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第二章 

第42話「解呪の手がかり」

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 呪いのせいで、全身ツルツルになってしまった……。
 早く呪いを解かなくては!

 というわけで、俺は詳しそうな人に聞くことにした。

 リルとライミーと一緒にギルドマスターに会いに来た。

 ギルマスのおっちゃんは俺を見て開口一番に、

「ぶわっはっは!! シュン、なんだよそれ? ストレスたまってんのか?? ん?」

 ストレスで抜けたわけではない……。

 というか、おっちゃんは俺に何かあったのは分かってると思う。
 けど、俺ならどうせその内なんとかできるからと、シリアスにならないように笑い飛ばしてくれてるのだろう。

「クゥニャー!!(呪いだよ! の、ろ、い!)」

「え? なになに? そ、そうか……、なんか悪いことして反省してるのか? シュンにもそんな殊勝しゅしょうなところがあったんだな……。……ぷっ! それにしてもホッソリしすぎだって!」

 笑いがこらえられないとばかりに、おっちゃんがふき出した。
 反省の坊主頭じゃないってば!

 たしかに毛が全部無くなって、ホッソリしちゃったけどさ。
 いつもモフモフ長毛でふくらんで見えてたようだ。 
 どうやら普段は着太りしていたようだ……。

 くっそ~!

 モフモフに戻っても、おっちゃんにはモフらせてあげないからな~!

「クルナー!(呪いの解き方、知ってたら教えて!)」

 ライミーの方をチラ見する。

「…………呪い、教えて」

 うん、さすがライミー。

 ちなみに今朝ライミーと顔を合わせた時に、「…………ツルツル、お揃い」って言われた。
 でもさ、ライミーは可愛いツルツルプニプニだからいいけど、俺のツルツルはなんか貧相なんだよね……。
 一生このままだったらどうしよ……。

「それ、呪いなのか……? うーん、解呪だったら、一つ心当たりがあるな……」

 さすが、おっちゃん。
 笑ったこと許すから教えて。

「どうすればいいの?」

 リルが聞いてくれる。

「ちょっと待ってな」

 そう言って、おっちゃんは地図をテーブルに広げる。

「クルニャ……(おお……)」

 結構正確な地図に見える。
 何も書かれてないところは不明なところなのだろうか。

「今いる場所がここでな、こう西の方へ向かうと山があるんだ」

「リルたちが住んでた森とは反対方向だね」

「それでな、この山――サザラント山の山頂付近に、食べればどんな呪いでも解けるという黄金の木の実がなる大樹があるらしいんだ」

 あるらしい・・・

「誰か取りに行ったりしないの?」

 そんな良いものがあるなら、欲しがる人がいそうなものだ。
 
「それがな、山頂はグリフォンのすみかになっててな……。Aランク冒険者でも逃げ帰ってきてるのが現状だ。数十年前の記録では持ち帰ったやつもいたらしいんだけどよ。当時はグリフォンもいなかったみたいでよ……」

 グリフォンか……。
 ドラゴンよりはましだろう。

 おっちゃんの言葉を聞いて、俺はリルとライミーの方を見た。
 ちょっくら一人で行ってくるねと、伝えようと思ったのだが……。

「じゃあ、すぐ出発しようか。シュン、お出かけだよ!」

「…………一緒に行く」

 リルもライミーも全く恐れるようすがない。
 むしろ一緒に出かけることを喜んでいる。

 俺なら負けないと信頼されてるのかな?
 それとも呪いのこと心配してくれてるのかな。

 なんにせよ嬉しい気持ちになったよ。
 まあ何が現れても、全力でリルたちを守るけどね。

「クルニャー!(待ってろよ、黄金の木の実!)」

 気合を入れたものの、なんとなくピクニック気分が半分混じる俺たちだった。


◇◇◇


 今回、猫たちには留守番してもらい、俺はリルとライミーと一緒に山に向かうことになった。
 山のふもとの村で一晩過ごして、朝から山登りをする予定だ。

 山での野宿なんて余裕のメンバーだけど、別に無理する必要はないからね。
 リルのAランク冒険者カードを見せれば、どこでも歓迎されるらしいしさ。

 日が暮れる前に、村に着いたときのことだ。
 村長と呼ばれる年配の男と、少年が言い争いをしているところに出くわした。

「村長、俺は行くからな! 剣だって弓だってみんなの中では一番だから大丈夫だ!」

 リルよりも年下っぽい少年が、どこかに行くと言って、村長に止められている。

「無理じゃよ。みんなって子供の中でのことじゃろ。せめて、街の冒険者に依頼するのじゃ。お前さんが行っても無駄死になるのがオチじゃよ」

 会話が聞こえてきたけど、結構シリアスな話題のようだ。

「クルニャーン!(お取込み中のところ悪いけど、こんにちは!)」

 冒険者ならここにいるしね。
 Aランク従魔もいるよ~。

「うおっ! なんだこの魔物!?」

 少年が少し驚いた様子をみせる。
 若干引き気味にも見える。

 いつもなら……、子供に大人気の猫ちゃんなのに……。
 ちょっと泣きそう。

「リルの従魔だよ。可愛いでしょ! リルたちは冒険者なんだけど、冒険者に何か用?」

 リルはマジ天使。
 俺がこんな姿になっても、可愛いって言ってくれるなんて。

 リルがAランク冒険者のカードを見せると、村長は驚きつつも歓迎してくれた。

 少年はというと、

「なあ、俺と一緒に山を登ってくれないか! お願いだ、あとで何でもするからよ!」

「こら、ディーン! お客さまに失礼じゃ。リルさん、すまんのう。この子は向こうに連れてくから、許しておくれ」

「リルたちは全然気にしないよ。それよりリルたちも、山を登りに来たんだよ。ディーンは何で山を登りたいの?」

 俺たちは少年ディーンの話を聞くことになった。
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