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第二章
第45話「グリフ・ワルキューレ」
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グリフォンたちが配下になった。
ガルガル系女子の押しの強さはなかなかだった……。
「クルニャン(みんな名前無いんだ?)」
「ガルゥゥ(はい、使う必要性がなかったので)」
姫とか呼んでるのに、グリフォンたちに名前というものはないようだ。
お互い意思を持って声をかければ、相手に伝わるらしい。
でも、不便だから名前をつけることにした。
「クルニャーン(俺たちと来るなら名前をつけさせてもらうよ)」
「ガルガルッ!(なんと! シュン様みずからが名付けてくださると!)」
姫グリフォンは感極まったようすだ。
あ……、なんかスイッチを踏んでしまったかも。
「クルルニャン(俺はネーミングセンスが無いから、気に入らない名前だったら言ってね)」
「ガルガルゥッ!……(いえ、それが酷い名前でも有難く頂戴します。たとえ性的に酷い名前でもっ!)」
おーい! なんだよその性的に酷い名前って!
なんで嬉しそうなのに、目が血走ってるんだよ……。
さっきまでと姫様のキャラが違いすぎる。
名付けってなんか変なプレッシャーを感じるんだよね。
責任重大だもんね。
「クルナー(姫の名前はグーリでどうだ?)」
「ガルルゥ(…………)」
姫グリフォンが黙っている。
目がうるんでいるように見える。
「クルニャ?(気に入らなかったかな?)」
嫌で泣いてるのか?
「ガルゥウウ……(いえ、感極まっていました。グーリの名と命はシュン様のために……)」
いや、命とかいらないって……。
とりあえず喜んでくれたなら良かったよ。
そんな感じで十体全員に名前をつけていった。
みんな喜んでくれたよ。
実はまだ、姫以外の個体の区別がつかない。
名付けておきながら、顔と名前が一致しないのだ。
羽毛とか毛色のわずかな違いで覚えていけばいいのだろうか?
まあ……、がんばるさ。
◇
俺たちは今、山頂に向かっているところだ。
グリフォンたちの背に乗って、空を飛びながら……。
「風が気持ちいいね~」
「…………風で体がプルプル」
みんなが楽しそうでなによりだ。
グリフォン四体にそれぞれが乗って、残りのグリフォン六体が周囲を囲むように飛ぶ。
下に見える森の中には、他のグリフォンが見えたりした。
グーリの話によると、いつも一緒に行動しているこの十体はグリフォンの中でも強い個体らしい。
グリフォンの一体が「ガルゥ……(姫様は自分より弱い男には従わんと、常に言っているのです。そのせいで行き遅れてしまい……)」とこぼしていた。
グリフォンたちも大変だな……。
「すげーよ! 俺、グリフォンに乗ったなんて一生自慢するよ!」
ディーンが嬉しそうに叫んでいる。
木の実がもうすぐ手に入るとなって、母親を救えるという気持ちもあるのだろう。
グリフォンたちの突然の配下宣言だったけど、実際ありがたいな。
帰りも楽ちんだろうし。
「クルニャン(ありがとうな……、グーリ)」
俺を乗せてくれているグーリにお礼を言う。
「ガルガルッ(シュン様のためなら、わたしたちは何処へでも)」
グーリたちの忠誠心はなんだかんだで嬉しく思う。
俺自身もそれに応えられるようでありたいと思った。
グーリたち十体は、グリフォン女騎士隊ということで『グリフ・ワルキューレ』と呼ばせてもらうことにした。
◇
「ガルガルゥ(シュン様、もうすぐ山頂です)」
グーリが山頂付近ということで着陸した。
ここからはすぐだから、歩いていく。
「クルニャ(黄金の木の実が生ってる大樹のところまで案内してもらえる?)」
「ガルゥ(もちろんです)」
木々の間を進んで行くと、正面に一際大きい巨木が見えてきた。
凄いな……、樹齢何年だろう。
三千年前からあると言われても信じそうだ。
巨木の根元に到着した。
「クルニャーン(さて、黄金の木の実はどこにあるかなあ……)」
周囲を見回っていると、上の方に一つ、輝く林檎を見つけた。
あれっぽいなあ。
リルに伝えると、リルがグリフォンに乗って取りに行ってくれた。
「多分これだね。まず一つ」
