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第7話「異世界の睡眠事情?」

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 アルが強制的にレーカたちと打ち解けたところで、“日本”の睡眠事情を話してくれた。

 まあ休憩時間の暇つぶしの話題提供だね。

 みんな座って休憩中だ。

 俺は前に聞いたことあったけど、何度聞いても驚きだ。

 日本人働きすぎだよ、もっと寝ようよ……。

「異世界人って働きすぎだわ。
 睡眠時間がそんなに短くてよく倒れないわね」

 セシルさんが驚愕している。

 ちなみに、セシルさんの頑張り?のおかげか、アルはセシルさんの膝の上だ。

 モコモコと、なで繰り回されている。

 あの感触、気持ちいいんだよね。

「そうだね、下手したらこの世界の奴隷よりも働いてるよね。
 いろんな人を見て来たけど、実際倒れる人もたまにいたよ」

 そんなアルの話を何度聞いても、ちょっと想像できない働き方だ。

 日本っていう国は、異世界の他の国に比べても、働く時間が長かったらしい。

 日本の人族が寝る時間を削ってでも、“げーむ”という遊びをしたり、“からおけ”という遊びをするところに、レーカは共感する部分があったのか。

「寝る間を惜しんで好きなことをやるのは、少しだけ分からなくもないわ」

 へえ、意外だな。レーカはあんなに寝ることが大好きなのに。

「あれ、レーカは寝る間を惜しんで何かをすることってあるの?」

 意外で気になった。

「あれは……、結構前のことだけど……。
 場所の名前はわすれたけど、湖でね」

「湖で?」

「なんか大きな魚が大量にとれるとか言ってるのを聞いたのよ。
 『いれぐい』だって騒いでる人たちがいたのよ」

「それがどうして、寝る時間に関係あるのさ?」

「ちょうど魚をいっぱい食べたかったあたしは、
 今までで食べたことないくらい魚を食べようと思って湖にいったのよ」

 ちょっと嫌な予感がしてきたぞ。

「それで?」

「ドラゴンの姿で、食べても食べても減らない魚を夜を徹して、ずっと食べ続けたのよ。
 あ、少しは休んだりしたよ」

「寝る間を惜しんで食べ続けたと……」

「そうよ、美味しい魚で、あの時だけは寝ることを忘れてたわ。
 またどこかで食べたいわ」

「それから、その湖はどうなったの?」

「なんかね、魚が全部いなくなったの。
 近くの村の人は『竜神様のたたりだ!』って騒いでたわ。
 ――アイタッ!?」

 俺のチョップが、レーカのおでこに命中した。

 レーカの駄目ドラゴンぶりに、ついドラゴンだということを忘れて手が動いてしまった。
 
「お前なー、食欲が睡眠欲に勝っただけじゃないか」

 そういうことするから、ドラゴンは災害級とか言われちゃうんだぞ。全滅させちゃ駄目だろ。

「レーカは凄いね……。
 “日本”では、焼肉の食べ放題っていうのが流行ってたけど、なんかスケールが違うね。
 あ、僕のことは食べないでね」

 異世界から渡ってきたアルからしても、規格外のドラゴンのようだ。


 しかし、この世界の奴隷よりも長い時間働く日本人……。

 俺には真似できないかもなぁ。

 アルの話だと、日本にはとんでもなく美味しい食べ物がいっぱいあるらしく、それには興味があるんだけどね……。

 俺は今のうちに少し頑張って、将来はグータラして過ごしたいなあ。

 将来のために今を頑張る、っていうのが俺のモットーだ。

 自分のペースで、食べたり寝たりと楽しそうにしているレーカのことが、ちょっと羨ましい。

「ネロ、なかなか気持ちいいわよ。
 ついでにアレもしてっ!」

 レーカの声でハッとして振り向く。

 いつの間にか、無意識にレーカの頭をナデナデしていた。

 そして、なぜか睡眠魔法をオネダリされている。

 くっ、レーカはなぜか駄目な感じが可愛いんだよな。
 それにつられて、いつの間にか撫でてしまった。

 本人には言わないけどね。

 だってなんか悔しいじゃん。

 セシルさんの方を見やると、無言でうなずいてくれた。

 休憩の時間をのばしてもいいよ、ってことだろう。

 まあ、今はまったりと過ごすのも悪くないかもね。

 そして俺は、レーカにおやすみなさいを唱えた。

 その後、時間になっても起きないレーカは、俺が抱っこして荷台まで運んだんだけどね。
 
 ドラゴンを抱っこして運ぶって、字面はかなりシュールだよね。
 
 寝ているレーカは体温が高くなっているのか、とても温かかった――――。
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