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第二章 

第41話「失って初めて気づくもの」

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 昨日は良い気分で眠りについた。
 予想以上のレア素材ゲットに満足して、リルとミーナに抱きつかれながら至福の睡眠についた。

 ところがだ……。

 朝起きた今、俺は最悪の状況におちいっている……。


……
…………
………………

 今朝もリルやミーナより早く目覚めた。

 さて至福の二度寝だ!と思った時だ。

「ルニャ?(何だあの毛のたばは?)」

 ふと、俺が寝ていたところに毛の束が落ちてることに気づいた。
 しかも結構な量だ。

 それを見た段階で背筋がゾワッとした。
 すぐに落ちてる毛が、俺の自慢の長毛だと気づいたからだ。

(この間、0.1秒……)

「クルニャ??(え? えっ??)」
 
 あ、ああ……、ちょうど毛が生え変わる時期だったんだね。

 驚かすなよ~……。
 
 …………。

 嘘だよね? 体中・・がスース―するけど、気のせいだよね?

 そうだ! きっと夢だ!

 リルとミーナのモフモフで寝よう!!

 そう思って一歩踏み出した。

 混乱していた俺は、落ちてる毛に足を取られよろめいた。

「ウニャッ!?(ちょっ!?)」

 そのままベッドから転がり落ち……。

 ゴロゴロと転がり……。

 部屋の壁にかけられてる姿鏡の前まできた。

 鏡を見なくても、自分がどうなっているかなんとなく想像できる。
 鏡を見るのが怖い……。

 怖いけど見ないわけにはいかないと、鏡で自分の姿を見る。

 時間が止まった気がした。

 そこには毛がすべて・・・抜けた俺の姿があった。
 地肌が見えている……、というか白い地肌しか目に入らない。

 初めて知った驚愕の事実。

 俺の地肌って真っ白だったんだ……。

 なんというか……。

 つ、ツルっとしている……。

 スキンヘッドならぬ、スキン猫。
 全身に毛の無い猫、“スフィンクス”のような姿になってしまった。

「ウニャーーーー!!!(いやーーーー!!!)」

 うわ~~~!!!

 俺はその場で走り回った。
 意味もなくその場でグルグル走る回る。

 何これ? 誰これ?? 

 意味がわからない!?

 寝てる間に何が起こった??

 何で全身ツルツルになってるのさ!!

 …………。

「クルニャ~~!(リル、たすけて~~!)」

 リルの尻尾のダイブしようとしたところで、リルが目を覚ました。
 俺がギャーギャー騒いでたから、起こしてしまったようだ。

 リルは眠そうに目をこすりながら俺の方を見た。

 …………。

 リルはまたベッドに横になろうとした。

 どうやら俺を見て夢だと思ったようだ。
 なんか悲しかった……。

「クルニャーン(リル! 俺だよおれ!)」

 毛が全部抜けて全身ツルッツルだけどシュンだよ!
 リルの胸に飛び込む。

 きっとここで避けられたりしてたら、俺は心に深い傷を負っていたと思う……。

 けど、さすがリルだった。
 この時のリルの優しさは一生わすれない。

 リルはしっかり俺を受け止めてくれた。

「シュン……? どうしたの? 暑かったの?」

 ……リルはまだ寝ぼけているようだ。
 モフモフ毛皮は暑いと脱ぐものじゃないからね。

「クルニャー!!(おきたらツルツルになってたんだよ~!!)」

 俺はギャーギャー騒いで気を失いそうになるのを紛らわした。

………………
…………
……


「ツルツル……。これはこれで結構気持ちいいよ」

 リルが俺を優しくなでてくれる。
 リルは優しいな。

「うん、なんか柔らかくてウニウニした感じがクセになるかも」

 ミーナもほおずりして、優しく微笑んでくれた。

 二人の優しさに涙が出てくる。
 おかげで、少し落ち着くことができた。

 現実に向き合う気持ちが少しわいてくる。
 というわけで、自己鑑定をしてみる。

――――――――――
名前:シュン (呪い)
――――――――――

 あぁ……。

 なんか呪われてるよ。

 心当たりは……。

「クルルゥ……(心当たりあるよ……)」

 ドラゴンスケルトンを倒したときに浴びた黒い光が原因だと思う。
 なんか呪いっぽかったもんな。

 ドラゴンスケルトンはドラゴンの骨が呪い的な何かで動いていたのだろう。 
 それが中途半端な光魔法のせいで、呪いがこっちに移ったのだろう。
 そう考えると妙に納得できる。

 昨日の段階ではステータスに異常は無かったから、遅効性の毒ならぬ遅効性の呪いだったのかもしれない。

 呪いってきちんと解呪しないと術者が呪われるとか、ありそうだもんね……。
 光魔法もどきでは駄目だったようだ。
 ちゃんと四大元素魔法をそろえないとね。

 ともかく、この呪いって解くことができるのかな。
 解けたらモフモフに戻れるのだろうか。

 モフモフしてない俺なんて……。
 俺の存在価値が問われている……。

「クルニャー(リル、ミーナ、今はなぐさめて~)」

 二人とも俺の気持ちが伝わったのか、ふて寝に付き合ってくれた。

 ああ……、リルとミーナのモフモフでフサフサな尻尾が、いつも以上に俺を癒してくれる。

 失って初めて気づく大事なもの。
 昨日までモフモフで当然だと思ってた俺は傲慢ごうまんだったのかもしれない。
 
 起きたら呪いを解く方法を探そうと思いつつ、俺は眠りに落ちていったのだった――。




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