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第二章
第53話「一時帰宅からの、再出発(俺もパリフワしたい……)」
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獣人たちの救出に成功した。
今は、獣人たちと村を脱出して、伯爵領に向かっているところだ。
獣人はレンカふくめて、十三人だった。
荷車数台が、伯都に向かって街道を進む。
獣人の大人たちが荷車を引いている。
俺たち猫は、荷台に乗せてもらって楽ちんだ。
食べ物は兵士たちのものを失敬してきたので、難民と言えど快適な行軍だろうか。
「猫ちゃん……、またいっぱい遊ぼうなの……」
俺を抱えてウトウトしているレンカの声だ。
目をつぶってムニャムニャしてるし、寝言だろうか。
昨夜、レンカは両親と再会をはたした後、疲れてたのかすぐに眠ってしまった。
移動中もたまに起きるけど、すぐに俺を抱えてまどろみに落ちることを繰り返している。
その表情はとても幸せそうだ。
「猫ちゃん……」
時折、レンカの尻尾がポフッポフッと俺をなでる。
頑張って良かったと思う瞬間だ。
昨夜の襲撃時、レンカの叫び声は建物の中にも聞こえてたらしく、レンカが獣人たちを助けたということになった。
レンカは「猫ちゃんが助けてくれたの~」って言ってたけど、ワイルドキャットに力は無いのが常識だ。
それならまだ狐っ娘の方が、力を持っていてもおかしくないのだ。
当初の思惑どおりだ。
猫はいなかった。
レンカの両親は半信半疑だったけど、今はそれで十分だ。
まあ、獣人たちにはばれても、侯爵側に事実が伝わらなければ問題ない。
それにだ、襲撃時に気づいたけど、レンカはおそらく魔法の素養がある。
俺のファイアボールが、レンカの意思でブーストしたのだ。
嘘から出た誠ではないけど、レンカがその才能を伸ばしたら、魔法少女レンカの誕生かもしれない。
まあ……、本人の意思を優先したいけどね。
個人的には、炎を操る狐っ娘を見てみたいとは思ってる。
早く今回の問題を解決して、俺も食っちゃモフ生活するという自身の意思を実現したいものだ……。
「クルゥニャ……(レンカ、いつでも俺たちの家に遊びにおいで……)」
獣人たちが移住するのは、俺たちの家があるベルーナの街だ。
今度レンカを街中で見つけて、家に招待しよう。
伯爵領は獣人差別がほとんどないし、職もすぐに見つけられるだろう。
獣人たちは、手に職を持ってる人たちが多いみたいだからね。
「ニャー(結局、すぐに家に戻ることになったっすね)」
荷台の端のほうで丸くなっていたミケが、声をかけてくる。
ミケたちは、昨夜の襲撃のときも物怖じすることなく、活躍してくれた。
この調子なら、今後の行動もかなり期待できる。
「クルニャン(気になることもあるし、街に戻ったらすぐにまた出かけるよ)」
獣人たちを助けることはできたけど、根本的な問題はまだそのままだ。
人造アンデッドとか、思っていた以上にやばいことになってる気がする。
侯爵だけじゃなくて、教会の本部も関わってるとしたら、かなりの大事になる予感がする。
猫たちには、今のうちに休んでおくように伝える。
街道では魔物や盗賊に襲われることもなく、無事に伯都ベルーナに到着した。
獣人たちは、自分たちが街に入れてもらえるか心配してたけど、門でチェックを受けて問題なく街に入ることができた。
街に入る前に俺たちは荷台から降り、衛兵のすきを見て街に侵入(帰還)をはたした。
俺たちの侵入・潜伏スキルは日々向上してるのだ。
レンカには無断で離れることになるけど、今度必ず会いに行くから、今は許してほしい。
そうだ、伝言役ではないけど、猫数匹にレンカのそばについてもらうようにしようかな。
きっとレンカのことだ、永遠の別れではないと分かってくれるだろう。
◇
「クルニャー!(ただいまー! グーリ、いるか~?)」
家に帰って来た。
庭で、グリフォンたちと猫たちが訓練をしている。
俺がいないときも真面目に訓練していて、感心してしまう。
猫たちも訓練を楽しんでるふしはあるけどね。
「ガルゥウ!(あ、シュン様! 姫様なら、リルさまと一緒にパリフワしに行くって言ってましたよ)」
一番近くにいたグリフォンがこたえてくれる。
「クルニャ?(パリフワって何?)」
「ガルガルゥ……(姫様がよだれを垂らしてたから、多分食べ物関係かと……)」
ちょっと呆れた様子で教えてくれる。
「クルナー……(まあ、グーリが一緒なら安全か……)」
最近、グーリのアレな部分しか見てないから忘れそうになるけど、Aランク魔物のグリフォンの中でも特に強い個体なんだよな……。
リルは機転も利くし、あのコンビなら大丈夫だろう。
パリフワは俺も気になるけど、俺にはやることがある。
羨ましくなんてないんだから……。
「ガルルゥ……(シュン様、口元が光ってますよ……)」
「クルニャーン!(もう一度出かけてくるから、留守番よろしくね!)」
