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第一章 モフはモフを呼ぶ
第4話「絡まないと死んじゃう病気か何かかよ……」
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ガラの悪い二人組に声をかけられた。
すぐ隣には、これまたガラの悪い犬っぽい魔物を従えている。
デカいな……。
片方が縦に、片方が横に大きい。
要はノッポとデブだ。
「そうそう、お前のことだ」
ノッポがニタニタ笑いながらリルに声をかけてくる。
なんだろう……、生理的に嫌悪感を抱くとは、まさにこのことだろうか。
ゾワッとした。
あったかモフモフな俺に寒さを感じさせるとは……。
「リルが、なんですか?」
リルも嫌そうにしている。
「これだから、新人はよお。ガロン兄弟ってのは俺たちのことだ。この街で冒険者やるなら覚えておきな」
「兄ちゃん、よく見ると。この獣人の子可愛いね。ウヒッ」
どうやらノッポが兄で、デブが弟のようだ。
それにしても、いろいろと酷い兄弟だ。
「お前あいかわらず幼い子が好きだな」
「兄ちゃん、この可愛さが分からないなんて……。まあいいや。それより、お前は今日から俺たちのパーティーに入ろう。うん、決定だ」
デブの弟が、こちらの意見も聞かず、うんうんと頷いている。
離れたところにいる他の冒険者たちがコソコソ話している。
俺のよく聞こえる声が、話している内容を拾う。
「ガロン兄弟の新人への絡みが始まったよ……。あの新人、可哀想に……」
「あいつら、タチ悪いくせに実力はあるからな」
「そうなのよね。Bランク冒険者だしね」
「だけど、私あの兄弟は絶対嫌だわ。キモイし……」
どうやら冒険者たちの間でも、評判は悪いようだ。
こんな奴らが、一流冒険者と呼ばれるBランクなのか……。
はぁ、しかしこいつら……、絡まないと死んじゃう病気か何かかよ……。
「嫌です!」
リルが心底嫌そうにしている。
「え? よく聞こえなかったなあ。どう、思う? 兄ちゃん」
「そうだな。新人だと不慮の事故とかよくあるしな。俺たちで守ってやらないとな」
ニタニタしながら、勝手なことを言っている。
「結構です! リルにはシュンがいますから!」
リルはきっぱりと断る。
そうだ、そうだ!
万が一お前らみたいな奴にリルが騙されそうになっても、俺が追いはらう。
「シュンって……、そのワイルドキャットのことか? プッ……」
兄の方が、笑いがこらえきれないとばかりに、馬鹿にした顔をする。
「ちょっと大きめだけど、従魔にする魔物じゃないだろ。ウヒッ」
こいつら……。イライラする奴らだな。
リルもムッとしている。
たしかに俺の見た目は、ワイルドキャットという猫科の魔物だ。
そして、ワイルドキャットはEランクの魔物の中でも下の方だ。
冒険者じゃなくても倒せるような弱さというのが常識だ。
ペットとして飼っている家もあるらしい。
まあ俺の種族はワイルドキャットじゃないけどね。
実は少し前にワイルドキャットから進化している。
と言っても、リルも俺のことをワイルドキャットだと思っているはず。
言葉で伝えられないし、特に伝える必要性も今のところないからね。
「俺たちの従魔を見て見ろよ。Cランクのガルムだぜ。この牙強そうだろ」
ガラの悪い犬が、口をガバっと開けて威嚇してくる。
大型犬くらいの大きさで、さらに大型犬をマッチョにした姿形だ。
Cランクってことは、あの鹿より2ランクも強いのか。
見た目の怖さに反して、弱そうに見えるけど油断できないな。
「全然よ。シュンの方が強いんだから!」
リルの怒ってる姿はめずらしい。
優しいリルのことだ。
きっと俺を馬鹿にされたと思っているんだろう。
多分これは、こいつらの挑発だ。
きっとこの後……。
「へ~、強いねえ。じゃあここの地下にある訓練場に行こうか」
