9 / 21
第9話「寝るときは尻尾隠さず」
しおりを挟む
そんなこんなで旅の初日は順調に進み、俺たちは日が暮れる前に街道沿いの村に到着した。
「今日はここで一泊するわよ」
旅の日程管理はセシルさんに任せている。
俺は旅なんてしたことなかったし、レーカはそもそもそういうの気にしたことないみたいだからね。
レーカの頭の角を隠すために、セシルさんの商品の中から帽子をもらった。
お金を払うって言ったのに、レーカちゃんへのプレゼントだからと嬉しそうに帽子をくれた。
帽子はとても似合っていて、貴族のお嬢様みたいに可愛らしかったよ。
アルには亜空間に戻ってもらった。精霊を連れているのを見られると村の人に騒がれそうだしね。
「この村には宿屋とかあるんですか?」
「街道沿いの街や村には旅人用の宿屋があるものよ。
仮に満室だとしても、村の広場を借りるだけでも、
村の外での野宿より安全だしね」
おお、セシルさんが久しぶりに頼りになる感じだ。
最近、可愛いものを愛でてばかりだったからな。
「もしかして、この村にも知り合いが?」
「ええ、この村も行商ルートだから、よく知っているよ。
村長に会ってくるからちょっとここで待っててね」
そう言って、セシルさんは村の中心の方へ向かっていった。
待つこと二十分程、セシルさんが戻ってきた。
無事に宿屋が取れたとのことで、俺たちは宿屋の部屋まで案内された。
借りたのは二階の一部屋で、広めの部屋にベッドが二つ。
一休みしてから、俺とレーカは宿屋の食堂で夕食をとることにした。
セシルさんは、商品の一部をこの村に売り渡すということで、外に出て行った。
「そういえば、聞こうと思っていたんだけど、
レーカはその姿だと強さはどれくらいなんだ?」
俺とレーカは、食堂の隅っこの方で夕飯を食べている。
何の肉だか分からないが、肉を焼いたものと野菜の入ったスープだ。
「ん、あたしの強さが気になるの?」
レーカが肉を美味しそうに食べながら、顔をこちらに向けてくる。
ちょっと嬉しそうにしているのは、聞いてほしいからかな。
「まあね。実際レーカってドラゴンの中でも、結構な方なんじゃない?
なんか赤い鱗とか綺麗で格好良いしさ」
周囲に人がいないのを見計らって小声で問いかける。本心だが、ちょっと煽ててみる。
「そ、そう! ネロには分かるのね。
なかなか見る目があるわね」
レーカが、明らかに上機嫌になってニマニマしている。
チョロ可愛いではないか。
「レーカは、どんなドラゴンなの?」
「あたしはドラゴンの中でも上位竜で凄いのよ。
魔法もいろいろ使えるわ。
あたしはまだ幼竜だけど、たいがいの敵はチュドーンよ」
あの大きさでまだ幼竜なんだ……。成竜になったらどんだけ大きいんだよ。
確かに人化の魔法とか伝説やおとぎ話みたいだもんな。
上位竜っていうのも納得だ。
チュドーンでは強さが分からないけど、まあとんでもなく強いのは確かだろう。
「ちなみに、今の姿でも魔物とか倒せるくらい強いの?」
今後の活動方針にも関わってくるからね。戦うたびにドラゴンになっていたら、変な噂が立ちそうだからね。
討伐隊とか来たらたまらない。
「もちろんよ。
ドラゴンの姿に比べて多少の制限はあるけど、力も魔法も大したものよ」
「へえー、レーカって凄いんだね」
それは良かった。俺の弱点の近接戦闘や飛び道具への対処などをフォローしてもらえるかもしれないな。
「もっと、褒めてもいいのよ。
それにしても、この肉おいしーね……」
モグモグしてる姿は、見た目の歳相応にしか見えないんだけどね。
◇◇◇
食事後、部屋に戻ってしばらくすると、セシルさんが戻ってきた。
セシルさんは、取引所で軽く食べてきたとのことだ。
「今日はいろいろあったし、もう休みましょ」
「うん、賛成よ。
あたしはもう眠いわ」
俺も賛成だ。ただ、レーカはたっぷり寝てたでしょ。
二つのベッドの内、窓側のベッドにテケテケと向かい、勢いよくそこにダイブする食っちゃ寝ドラゴン。
「ネロはこっちにきて。
あたしに眠くなる魔法をかけながら一緒に寝るのよ」
レーカの中では、ベッドの割振りがすでに決められているようだ。
そしてなぜか、子守唄ポジションの俺。
二つ名に恥じない配置をご所望のようだぞ。
「ちょっと待って!
