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第二章
第44話「姫グリフォンの矜持」
しおりを挟む「クルニャーン(縄張りを荒らすつもりはないよ。山頂に用事があるだけなんだ)」
目の前のグリフォンに話しかける。
とりあえずは話し合いを試みる。
「ガルルゥ!(なんだ貴様は? 人と慣れ合って誇りもないのか! それに見たこともない魔物だな)」
グリフォンって高飛車なんだな……。
それともこの個体だけ?
どうやらうなり声はライオンがベースのようだ。
見たことなくて悪かったね。
毛が無いだけで、猫ですよー。
「クルニャン!(リル、ここは任せて!)」
後方をチラリ見て、クルニャと伝える。
言葉が通じるなら、どうなるにせよ俺が対応した方が良さそうだ。
戦いになるとしても、戦うのは俺の役目だからね。
「クルニャーン!(俺たちは先を急いでる! できればお前たちとは戦いたくない!)」
グリフォンに伝える。
「ガルゥー!(ふっ、なめおって。変な姿をしてるけど、貴様は猫だろ。それも下位種のな。猫ごときが私に勝てるものか!)」
うーん……、話し合いができない。
一応猫だと気づいてくれたけど。
ツンツンガルガルしてくれちゃってまあ……。
そんなやり取りをしている間に、他のグリフォン数体が羽ばたいて来て、近くに舞い降りた。
みんな鷲の上半身と翼に、獅子の下半身だ。
全部で十体か……。
やってきたグリフォンがうなり声をあげる。
「ガルルル……(姫様。愚かなやつらは、いつもと同じく返り討ちにしてしまいましょう!)」
「ガルゥゥ(その役目は私めに!)」
なんだ? みんなメスの個体か?
初めにやってきたグリフォンはどうやら姫様だったみたいだ。
どうやらガルガル系女子に囲まれてしまったようだ。
もう素通りさせてもらうのは、無理だろう。
だったら、押し通らせてもらおう。
「クルニャーン!!(面倒だから同時にかかってこい!!)」
俺は前に出て、グリフォンたちを挑発する。
「ガルルゥゥゥ!(なめおって!)」
「ガルガルゥゥ!(グリフォンの魔法を人のそれと一緒にするなよ!)」
「ガルルルゥ!(上位魔法に包まれて後悔するがよい! くらえっ!)」
グリフォンたちは俺を囲む位置に移動して、魔法の集中砲火をはじめた。
四大元素魔法の乱れ撃ちが俺に向かって飛んでくる。
それぞれ単一の属性だけど、威力はなかなかのものだ。
「クルニャ……(だけど……)」
火魔法は、“火無効”を持ってるから避ける必要すらない。
風魔法は、風刃の凶悪さに比べれば、そよ風みたいなもの。
水魔法は、土魔法で壁をつくってかわす。
土魔法は、物理で殴りこわす。
「クルニャン?(もう終わりか?)」
傷一つ負うことなく立っている俺を見て、グリフォンたちが息をのむのが伝わってきた。
「ガルゥゥ(くっ……)」
姫グリフォンがいまいましそうに俺の方を見る。
さてどうしようか?
というのも、加減が結構むずかしい。
強すぎる魔法を撃つと殺してしまうからだ。
女性っぽいグリフォンたちを滅殺するのは、酷くためらわれる。
それにこいつら……、俺との戦いにフェアで、リルたちを人質に取ろうとする様子もないんだよね。
リルは簡単に人質にはならないだろうけど、ディーンなんかはグリフォンから逃れられないだろう。
なんかね……。
悪い奴じゃないと、思っちゃったんだよね。
よし、これでいこう。
「クルニャン!(いくよ!)」
“雷魔法”と“風魔法”を合成。
威力は抑えて弱めにね……。
――――雷爆嵐
俺を中心に周囲に雷撃がほとばしる。
「「「ガルゥ!?(ぐああぁっ)」」」
グリフォンたちに雷撃が直撃する。
一瞬の後、全グリフォンがその場に崩れ落ちる。
「クルナー(上手くいったかな)」
俺は姫グリフォンに近づく。
意識はあるようだけど、雷撃をうけたためか上手く体を動かせないようだ。
「ガルゥ……(くっ……殺せ!)」
いや、殺さないから。
殺さないために雷撃使ったんだからさ。
「クルニャン(俺たちの目的は黄金の木の実なんだよ。だからもう邪魔しないでね)」
グリフォンたちは負けを認めてくれたと思う。
姫グリフォンは俺の言葉を聞いてうつむいて沈黙している。
ふいに姫グリフォンは顔を上げ、
「ガルゥ……(命を奪おうとした私たちを許すとは、なんという心の広いお方……。お名前をお聞きしても?)」
俺の名前を聞いてきた。
あれ? なんか様子が変だぞ?
「クルニャン(お、俺の名前はシュンだけど)」
不意打ち受けるとつい答えちゃうことってあるよね。
「ガルガルゥ……(シュン様……)」
「クルニャ……(おーい……)」
姫グリフォンの眼差しから敬意に似たものを感じる。
「ガルゥゥ!!(よいか、お前たち! われらはこれよりシュン様の配下となる!!)」
ちょっと姫様……。
「ガルゥゥ!(姫様の仰せのままに!)」
「ガルルル!(我ら一同、姫様とシュン様とともに!)」
「ガルガルッ!(ついに姫様にも春がやってきたわね!)」
ちょっと……。
勝手に配下になられても……。
それに姫のお相手にされちゃってない?
こいつら人の話を聞いてくれない!?
俺が欲しいのは配下じゃなくて、モフモフした毛なんだってば~!