「兄ちゃん、従魔どうしの決闘だね。そこの獣人、お前は負けたらパーティーに入ってもらおう」
「そうだな、強いなら負けないだろうからな」
「パーティーに入ったら何をしてもらおうかな。ウヒヒ」
ほら、来た。
ガロン兄弟がニタニタといやらしい笑みを浮かべている。
初めからこれが狙いだったんだろう。
今ならまだリルが決闘しないと強く言えば取り消せるだろう。
ただそれだと守られる必要があるくらい弱いって認めることになる。
リルが俺の方を見る。
申し訳なさそうな顔をしている。
勝手に巻き込んだと思っているのかもしれない。
いいだろう。
リルに降りかかるものは全て払い除ける。
悪意も、物理的な障害もすべてだ。
それにここで力を示しておけば、今後こういうわずらわしいことが減るかもしれない。
「クルニャ~ン!(ここは任せて!)」
「……シュン」
リルがはにかむ。
うん、リルにはいつも笑っていてほしい。
その時、カウンターの隣席のギルド職員が声をかけてくる。
「ガロンさん、ギルド内での揉め事は困りますよ……」
ちょっと気の弱そうな、おっとりした感じの受付嬢だ。
「なあに、揉め事じゃねえよ。新人にたいするコミュニケーションってやつさ」
「そうそう、今からだって訓練するために訓練場を借りるだけだしね。ウヒッ」
「どっちも合意のやくそくってやつだ。だろ、そこの獣人」
ガロン兄弟の強気の態度に、受付嬢も押され気味のようすだ。
今回は俺もやる気だし、合意には違いない。
リルを見て、俺はうなずく。
「いいよ。そのかわりシュンが勝ったら、もう二度と声をかけてこないで!」
「いいとも、いいとも。ガルムが負けたら、このギルドの建物にも近づかないでやるよ」
「俺たちが勝ったら、お前は俺たちのパーティー入りな」
というわけで、俺たちは地下の訓練場に向かうことになった。
ぞろぞろとたくさんの野次馬を引き連れて……。
すぐ隣には、これまたガラの悪い犬っぽい魔物を従えている。
デカいな……。
片方が縦に、片方が横に大きい。
要はノッポとデブだ。
「そうそう、お前のことだ」
ノッポがニタニタ笑いながらリルに声をかけてくる。
なんだろう……、生理的に嫌悪感を抱くとは、まさにこのことだろうか。
ゾワッとした。
あったかモフモフな俺に寒さを感じさせるとは……。
「リルが、なんですか?」
リルも嫌そうにしている。
「これだから、新人はよお。ガロン兄弟ってのは俺たちのことだ。この街で冒険者やるなら覚えておきな」
「兄ちゃん、よく見ると。この獣人の子可愛いね。ウヒッ」
どうやらノッポが兄で、デブが弟のようだ。
それにしても、いろいろと酷い兄弟だ。
「お前あいかわらず幼い子が好きだな」
「兄ちゃん、この可愛さが分からないなんて……。まあいいや。それより、お前は今日から俺たちのパーティーに入ろう。うん、決定だ」
デブの弟が、こちらの意見も聞かず、うんうんと頷いている。
離れたところにいる他の冒険者たちがコソコソ話している。
俺のよく聞こえる声が、話している内容を拾う。
「ガロン兄弟の新人への絡みが始まったよ……。あの新人、可哀想に……」
「あいつら、タチ悪いくせに実力はあるからな」
「そうなのよね。Bランク冒険者だしね」
「だけど、私あの兄弟は絶対嫌だわ。キモイし……」
どうやら冒険者たちの間でも、評判は悪いようだ。
こんな奴らが、一流冒険者と呼ばれるBランクなのか……。
はぁ、しかしこいつら……、絡まないと死んじゃう病気か何かかよ……。
「嫌です!」
リルが心底嫌そうにしている。
「え? よく聞こえなかったなあ。どう、思う? 兄ちゃん」
「そうだな。新人だと不慮の事故とかよくあるしな。俺たちで守ってやらないとな」
ニタニタしながら、勝手なことを言っている。
「結構です! リルにはシュンがいますから!」
リルはきっぱりと断る。
そうだ、そうだ!
