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第二章 

第33話「新たな出会い」

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 森の中を独り歩く者がいる。
 黒いローブ姿のその者の足取りは重い。

「…………疲れた」

 声は少女のそれだ。
 口数が少ないのは、疲労ゆえかそれとも性格によるものだろうか。

 とぼとぼとあまり変わらない景色の中を歩く。

「…………水」

 喉が渇いているようだ。
 水を求めてさまよい歩いている。

「…………ぽよ」

 その者の前には、延々と木々が広がるばかりだった――。




◆◆◆


 今日はギルドの依頼を受けて森にきている。

 俺のすぐ後ろには、可愛い狼っ娘と五匹の猫がついてきている。
 猫たちは狩りの雰囲気に慣れさせるために連れてきた。
 いざという時に守れるように、一組ずつ連れ歩くことにした。

「シュン、サンダーバッファローすぐ見つかるかな?」

 リルが俺に声をかけてくる。

 今回の討伐対象は、Cランク魔物のサンダーバッファローだ。
 体に電気をまとって、外敵から身をまもったりするとのことだ。
 見た目は水牛のような感じらしい。
 
 川の近くに出没することが多いらしい。
 俺たちは川沿いを上流に向かって進んでいる。

 しばらく進むと少し先に気配を感じた。
 目的の魔物だろうかと考えていた時のことだ。

 バチッと雷撃のような音が、向かってる方角から聞こえた。

「クルニャ!(向かうよ!)」

 俺たちは音のした方へ急ぐ。

 すぐに視界に一体の魔物……と、そのそばで倒れている人らしき姿が見える。
 魔物は特徴からしてサンダーバッファローだろう。
 その水牛の太い足は、半分ほど川に浸かっている。
 その近くに黒いローブ姿の人がうつぶせに倒れている。

 やばそうだ!

「シュン!」

「ニャン!(ボス!)」

 リルとミケの声が耳に入った時には、すでに駆け出していた。

 水牛との距離を一気につめる。

 途中でこちらに気づかれたけど、速度にものを言わせて近づく。
 近づいたところで風刃ふうじんを放ち、水牛を倒す。

 水牛を倒したところで、倒れている人の方を見てみる。

「クルルゥ……(死んでるってことはないよね……)」

 ちょっと不安になりながらも、黒ローブの人に近づいてみる。
 うつぶせに倒れているため、その顔は見えない。

 恐る恐る、肩のあたりを手でツンツンしてみる。

 ん?

 感触に違和感が……。

 思っていた以上に柔らかい感触だった。
 
 もしかして女の子?
 こんなところに一人で?

 リルも猫を六匹連れてるけど、女の子一人と言えば一人かもしれない。
 ふとそんなことを思った。

 黒ローブの人をゴロンと仰向けになるように転がしてみる。

「ルニャ!?(本当に女の子!? それよりも……)」

 可愛らしい女の子だった。
 見た感じの歳はリルより少し上くらいに見える。

 ただ……、その姿に驚いた。

「クルルゥ……?(人じゃない……?)」

 遠くからぱっと見ただけなら人に見えるだろう。
 けど、近くで見ると明らかに人と違う点がある。

 肌が白くプニプニした感じなのだ。
 
 よくモチモチのほっぺたというけど、ツンツンしたらそれどころではない弾力だった。
 なんというかクセになる弾力?