リルがバッグに輝く林檎をしまう。
木の実探しを再開する。
ディーンの母親のためにも、もう一つ必要だからね。
その後、グリフォンたちにも頼んで空からも念入りに探してもらったけど、二つ目の黄金の木の実は見つけれらなかった……。
「クルニャーン……(マジか~……)」
「ないね~……」
「…………ぽよ」
みんな探し疲れている。
「………………」
ディーンにいたってはさっきから無言だ。
泣きそうになるのを我慢しているように見える。
「ガルガルッ……(私たちの力が至らないばかりに……」
グーリが肩を落としている。
「クルニャーン(いや、グーリたちのせいじゃないよ)」
無いものはしょうがない。
感謝こそすれ、責める気持ちは微塵もない。
……さて、暗くなる前に帰らないとな。
「クルニャン!(探すのを終わりにしよう。これ以上は探しても見つからないよ)」
「「ガルッ(はっ、分かりました)」」
「…………探すの終わり」
ライミーもどことなく元気がない。
ディーンがビクッと肩を揺らした。
「なあ……、俺だけでもまだ探していてもいいかな? ここに置いていっていいからさ……」
ディーンが、ボソボソとつぶやく。
ふぅ……、いくら探しても二つ目は見つからないだろう。
黄金の木の実はポンポン生ることがない果実なんだと思う。
もしかしたら、一つも生ってない可能性もあったのだろう。
そう考えると、一つでもあって良かった。
ディーンはリルのバッグに入ってる黄金の木の実は俺が使うものだと思ってるようだけど……。
その木の実の使い道は、とっくに決めている……。
素直で最後まで諦めない少年を見捨てられるわけないじゃんね。
「クルニャーン!(ディーン、手に入れた木の実はディーンの分だよ!)」
俺は、他の解呪方法を探すから大丈夫だ。
それに、俺には大きな収穫があった。
黄金の木の実より大きな収穫。
グリフ・ワルキューレという収穫が!
――――――――――――――――――
いつもお読みいただきありがとうございます。
この度、別作品の新連載を開始しました。
更新頻度は落とさずに、同時連載していきたいと思っています。
『1000の地球産アイテムで異世界無双 ~それ、使いかた違うからっ!!~』
http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/562120629/
作者名をクリックしていただくと開く作者ページの「登録作品」からもご覧いただけます。
今後ともよろしくお願いします。
ガルガル系女子の押しの強さはなかなかだった……。
「クルニャン(みんな名前無いんだ?)」
「ガルゥゥ(はい、使う必要性がなかったので)」
姫とか呼んでるのに、グリフォンたちに名前というものはないようだ。
お互い意思を持って声をかければ、相手に伝わるらしい。
でも、不便だから名前をつけることにした。
「クルニャーン(俺たちと来るなら名前をつけさせてもらうよ)」
「ガルガルッ!(なんと! シュン様みずからが名付けてくださると!)」
姫グリフォンは感極まったようすだ。
あ……、なんかスイッチを踏んでしまったかも。
「クルルニャン(俺はネーミングセンスが無いから、気に入らない名前だったら言ってね)」
「ガルガルゥッ!……(いえ、それが酷い名前でも有難く頂戴します。たとえ性的に酷い名前でもっ!)」
おーい! なんだよその性的に酷い名前って!
なんで嬉しそうなのに、目が血走ってるんだよ……。
さっきまでと姫様のキャラが違いすぎる。
名付けってなんか変なプレッシャーを感じるんだよね。
責任重大だもんね。
「クルナー(姫の名前はグーリでどうだ?)」
「ガルルゥ(…………)」
姫グリフォンが黙っている。
目がうるんでいるように見える。
「クルニャ?(気に入らなかったかな?)」
嫌で泣いてるのか?
「ガルゥウウ……(いえ、感極まっていました。グーリの名と命はシュン様のために……)」
いや、命とかいらないって……。
とりあえず喜んでくれたなら良かったよ。
そんな感じで十体全員に名前をつけていった。
みんな喜んでくれたよ。
実はまだ、姫以外の個体の区別がつかない。
名付けておきながら、顔と名前が一致しないのだ。
羽毛とか毛色のわずかな違いで覚えていけばいいのだろうか?