万が一お前らみたいな奴にリルが騙されそうになっても、俺が追いはらう。
「シュンって……、そのワイルドキャットのことか? プッ……」
兄の方が、笑いがこらえきれないとばかりに、馬鹿にした顔をする。
「ちょっと大きめだけど、従魔にする魔物じゃないだろ。ウヒッ」
こいつら……。イライラする奴らだな。
リルもムッとしている。
たしかに俺の見た目は、ワイルドキャットという猫科の魔物だ。
そして、ワイルドキャットはEランクの魔物の中でも下の方だ。
冒険者じゃなくても倒せるような弱さというのが常識だ。
ペットとして飼っている家もあるらしい。
まあ俺の種族はワイルドキャットじゃないけどね。
実は少し前にワイルドキャットから進化している。
と言っても、リルも俺のことをワイルドキャットだと思っているはず。
言葉で伝えられないし、特に伝える必要性も今のところないからね。
「俺たちの従魔を見て見ろよ。Cランクのガルムだぜ。この牙強そうだろ」
ガラの悪い犬が、口をガバっと開けて威嚇してくる。
大型犬くらいの大きさで、さらに大型犬をマッチョにした姿形だ。
Cランクってことは、あの鹿より2ランクも強いのか。
見た目の怖さに反して、弱そうに見えるけど油断できないな。
「全然よ。シュンの方が強いんだから!」
リルの怒ってる姿はめずらしい。
優しいリルのことだ。
きっと俺を馬鹿にされたと思っているんだろう。
多分これは、こいつらの挑発だ。
きっとこの後……。
「へ~、強いねえ。じゃあここの地下にある訓練場に行こうか」
「兄ちゃん、従魔どうしの決闘だね。そこの獣人、お前は負けたらパーティーに入ってもらおう」
「そうだな、強いなら負けないだろうからな」
「パーティーに入ったら何をしてもらおうかな。ウヒヒ」
ほら、来た。
ガロン兄弟がニタニタといやらしい笑みを浮かべている。
初めからこれが狙いだったんだろう。
今ならまだリルが決闘しないと強く言えば取り消せるだろう。
ただそれだと守られる必要があるくらい弱いって認めることになる。
リルが俺の方を見る。
申し訳なさそうな顔をしている。
勝手に巻き込んだと思っているのかもしれない。
いいだろう。
リルに降りかかるものは全て払い除ける。
悪意も、物理的な障害もすべてだ。
それにここで力を示しておけば、今後こういうわずらわしいことが減るかもしれない。
「クルニャ~ン!(ここは任せて!)」
「……シュン」
リルがはにかむ。
うん、リルにはいつも笑っていてほしい。
その時、カウンターの隣席のギルド職員が声をかけてくる。
「ガロンさん、ギルド内での揉め事は困りますよ……」
ちょっと気の弱そうな、おっとりした感じの受付嬢だ。
「なあに、揉め事じゃねえよ。新人にたいするコミュニケーションってやつさ」
「そうそう、今からだって訓練するために訓練場を借りるだけだしね。ウヒッ」
「どっちも合意のやくそくってやつだ。だろ、そこの獣人」
ガロン兄弟の強気の態度に、受付嬢も押され気味のようすだ。
今回は俺もやる気だし、合意には違いない。
リルを見て、俺はうなずく。
「いいよ。そのかわりシュンが勝ったら、もう二度と声をかけてこないで!」
「いいとも、いいとも。ガルムが負けたら、このギルドの建物にも近づかないでやるよ」
「俺たちが勝ったら、お前は俺たちのパーティー入りな」
というわけで、俺たちは地下の訓練場に向かうことになった。
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