俺は猫を引き連れて、今度は侯爵の本拠地に忍び込むことにしたのだった。
今は、獣人たちと村を脱出して、伯爵領に向かっているところだ。
獣人はレンカふくめて、十三人だった。
荷車数台が、伯都に向かって街道を進む。
獣人の大人たちが荷車を引いている。
俺たち猫は、荷台に乗せてもらって楽ちんだ。
食べ物は兵士たちのものを失敬してきたので、難民と言えど快適な行軍だろうか。
「猫ちゃん……、またいっぱい遊ぼうなの……」
俺を抱えてウトウトしているレンカの声だ。
目をつぶってムニャムニャしてるし、寝言だろうか。
昨夜、レンカは両親と再会をはたした後、疲れてたのかすぐに眠ってしまった。
移動中もたまに起きるけど、すぐに俺を抱えてまどろみに落ちることを繰り返している。
その表情はとても幸せそうだ。
「猫ちゃん……」
時折、レンカの尻尾がポフッポフッと俺をなでる。
頑張って良かったと思う瞬間だ。
昨夜の襲撃時、レンカの叫び声は建物の中にも聞こえてたらしく、レンカが獣人たちを助けたということになった。
レンカは「猫ちゃんが助けてくれたの~」って言ってたけど、ワイルドキャットに力は無いのが常識だ。
それならまだ狐っ娘の方が、力を持っていてもおかしくないのだ。
当初の思惑どおりだ。
猫はいなかった。
レンカの両親は半信半疑だったけど、今はそれで十分だ。
まあ、獣人たちにはばれても、侯爵側に事実が伝わらなければ問題ない。
それにだ、襲撃時に気づいたけど、レンカはおそらく魔法の素養がある。
俺のファイアボールが、レンカの意思でブーストしたのだ。
嘘から出た誠ではないけど、レンカがその才能を伸ばしたら、魔法少女レンカの誕生かもしれない。
まあ……、本人の意思を優先したいけどね。
個人的には、炎を操る狐っ娘を見てみたいとは思ってる。
早く今回の問題を解決して、俺も食っちゃモフ生活するという自身の意思を実現したいものだ……。
「クルゥニャ……(レンカ、いつでも俺たちの家に遊びにおいで……)」
獣人たちが移住するのは、俺たちの家があるベルーナの街だ。
今度レンカを街中で見つけて、家に招待しよう。
伯爵領は獣人差別がほとんどないし、職もすぐに見つけられるだろう。
獣人たちは、手に職を持ってる人たちが多いみたいだからね。
「ニャー(結局、すぐに家に戻ることになったっすね)」
荷台の端のほうで丸くなっていたミケが、声をかけてくる。
ミケたちは、昨夜の襲撃のときも物怖じすることなく、活躍してくれた。
この調子なら、今後の行動もかなり期待できる。
「クルニャン(気になることもあるし、街に戻ったらすぐにまた出かけるよ)」
獣人たちを助けることはできたけど、根本的な問題はまだそのままだ。
人造アンデッドとか、思っていた以上にやばいことになってる気がする。
侯爵だけじゃなくて、教会の本部も関わってるとしたら、かなりの大事になる予感がする。
猫たちには、今のうちに休んでおくように伝える。
街道では魔物や盗賊に襲われることもなく、無事に伯都ベルーナに到着した。
獣人たちは、自分たちが街に入れてもらえるか心配してたけど、門でチェックを受けて問題なく街に入ることができた。
街に入る前に俺たちは荷台から降り、衛兵のすきを見て街に侵入(帰還)をはたした。
俺たちの侵入・潜伏スキルは日々向上してるのだ。
レンカには無断で離れることになるけど、今度必ず会いに行くから、今は許してほしい。
そうだ、伝言役ではないけど、猫数匹にレンカのそばについてもらうようにしようかな。
きっとレンカのことだ、永遠の別れではないと分かってくれるだろう。
◇
「クルニャー!(ただいまー! グーリ、いるか~?)」
家に帰って来た。
庭で、グリフォンたちと猫たちが訓練をしている。
俺がいないときも真面目に訓練していて、感心してしまう。
猫たちも訓練を楽しんでるふしはあるけどね。
「ガルゥウ!(あ、シュン様! 姫様なら、リルさまと一緒にパリフワしに行くって言ってましたよ)」
一番近くにいたグリフォンがこたえてくれる。
「クルニャ?(パリフワって何?)」
「ガルガルゥ……(姫様がよだれを垂らしてたから、多分食べ物関係かと……)」
ちょっと呆れた様子で教えてくれる。
「クルナー……(まあ、グーリが一緒なら安全か……)」
最近、グーリのアレな部分しか見てないから忘れそうになるけど、Aランク魔物のグリフォンの中でも特に強い個体なんだよな……。
リルは機転も利くし、あのコンビなら大丈夫だろう。
パリフワは俺も気になるけど、俺にはやることがある。
羨ましくなんてないんだから……。
「ガルルゥ……(シュン様、口元が光ってますよ……)」
「クルニャーン!(もう一度出かけてくるから、留守番よろしくね!)」
俺は猫を引き連れて、今度は侯爵の本拠地に忍び込むことにしたのだった。
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