それは良くないわ。彼も一応男よ。
ここは女の子同士、私とレーカちゃんが一緒のベッドが良いと思うの」
ちょっと待って欲しいのは俺の方だ。
一応ってなんだよ、一応って。
それにセシルさんの発言に、邪念が垣間見えるのはなぜだろうか。
「あたしは嫌よ!
ネロ、助けて!」
「レーカちゃん、変なことはしないからさ。
さあ、かんね……じゃなくて、こっちにおいで」
セシルさんの手がワキワキしている。
今、観念って言おうとしたでしょ……。
そんなセシルさんにレーカが怯えている。
このままじゃいつまで経っても、寝ることができなそうなので……。
「俺が決めるよ。
二人は窓側のベッドで一緒に寝ること。
睡眠魔法で同時に寝かしつけるから、レーカも変なことされないからさ」
ほらほら早くと不満そうな二人を一緒のベッドに追いやり、横にさせた瞬間に睡眠魔法を発動。
すぐに眠りに落ちる二人。
ふぅー……、今日はいろんなことがあったな。
しかし、こうやって仲良く寝てると二人は姉妹みたいだな……。
幸せそうに寝ている二人を見てそんなことを思った。
そういえばレーカ、尻尾をだしているな……。
ピョコンと可愛らしいドラゴン尻尾が見えている。
さっきまでは尻尾は出ていなかったから、リラックスして寝るときは尻尾が出ちゃうのかな。
気持ち良さそうに寝ている二人に毛布をかける。
「おやすみなさい……」
俺はもう一つのベッドに横になり、羊なアルを呼び出して抱き枕にする。
明日も騒がしい一日になりそうだ。
おやすみなさい――――。
「今日はここで一泊するわよ」
旅の日程管理はセシルさんに任せている。
俺は旅なんてしたことなかったし、レーカはそもそもそういうの気にしたことないみたいだからね。
レーカの頭の角を隠すために、セシルさんの商品の中から帽子をもらった。
お金を払うって言ったのに、レーカちゃんへのプレゼントだからと嬉しそうに帽子をくれた。
帽子はとても似合っていて、貴族のお嬢様みたいに可愛らしかったよ。
アルには亜空間に戻ってもらった。精霊を連れているのを見られると村の人に騒がれそうだしね。
「この村には宿屋とかあるんですか?」
「街道沿いの街や村には旅人用の宿屋があるものよ。
仮に満室だとしても、村の広場を借りるだけでも、
村の外での野宿より安全だしね」
おお、セシルさんが久しぶりに頼りになる感じだ。
最近、可愛いものを愛でてばかりだったからな。
「もしかして、この村にも知り合いが?」
「ええ、この村も行商ルートだから、よく知っているよ。
村長に会ってくるからちょっとここで待っててね」
そう言って、セシルさんは村の中心の方へ向かっていった。
待つこと二十分程、セシルさんが戻ってきた。
無事に宿屋が取れたとのことで、俺たちは宿屋の部屋まで案内された。
借りたのは二階の一部屋で、広めの部屋にベッドが二つ。
一休みしてから、俺とレーカは宿屋の食堂で夕食をとることにした。
セシルさんは、商品の一部をこの村に売り渡すということで、外に出て行った。
「そういえば、聞こうと思っていたんだけど、
レーカはその姿だと強さはどれくらいなんだ?」
俺とレーカは、食堂の隅っこの方で夕飯を食べている。
何の肉だか分からないが、肉を焼いたものと野菜の入ったスープだ。
「ん、あたしの強さが気になるの?」
レーカが肉を美味しそうに食べながら、顔をこちらに向けてくる。
ちょっと嬉しそうにしているのは、聞いてほしいからかな。
「まあね。実際レーカってドラゴンの中でも、結構な方なんじゃない?