まあ……、がんばるさ。
◇
俺たちは今、山頂に向かっているところだ。
グリフォンたちの背に乗って、空を飛びながら……。
「風が気持ちいいね~」
「…………風で体がプルプル」
みんなが楽しそうでなによりだ。
グリフォン四体にそれぞれが乗って、残りのグリフォン六体が周囲を囲むように飛ぶ。
下に見える森の中には、他のグリフォンが見えたりした。
グーリの話によると、いつも一緒に行動しているこの十体はグリフォンの中でも強い個体らしい。
グリフォンの一体が「ガルゥ……(姫様は自分より弱い男には従わんと、常に言っているのです。そのせいで行き遅れてしまい……)」とこぼしていた。
グリフォンたちも大変だな……。
「すげーよ! 俺、グリフォンに乗ったなんて一生自慢するよ!」
ディーンが嬉しそうに叫んでいる。
木の実がもうすぐ手に入るとなって、母親を救えるという気持ちもあるのだろう。
グリフォンたちの突然の配下宣言だったけど、実際ありがたいな。
帰りも楽ちんだろうし。
「クルニャン(ありがとうな……、グーリ)」
俺を乗せてくれているグーリにお礼を言う。
「ガルガルッ(シュン様のためなら、わたしたちは何処へでも)」
グーリたちの忠誠心はなんだかんだで嬉しく思う。
俺自身もそれに応えられるようでありたいと思った。
グーリたち十体は、グリフォン女騎士隊ということで『グリフ・ワルキューレ』と呼ばせてもらうことにした。
◇
「ガルガルゥ(シュン様、もうすぐ山頂です)」
グーリが山頂付近ということで着陸した。
ここからはすぐだから、歩いていく。
「クルニャ(黄金の木の実が生ってる大樹のところまで案内してもらえる?)」
「ガルゥ(もちろんです)」
木々の間を進んで行くと、正面に一際大きい巨木が見えてきた。
凄いな……、樹齢何年だろう。
三千年前からあると言われても信じそうだ。
巨木の根元に到着した。
「クルニャーン(さて、黄金の木の実はどこにあるかなあ……)」
周囲を見回っていると、上の方に一つ、輝く林檎を見つけた。
あれっぽいなあ。
リルに伝えると、リルがグリフォンに乗って取りに行ってくれた。
「多分これだね。まず一つ」
リルがバッグに輝く林檎をしまう。
木の実探しを再開する。
ディーンの母親のためにも、もう一つ必要だからね。
その後、グリフォンたちにも頼んで空からも念入りに探してもらったけど、二つ目の黄金の木の実は見つけれらなかった……。
「クルニャーン……(マジか~……)」
「ないね~……」
「…………ぽよ」
みんな探し疲れている。
「………………」
ディーンにいたってはさっきから無言だ。
泣きそうになるのを我慢しているように見える。
「ガルガルッ……(私たちの力が至らないばかりに……」
グーリが肩を落としている。
「クルニャーン(いや、グーリたちのせいじゃないよ)」
無いものはしょうがない。
感謝こそすれ、責める気持ちは微塵もない。
……さて、暗くなる前に帰らないとな。
「クルニャン!(探すのを終わりにしよう。これ以上は探しても見つからないよ)」
「「ガルッ(はっ、分かりました)」」
「…………探すの終わり」
ライミーもどことなく元気がない。
ディーンがビクッと肩を揺らした。
「なあ……、俺だけでもまだ探していてもいいかな? ここに置いていっていいからさ……」
ディーンが、ボソボソとつぶやく。
ふぅ……、いくら探しても二つ目は見つからないだろう。
黄金の木の実はポンポン生ることがない果実なんだと思う。
もしかしたら、一つも生ってない可能性もあったのだろう。
そう考えると、一つでもあって良かった。
ディーンはリルのバッグに入ってる黄金の木の実は俺が使うものだと思ってるようだけど……。
その木の実の使い道は、とっくに決めている……。
素直で最後まで諦めない少年を見捨てられるわけないじゃんね。
「クルニャーン!(ディーン、手に入れた木の実はディーンの分だよ!)」
俺は、他の解呪方法を探すから大丈夫だ。
それに、俺には大きな収穫があった。
黄金の木の実より大きな収穫。
グリフ・ワルキューレという収穫が!
――――――――――――――――――
いつもお読みいただきありがとうございます。
この度、別作品の新連載を開始しました。
更新頻度は落とさずに、同時連載していきたいと思っています。
『1000の地球産アイテムで異世界無双 ~それ、使いかた違うからっ!!~』
http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/562120629/
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今後ともよろしくお願いします。
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