「クルニャーン!(リル、助けて~!)」
目の前のグリフォンに話しかける。
とりあえずは話し合いを試みる。
「ガルルゥ!(なんだ貴様は? 人と慣れ合って誇りもないのか! それに見たこともない魔物だな)」
グリフォンって高飛車なんだな……。
それともこの個体だけ?
どうやらうなり声はライオンがベースのようだ。
見たことなくて悪かったね。
毛が無いだけで、猫ですよー。
「クルニャン!(リル、ここは任せて!)」
後方をチラリ見て、クルニャと伝える。
言葉が通じるなら、どうなるにせよ俺が対応した方が良さそうだ。
戦いになるとしても、戦うのは俺の役目だからね。
「クルニャーン!(俺たちは先を急いでる! できればお前たちとは戦いたくない!)」
グリフォンに伝える。
「ガルゥー!(ふっ、なめおって。変な姿をしてるけど、貴様は猫だろ。それも下位種のな。猫ごときが私に勝てるものか!)」
うーん……、話し合いができない。
一応猫だと気づいてくれたけど。
ツンツンガルガルしてくれちゃってまあ……。
そんなやり取りをしている間に、他のグリフォン数体が羽ばたいて来て、近くに舞い降りた。
みんな鷲の上半身と翼に、獅子の下半身だ。
全部で十体か……。
やってきたグリフォンがうなり声をあげる。
「ガルルル……(姫様。愚かなやつらは、いつもと同じく返り討ちにしてしまいましょう!)」
「ガルゥゥ(その役目は私めに!)」
なんだ? みんなメスの個体か?
初めにやってきたグリフォンはどうやら姫様だったみたいだ。
どうやらガルガル系女子に囲まれてしまったようだ。
もう素通りさせてもらうのは、無理だろう。
だったら、押し通らせてもらおう。
「クルニャーン!!(面倒だから同時にかかってこい!!)」
俺は前に出て、グリフォンたちを挑発する。
「ガルルゥゥゥ!(なめおって!)」
「ガルガルゥゥ!(グリフォンの魔法を人のそれと一緒にするなよ!)」
「ガルルルゥ!(上位魔法に包まれて後悔するがよい! くらえっ!)」
グリフォンたちは俺を囲む位置に移動して、魔法の集中砲火をはじめた。
四大元素魔法の乱れ撃ちが俺に向かって飛んでくる。
それぞれ単一の属性だけど、威力はなかなかのものだ。
「クルニャ……(だけど……)」
火魔法は、“火無効”を持ってるから避ける必要すらない。
風魔法は、風刃の凶悪さに比べれば、そよ風みたいなもの。
水魔法は、土魔法で壁をつくってかわす。
土魔法は、物理で殴りこわす。
「クルニャン?(もう終わりか?)」
傷一つ負うことなく立っている俺を見て、グリフォンたちが息をのむのが伝わってきた。
「ガルゥゥ(くっ……)」
姫グリフォンがいまいましそうに俺の方を見る。
さてどうしようか?
というのも、加減が結構むずかしい。
強すぎる魔法を撃つと殺してしまうからだ。
女性っぽいグリフォンたちを滅殺するのは、酷くためらわれる。
それにこいつら……、俺との戦いにフェアで、リルたちを人質に取ろうとする様子もないんだよね。
リルは簡単に人質にはならないだろうけど、ディーンなんかはグリフォンから逃れられないだろう。
なんかね……。
悪い奴じゃないと、思っちゃったんだよね。
よし、これでいこう。
「クルニャン!(いくよ!)」
“雷魔法”と“風魔法”を合成。
威力は抑えて弱めにね……。
――――雷爆嵐
俺を中心に周囲に雷撃がほとばしる。
「「「ガルゥ!?(ぐああぁっ)」」」
グリフォンたちに雷撃が直撃する。
一瞬の後、全グリフォンがその場に崩れ落ちる。
「クルナー(上手くいったかな)」
俺は姫グリフォンに近づく。
意識はあるようだけど、雷撃をうけたためか上手く体を動かせないようだ。
「ガルゥ……(くっ……殺せ!)」
いや、殺さないから。
殺さないために雷撃使ったんだからさ。
「クルニャン(俺たちの目的は黄金の木の実なんだよ。だからもう邪魔しないでね)」
グリフォンたちは負けを認めてくれたと思う。
姫グリフォンは俺の言葉を聞いてうつむいて沈黙している。
ふいに姫グリフォンは顔を上げ、
「ガルゥ……(命を奪おうとした私たちを許すとは、なんという心の広いお方……。お名前をお聞きしても?)」
俺の名前を聞いてきた。
あれ? なんか様子が変だぞ?
「クルニャン(お、俺の名前はシュンだけど)」
不意打ち受けるとつい答えちゃうことってあるよね。
「ガルガルゥ……(シュン様……)」
「クルニャ……(おーい……)」
姫グリフォンの眼差しから敬意に似たものを感じる。
「ガルゥゥ!!(よいか、お前たち! われらはこれよりシュン様の配下となる!!)」
ちょっと姫様……。
「ガルゥゥ!(姫様の仰せのままに!)」
「ガルルル!(我ら一同、姫様とシュン様とともに!)」
「ガルガルッ!(ついに姫様にも春がやってきたわね!)」
ちょっと……。
勝手に配下になられても……。
それに姫のお相手にされちゃってない?
こいつら人の話を聞いてくれない!?
俺が欲しいのは配下じゃなくて、モフモフした毛なんだってば~!
「クルニャーン!(リル、助けて~!)」
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