なんか赤い鱗とか綺麗で格好良いしさ」
周囲に人がいないのを見計らって小声で問いかける。本心だが、ちょっと煽ててみる。
「そ、そう! ネロには分かるのね。
なかなか見る目があるわね」
レーカが、明らかに上機嫌になってニマニマしている。
チョロ可愛いではないか。
「レーカは、どんなドラゴンなの?」
「あたしはドラゴンの中でも上位竜で凄いのよ。
魔法もいろいろ使えるわ。
あたしはまだ幼竜だけど、たいがいの敵はチュドーンよ」
あの大きさでまだ幼竜なんだ……。成竜になったらどんだけ大きいんだよ。
確かに人化の魔法とか伝説やおとぎ話みたいだもんな。
上位竜っていうのも納得だ。
チュドーンでは強さが分からないけど、まあとんでもなく強いのは確かだろう。
「ちなみに、今の姿でも魔物とか倒せるくらい強いの?」
今後の活動方針にも関わってくるからね。戦うたびにドラゴンになっていたら、変な噂が立ちそうだからね。
討伐隊とか来たらたまらない。
「もちろんよ。
ドラゴンの姿に比べて多少の制限はあるけど、力も魔法も大したものよ」
「へえー、レーカって凄いんだね」
それは良かった。俺の弱点の近接戦闘や飛び道具への対処などをフォローしてもらえるかもしれないな。
「もっと、褒めてもいいのよ。
それにしても、この肉おいしーね……」
モグモグしてる姿は、見た目の歳相応にしか見えないんだけどね。
◇◇◇
食事後、部屋に戻ってしばらくすると、セシルさんが戻ってきた。
セシルさんは、取引所で軽く食べてきたとのことだ。
「今日はいろいろあったし、もう休みましょ」
「うん、賛成よ。
あたしはもう眠いわ」
俺も賛成だ。ただ、レーカはたっぷり寝てたでしょ。
二つのベッドの内、窓側のベッドにテケテケと向かい、勢いよくそこにダイブする食っちゃ寝ドラゴン。
「ネロはこっちにきて。
あたしに眠くなる魔法をかけながら一緒に寝るのよ」
レーカの中では、ベッドの割振りがすでに決められているようだ。
そしてなぜか、子守唄ポジションの俺。
二つ名に恥じない配置をご所望のようだぞ。
「ちょっと待って!
それは良くないわ。彼も一応男よ。
ここは女の子同士、私とレーカちゃんが一緒のベッドが良いと思うの」
ちょっと待って欲しいのは俺の方だ。
一応ってなんだよ、一応って。
それにセシルさんの発言に、邪念が垣間見えるのはなぜだろうか。
「あたしは嫌よ!
ネロ、助けて!」
「レーカちゃん、変なことはしないからさ。
さあ、かんね……じゃなくて、こっちにおいで」
セシルさんの手がワキワキしている。
今、観念って言おうとしたでしょ……。
そんなセシルさんにレーカが怯えている。
このままじゃいつまで経っても、寝ることができなそうなので……。
「俺が決めるよ。
二人は窓側のベッドで一緒に寝ること。
睡眠魔法で同時に寝かしつけるから、レーカも変なことされないからさ」
ほらほら早くと不満そうな二人を一緒のベッドに追いやり、横にさせた瞬間に睡眠魔法を発動。
すぐに眠りに落ちる二人。
ふぅー……、今日はいろんなことがあったな。
しかし、こうやって仲良く寝てると二人は姉妹みたいだな……。
幸せそうに寝ている二人を見てそんなことを思った。
そういえばレーカ、尻尾をだしているな……。
ピョコンと可愛らしいドラゴン尻尾が見えている。
さっきまでは尻尾は出ていなかったから、リラックスして寝るときは尻尾が出ちゃうのかな。
気持ち良さそうに寝ている二人に毛布をかける。
「おやすみなさい……」
俺はもう一つのベッドに横になり、羊なアルを呼び出して抱き枕にする。
明日も騒がしい一日になりそうだ。
おやすみなさい――――。
0
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
幼馴染のチート竜,俺が竜騎士を目指すと伝えると何故かいちゃもんつけ始めたのだが?
モモ
ファンタジー
最下層のラトムが竜騎士になる事をチート幼馴染の竜に告げると急に彼女は急にいちゃもんをつけ始めた。しかし、後日協力してくれそうな雰囲気なのですが……
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
睡眠スキルは最強です! 〜現代日本にモンスター!? 眠らせて一方的に倒し生き延びます!〜
八代奏多
ファンタジー
不眠症に悩んでいた伊藤晴人はいつものように「寝たい」と思っていた。
すると突然、視界にこんな文字が浮かんだ。
〈スキル【睡眠】を習得しました〉
気付いた時にはもう遅く、そのまま眠りについてしまう。
翌朝、大寝坊した彼を待っていたのはこんなものだった。
モンスターが徘徊し、スキルやステータスが存在する日本。
しかし持っているのは睡眠という自分を眠らせるスキルと頼りない包丁だけ。
だが、その睡眠スキルはとんでもなく強力なもので──
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる