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第13話「ドラゴン連れて、狩りに行こう」

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――俺は今、アンデッドモンスターの群れに囲まれている。

 具体的には骸骨の剣士、いわゆるスケルトンの集団だ。

 カチャカチャと音を立てて、奴らは距離を詰めてくる。

「くそっ! 眠れよっ!!」

 さっきから睡眠魔法を連発しているけど、まったく効いてくれない。

 生き物ではないから効かないってことかよ。

「もういっそ永遠に眠ってろよ……」

 永眠すべき存在、死そのものが向かってくる不条理に愚痴がこぼれる。

 レーカは大丈夫だろうか……。

 そう思ったところで、スケルトンの剣が俺の胸に突き立てられた――。 


◇◇◇


「イテッ!?」

 痛みで目を覚ました。

 あれ? ええとここは……?

 昨夜は村長宅でもてなしを受けて……、客間を借りてそこで寝たんだっけ……。

 ええと……、スケルトンは? 俺を刺した剣は?

 ふぅ、夢だったのか……。

 悪夢のせいか、胸の鼓動が早くなっているのを感じる。

 一息ついて周囲を見回すとそこは客間だった。 

 あれ? じゃあ胸の痛みは?
 たしか痛みで目が覚めたんだけど……。

 くるまっていた毛布をめくってみる。

「…………」

 お前だったか……。

 そこにはニット帽が取れ、角をむき出しにしたままスヤスヤと眠るレーカがいた。

 どうやらレーカの角が俺の胸に刺さったらしい……。

 離れて寝てたのにどうしてと思い周囲を見回すと、離れたところに毛布にくるまるリリアが見える。
 レーカはリリアと一緒に寝ていたはずだ。

 ということは寝ぼけてか、わざとか分からないけど、この寝坊助ドラゴンが人の寝ているところに潜り込んできたということだ。

「こっちは悪夢見てるのに、
 気持ち良さそうに寝て……」

 レーカは幸せそうに、ムニャムニャしながら寝ている。

 はぁ……、この憎めない感じなのがまたね……。 

 この駄目可愛い感じは、ズルいと思う。

 “可愛いは正義”なセシルさんの気持ちも分からなくはないな……。

 けど、こうやって起こすのくらいは許されると思うんだ。

 レーカの両方の頬をつかんで同時に左右に引っ張った、ちょっと強めになったのはご愛敬。

「んー!?」

 レーカは驚いたようにシュタッと飛び起きた。

「おはよう」

 キョロキョロしているレーカに声をかけてみる。

「ネロ? おはよう……、
 あれ、マンムースの肉は?
 お肉が消えたわ」

 夢の中でも食べてたのかよ……。

 しかもマンムースって、魔物図鑑で見たことあるけど、建物なみに大きい魔物だったはずだ――。


◇◇◇


 討伐報酬の受け取りまで、数日待つことになったので、今日はイメリアの森に狩りにいくことにした。

「いっぱい狩ってやるんだからねっ」

 レーカのやる気は十分だ。森の魔物を狩り尽く……いや、食べ尽くさないでよ。

「可愛い魔物がいるといいな」

 イメリアの森は危険な魔物はいないということで、セシルさんもいくことになった。
 腰にボウガンを提げて、なかなか様になってるじゃないか。
 しかし、可愛い魔物って……。危険なことをしないのを祈るばかりである。

 ハイキング気分のまま、俺たちはイメリアの森に向かった。


◇◇◇


 俺たちは森へ向かって草原を歩いている。

 馬は休ませているので、今日は俺が荷車を引いている。
 獲物を持ち帰るためだ。
 
 なんとなく街で雑用をしていたときを思い出す。

 レーカは荷車の上でアルを抱えている。

 俺はドラゴンを荷車で運んだことあるんだ、と自慢しても嘘にならないよね。
 ドラゴンと羊が仲良さそうでなによりだ。

 帰りは自分で歩いてね。
 
「うーん、話を聞けば聞くほど、タナリアの森って怪しいねー」

 昨夜、村長宅で聞いた森の話を伝えたところ、アルが難しそうな顔をして呟いている。
 普段の顔との差はほとんどないけど、付き合いの長い俺は、なんとなくその違いが分かる。

「まあな、だけど村長が何かを隠しているわけでもなさそうなんだよな……」

 昨日、そんな感じには見えなかった。

「村に入った若者たちがアンデッドに襲われたのに、
 無事に生きていたというのも不思議だよね」

「ああ、アンデッドにたかられた日には、
 殺されてそいつもアンデッドになるっていうのが、常識だしな」

「黒い木、タナ……リア……、
 嫌なことを思い出すなあ」

 アルが遠い目をしている。こう見えてアルはかなり長い時を生きている。
 はるか昔を思い出しているかのようだ。

「どうしたんだ?」

「いやあ、僕ってヒュプノス様の眷属じゃん。
 ヒュプノス様と仲の悪い神様のことが、頭に浮かんだんだよね。
 昔、僕もあの人たちの争いに巻き込まれたことがあってさ」

 きっと気のせいだと、アルが首をブンブンと振っている。
 アルの言う昔っていうのは、本当の昔だったりするからな。

 俺もアルの昔のこと全てを知っているわけではない。

 振動するモコモコが可愛いのか、セシルさんが目をキラキラさせながら、アルを見ている。

 いや、どちらかというとギラギラかもしれない。

 まあ、タナリアの森に近づかなければ、何も問題はないだろう――。
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