテイル王国、通称「王国」がある。
王国は様々な種族が混在していて、その様相はさながら人種のるつぼである。
城下町と各都市間で盛んな商業、冒険者ギルドという独立組織を中心に、各都市で活躍する冒険者達。
誰もが成功を夢見て集まる「ルナテイルドリーム」と呼ばれるものがそこにある。
「もうすぐ着くわよー」
ダイチとミレーニアはそれぞれ、小型の騎竜に跨り王国の一都市に向かって草原を駆けている。
「今まで、ほとんど魔王城から離れたことが無かったから楽しみだよ。ミレは王国に行ったことあったよな」
「うん、王国は甘~いお菓子や美味しい料理がいっぱいあるのよ。ダイチに……も……」
食べ物ばかりの魔王様に、ダイチのジト目が向いている。
「それより俺は、書物や人の話でしか知らない冒険者に興味がある。今回の目的も依頼達成の報酬だし、着いたらすぐに冒険者登録するぞ」
今回の主目的は冒険者報酬による、ミレーニアのダイチへの借金返済。
雑談している間に二人は、ルナテイル王国の都市「サウスロー」まであと少しという所まで来た。
「念の為、この辺りから歩こうと思うけどいいか?」
「そうだね、このまま城門まで行っても問題ないとは思うけど、もうすぐだしね」
二人は騎竜から降り、ミレーニアが騎竜の背中をポンポンと叩くと、二頭とも嬉しそうにして来た道の方向に駆けて行った。
「よし、行こう」
「うん!」
嬉しそうにニコニコしながら、ダイチの後をついていくミレーニア。
他愛も無い会話をしながら仲良く並び歩く様子は、初々しいカップルの姿そのものだった。
■■■
「もうすぐだね」
サウスローに入る為、城門前の列に並ぶダイチとミレーニア。
「これ、城門で止められたりしないだろうな」
「多分大丈夫だよ、前に来た時もすんなりだったし」
列には様々な人々が並んでいる。人種も多種多様で、ダイチの後ろには蜥蜴を人化させたような人が並んでいる。
ダイチにとっては珍しいものばかりで、時折キョロキョロと興味深そうに周囲を見回している。
「そう言えば、名前とかどうすんの? 俺はそのままでもいいけど、ミレは万が一の事を考えたら不味いだろ?」
他の人に聞こえないように、ダイチはミレーニアの耳元で囁く。魔王の名前と同じというのは要らぬトラブルを引き寄せる可能性があるからだ。
「あんっ…………ゴメン……。そうだよね、どうしようか?」
ミレーニアは、ブルッと震えて悩ましい声を上げた。耳は弱かったのだろうか。
「…………コホン。 『アドラメリア』から取って『ラメー』でどうだ?」
ミレーニアの反応をダイチはスルーして偽名を提案する。
「らめー? …………なんかこう、アレじゃない? 何かもっと他に無いかな……」
ミレーニアは何やら不服そうだ。
「じゃあ、『メリー』は? これも同じく『アドラメリア』から」
「メリー、メリー、メリー……いいかも、響きもいいね」
「ああ、いつもの癖でミレって呼んじゃっても、ギリ誤魔化せそうだしな。それじゃあ今から王国にいる間はメリーな」
「うん!!」
名前を付けてもらったことが嬉しいのか、ミレーニア改めメリーはニコニコしている。獣耳と尻尾があったら、耳ピコピコの尻尾パタパタ状態だ。
■■
そうこうしてる内に列の一番前に来た。
「次!」
城門の衛兵らしき人に声を掛けられる。
「「はい」」
ダイチとミレーニアは前に出る。
「名前は?」
衛兵に質問される。
「僕はダイチ、彼女はメリーです」
「この街には何をしに?」
「二人とも冒険者になりたくて来ました」
あらかじめ二人で決めておいた事を伝える。
「身分証は持ってるか? 持ってなかったら一人銀貨一枚であそこの詰所で発行してもらうことになる」
衛兵が城門脇の小屋を指差す。
「二人とも持ってないので、発行してもらうことにします」
そう言って二人は詰所に向かう。
「しかし、列に並んでる時から思ってたけど、ミ……メリーの方をジロジロ見てくる男が多いな……。まあ大人しくしてれば美人だからな……」
「えっ? ダイチも美人だと思ってくれてるの?? もしかして、ヤキモチだったりする?」
「大人しくしてれば」という言葉はスルーしたようだ。
「いや、面倒事に巻き込まれるのが嫌なだけだ」
ミレーニアはダイチに即答された事で、しょんぼりと肩を落とす。
その後、二人は詰所で無事に身分証を発行してもらい、サウスローの街に入った。
「え!? 今日これからすぐなの?? こ、心の準備がまだ……」
ミレーニアは顔を真っ赤にして、オロオロと慌てふためいている。
「……嫌ってわけじゃないのよ、ただ順序ってものが……あったり……なかったり……」
ダイチに聞こえないくらい小さな声でミレーニアがぶつぶつ呟いている。
サキュバスのお姉様セシリアがミレーニアを見てニヤニヤしている。
「ふぅ……お前ら何か勘違いしてるようだけど、ミレには俺に付き添ってもらって日銭稼ぎに行くって事だからな」
「へっ?」
「前から一度行ってみたかったんだが、西の王国に行って冒険者やるんだよ。ミレには頑張って依頼をこなしてもらうからな」
「う、うん……」
自分の考えてた方向性が違ったことに気付き、戸惑うミレーニア。
「帝国は……今後問題になっていきそうだけど、今はどうしようもないから放置しつつ監視でどうだ?」
「わ、私もそれがいいと思うわ」
ダイチの提案に同意するミレーニア。