 俺の肉球を上回るプニプニ感に、軽い敗北感をおぼえた。

 俺の頭に浮かんだのは、『スライム娘』という言葉だった。
 白スライムの女の子が俺の目の前に倒れている。

「シュン~!」

 リルと猫たちが追いついてきた。
 


 リルがスライム娘の脈を確認して、少しほっとしたところだ。
 みんなでスライム娘の様子を見守っている。

 スライム娘が小さくうなりながら目を覚ました。

「…………うぅ」

「おはよっ」

 リルがスライム娘に声をかける。

「…………おはよう?」

 寝起きのスライム娘は戸惑っている様子だ。
 声は少女らしく可愛らしいものだった。

 戸惑うのもしょうがないと思う。
 目覚めたら狼っ娘と猫に囲まれてるんだもんね。

「だいじょうぶ?」

 リルが心配そうにしている。

「…………モフモフがいっぱい。…………ここは天国?」

 スライム娘はポーっとしている。
 モフモフするのが天国というのは、俺も同意だ。

「あれのそばで倒れてたんだよ」

 リルが水牛の方を指差す。

 スライム娘はそれを見て思い出したようだ。

「…………バチッときた」

 スライム娘が倒れていた経緯を教えてくれた。
 どうやら川で水を飲んでたところ、通りがかりの水牛が川に雷撃を放ったらしい。
 それに感電して倒れていたらしい。

 この口数の少ない少女は、運が悪かったようだ。

「え~と、わたしはリル。こっちはシュンと猫たちだよ。あなたの名前は?」

 リルがスライム娘に自己紹介する。
 プニプニな感じから普通の人族ではないことを、リルも気づいてるはずだ。
 リルはそういうのあまり気にしないもんね。

 あるとしたら、俺と一緒でプニプニさせて欲しいなとか、そんなところだろう。

「…………ライミ―」

 スライム娘はライミ―と言うらしい。

 ライミ―は、黒ローブの下は軽装だった。
 短めのショートパンツからのぞく太ももがプニプニしててまぶしい。
 美味しそう……じゃなくて、触りたい……でもなくて、膝まくらして欲しい……。

 駄目だ……、見てると邪念しか浮かばない。

「…………じ~」

 邪念にもだえてたら、ライミ―が俺をじっと見ていた。
 なんだか見透かされてるようで、恥ずかしい気持ちになる。

 ライミーは寡黙であまり表情を変えない子だけど、なんとなく悪い子ではない気がする。

「ライミー、よろしくね!」

 リルが笑顔でライミーの手を握る。

「クルニャン!(よろしくね!)」

「「「ニャーン!(よろしく~!)」」」

 ここで出会ったのも何かの縁だと思う。

「…………よろしく」

 ライミーの表情はあまり変わらないけど、なんだか嬉しそうにしてる気がする。

「ライミーの手、プニプニで気持ちいいね!」

 リルがライミーの手の感触を喜んでいる。

「…………ぽ、ぽよ」

 ライミーが明らかに照れている様子だ。
 照れ方が可愛いな……。

「クルニャーン(いいなあ……俺も俺も)」

 リルが羨ましくて、俺もライミーに近づいた。

「…………触りたい?」

 俺の気持ちを察したのか、ライミーが白い太ももを俺に近づけてくれる。
 プニプニスライム太ももが目前に……。

「クルルゥ?(触っていいの?)」

 俺は上目づかいでライミーを見る。

「…………少しだけ」

 ライミーが少し照れている。
 お言葉に甘えて触らせてもらうことにする。

「クルニャ(いくよ)」

 ちょっとばかり気合を入れて、ライミーの太ももをツンツンする。

「ルニャッ!?(これは!?)」

 何というか、凄く気持ちいい。

 プヨンプヨンと押し返してくる弾力がたまらない。

 ずっとプニプニしていたくなる。

 ふと、梱包用のプチプチを無心でプチる心境になった。

 ツンツン……、プニプニ……。

 ツンツン……。

「…………ぽ、ぽよっ!」

 俺はライミーの声で我に返った。

 ツンツンしすぎたかも。
 恥ずかしそうにしてるライミーを見て、ちょっと罪悪感が……。

 でも、照れてるライミーがなんか可愛いぞ。
 ツンデレならぬツンポヨさんではないか。

 ちょっとツンの意味が違うけど。

「クルニャ……(結構なお手前で……)」

 混乱していたせいで、俺は変な事を口走っている。

 周囲の冷たい視線を感じリルを見ると、ジト目だった。

「シュン……」

 ご、ごめんなさい……?

「ニャン……(ボス……)」

 猫たちもあきれた様子でこっちを見ている。

「クルニャー……(ご、ごめん。夢中になりすぎました……)」

 でもさ、でもさ。

 触り心地が良すぎるんだよ。

 その時、ライミーが爆弾を投下する。

「…………全身おっぱい?」

 このツンポヨさん、真顔で何てことを言いやがる……。

 たしかに最高の触り心地だったけどさ。

 なんだか無性に恥ずかしくなってきた。
 
 居たたまれなくなった俺は、その場で丸くなる。

 その後、リルが「と、とりあえずご飯にしようか」と言うまで、俺は丸まっていたのだった――。
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