「じゃあ、ミレが魔王なんだから、皆に帝国の監視を徹底するように伝えて。それと暫く俺とミレは城を空けるから、そのこともよろしく」
「ふ、二人きりでお出かけ?」
「なんだ? 嫌なのか?」
「い、嫌じゃない! むしろ……」
ミレーニアは借金を返す為のお出かけということを忘れ、目をキラキラさせている。
「ふっ……」
そのミレーニア様子を見て、ダイチが微笑ましいものを見るような目をする。
「じゃあ、セシリア、城は任せるよ」
ダイチはサキュバスお姉様に魔王城のことをお願いする。
「二代目の方こそ、ミレーニア様をよろしくね」
微笑みながらダイチに返す。相変わらず一々色気があるグラマラスお姉様。
「あーそうだ、ロイスがその内戻って来ると思うから、適当に言っておいて」
ダイチの発言に、「またいつもみたいに何かじゃれ合ったのね」と理解したセシリアは、了解したとばかりに微笑んだ。
■■■
魔王城の北方には帝国があるが、魔王城から西に進むとルナテイル王国、通称「王国」がある。
王国は様々な種族が混在していて、その様相はさながら人種のるつぼである。
城下町と各都市間で盛んな商業、冒険者ギルドという独立組織を中心に、各都市で活躍する冒険者達。
誰もが成功を夢見て集まる「ルナテイルドリーム」と呼ばれるものがそこにある。
「もうすぐ着くわよー」
ダイチとミレーニアはそれぞれ、小型の騎竜に跨り王国の一都市に向かって草原を駆けている。
「今まで、ほとんど魔王城から離れたことが無かったから楽しみだよ。ミレは王国に行ったことあったよな」
「うん、王国は甘~いお菓子や美味しい料理がいっぱいあるのよ。ダイチに……も……」
食べ物ばかりの魔王様に、ダイチのジト目が向いている。
「それより俺は、書物や人の話でしか知らない冒険者に興味がある。今回の目的も依頼達成の報酬だし、着いたらすぐに冒険者登録するぞ」
今回の主目的は冒険者報酬による、ミレーニアのダイチへの借金返済。
雑談している間に二人は、ルナテイル王国の都市「サウスロー」まであと少しという所まで来た。
「念の為、この辺りから歩こうと思うけどいいか?」
「そうだね、このまま城門まで行っても問題ないとは思うけど、もうすぐだしね」
二人は騎竜から降り、ミレーニアが騎竜の背中をポンポンと叩くと、二頭とも嬉しそうにして来た道の方向に駆けて行った。
「よし、行こう」
「うん!」
嬉しそうにニコニコしながら、ダイチの後をついていくミレーニア。
他愛も無い会話をしながら仲良く並び歩く様子は、初々しいカップルの姿そのものだった。
■■■
「もうすぐだね」
サウスローに入る為、城門前の列に並ぶダイチとミレーニア。
「これ、城門で止められたりしないだろうな」
「多分大丈夫だよ、前に来た時もすんなりだったし」
列には様々な人々が並んでいる。人種も多種多様で、ダイチの後ろには蜥蜴を人化させたような人が並んでいる。
ダイチにとっては珍しいものばかりで、時折キョロキョロと興味深そうに周囲を見回している。
「そう言えば、名前とかどうすんの? 俺はそのままでもいいけど、ミレは万が一の事を考えたら不味いだろ?」
他の人に聞こえないように、ダイチはミレーニアの耳元で囁く。魔王の名前と同じというのは要らぬトラブルを引き寄せる可能性があるからだ。
「あんっ…………ゴメン……。そうだよね、どうしようか?」
ミレーニアは、ブルッと震えて悩ましい声を上げた。耳は弱かったのだろうか。
「…………コホン。 『アドラメリア』から取って『ラメー』でどうだ?」
ミレーニアの反応をダイチはスルーして偽名を提案する。
「らめー? …………なんかこう、アレじゃない? 何かもっと他に無いかな……」
ミレーニアは何やら不服そうだ。
「じゃあ、『メリー』は? これも同じく『アドラメリア』から」
「メリー、メリー、メリー……いいかも、響きもいいね」
「ああ、いつもの癖でミレって呼んじゃっても、ギリ誤魔化せそうだしな。それじゃあ今から王国にいる間はメリーな」
「うん!!」
名前を付けてもらったことが嬉しいのか、ミレーニア改めメリーはニコニコしている。獣耳と尻尾があったら、耳ピコピコの尻尾パタパタ状態だ。
■■
そうこうしてる内に列の一番前に来た。
「次!」
城門の衛兵らしき人に声を掛けられる。
「「はい」」
ダイチとミレーニアは前に出る。
「名前は?」
衛兵に質問される。
「僕はダイチ、彼女はメリーです」
「この街には何をしに?」
「二人とも冒険者になりたくて来ました」
あらかじめ二人で決めておいた事を伝える。
「身分証は持ってるか? 持ってなかったら一人銀貨一枚であそこの詰所で発行してもらうことになる」
衛兵が城門脇の小屋を指差す。
「二人とも持ってないので、発行してもらうことにします」
そう言って二人は詰所に向かう。
「しかし、列に並んでる時から思ってたけど、ミ……メリーの方をジロジロ見てくる男が多いな……。まあ大人しくしてれば美人だからな……」
「えっ? ダイチも美人だと思ってくれてるの?? もしかして、ヤキモチだったりする?」
「大人しくしてれば」という言葉はスルーしたようだ。
「いや、面倒事に巻き込まれるのが嫌なだけだ」
ミレーニアはダイチに即答された事で、しょんぼりと肩を落とす。
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