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第6話「甘やかすのはわたしの役目です!」
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街に到着した。
カーミラという名の街だ。
周囲は城壁に囲まれていて、敵の侵入を防ぐように作られている。
魔物がいる世界だから、街の人が安心して生活するのに必要なものなのだろう。
街に入るためには、門で衛兵のチェックを受ける必要があるらしい。
俺とミラだけだったら止められていたかもしれない。
今回は有難いことに、ロレーヌと一緒だったおかげで、すんなりと街の中に入ることができた。
「レンヤ、最後にもう一度言うけど、私の元で働く気はない? お礼も兼ねて結構な待遇になるように話を通すわよ?」
年下のロレーヌが、大人っぽい口調でつげてくる。
街までの間、話してみてロレーヌの人となりが少し分かった。
貴族の娘だけど、偉ぶらないし、ミラを下に見ることもない。
ラノベとかだと、獣人は差別されることが多いからさ。
貴族っぽくない、というのが俺のロレーヌに対する印象だ。
だから、俺とミラに対するこの誘いは悪くないものではあるけれど……。
「ロレーヌちゃん! レンヤ様を甘やかすのはわたしの役目ですよ! これだけは譲れません」
ミラが、ロレーヌに対して何度目かになる宣言をする。
人差し指を顔の前で立てて、ダメですよとつげる。
歳が近かったこともあってか、ミラとロレーヌが仲良くなってしまった。
まあ、ミラに関しては見た目の歳でだけど。
今ではミラがロレーヌに対して気安く話すほどだ。
初めは護衛の人がソワソワしていたけど、途中で慣れた様子を見せていた。
元々、ミラはあまり人間の身分というものを気にしないのだろう。
飼い主だった俺に懐いてるのはあるけど、基本は我が道を行く猫だ。
「ミラ、レンヤとミラ一緒で良いのよ。それでもダメ……?」
ロレーヌが上目遣いでねだるようにして、ミラに問いかける。
「ロレーヌちゃん、レンヤ様は働いてはいけないのです! だから雇われるのはダメなのです」
ミラの、俺を働かせないという意志は固い……。
この鉄よりも固い意志のため、ロレーヌが俺を雇うということには強く反対してるのだ。
「そっかぁ……、残念ね。さすがにうちも、雇わずにただで置いておくわけにはいかないのよね。私は良いんだけど……」
ロレーヌが残念そうにつげる。
ロレーヌは良いんだ……。
ただで置いておくだけでも。
もはや、雇う雇われるというよりも、ペットを飼うのを取り合ってるのに近い気がしてきた。
もしくは、どっちが俺をヒモにするかの会話だ。
「ロレーヌちゃんが良ければ、いつでも遊びに行きますから」
「そうね。私の家の場所を教えておくから、今度遊びに来てね。絶対よ!」
ロレーヌは、俺たちが遊びにいって名乗れば会えるようにしておくと言ってくれる。
それから、冒険者ギルドへの紹介、お勧めの宿屋の手配等、俺たちにとって初めてのこの街でも、生活しやすいように準備をしてくれた。
宿屋に行ったときに、すでに一ヵ月分の代金が支払われていて驚くのは、その日の夕方の話である。
ロレーヌ様々だ。
冒険者ギルドで冒険者登録も済んだし、明日は依頼を受けてみようということになった。
ミラが、「レンヤ様は見てるだけで良いからね! わたし頑張るからっ!」と言っていた。
どうやら、ロレーヌとの出会いの影響で、やる気が増してしまったようだ……。
その日、宿は一部屋を二人で使うことになった。
俺はなんとなく照れがあったけど、ミラは当然だとばかりに休む準備を進める。
ベッドが二つあったことが、せめてもの救いだろうか。
ミラとはいつも同じ部屋で寝ていたのに、姿が違うだけでこうも緊張するのは不思議な感じだ。
美少女と同じ部屋ということで凄くドキドキしたけど、疲れのためかいつの間にか眠りに落ちていた。
次の日の仕事のことを考えなくていいって、なんて幸せなのだろう――。
◆◆◆
ん……?
体の上に何かが乗っかっている?
……たしか昨日、異世界にミラと一緒に転移したはずだ。
夢……ではないはずだ。
そう思いながら俺は目を開けた――。
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猫は独占欲が強い個体が多いとの噂ですね。
縄張り意識の名残りでしょうか。
カーミラという名の街だ。
周囲は城壁に囲まれていて、敵の侵入を防ぐように作られている。
魔物がいる世界だから、街の人が安心して生活するのに必要なものなのだろう。
街に入るためには、門で衛兵のチェックを受ける必要があるらしい。
俺とミラだけだったら止められていたかもしれない。
今回は有難いことに、ロレーヌと一緒だったおかげで、すんなりと街の中に入ることができた。
「レンヤ、最後にもう一度言うけど、私の元で働く気はない? お礼も兼ねて結構な待遇になるように話を通すわよ?」
年下のロレーヌが、大人っぽい口調でつげてくる。
街までの間、話してみてロレーヌの人となりが少し分かった。
貴族の娘だけど、偉ぶらないし、ミラを下に見ることもない。
ラノベとかだと、獣人は差別されることが多いからさ。
貴族っぽくない、というのが俺のロレーヌに対する印象だ。
だから、俺とミラに対するこの誘いは悪くないものではあるけれど……。
「ロレーヌちゃん! レンヤ様を甘やかすのはわたしの役目ですよ! これだけは譲れません」
ミラが、ロレーヌに対して何度目かになる宣言をする。
人差し指を顔の前で立てて、ダメですよとつげる。
歳が近かったこともあってか、ミラとロレーヌが仲良くなってしまった。
まあ、ミラに関しては見た目の歳でだけど。
今ではミラがロレーヌに対して気安く話すほどだ。
初めは護衛の人がソワソワしていたけど、途中で慣れた様子を見せていた。
元々、ミラはあまり人間の身分というものを気にしないのだろう。
飼い主だった俺に懐いてるのはあるけど、基本は我が道を行く猫だ。
「ミラ、レンヤとミラ一緒で良いのよ。それでもダメ……?」
ロレーヌが上目遣いでねだるようにして、ミラに問いかける。
「ロレーヌちゃん、レンヤ様は働いてはいけないのです! だから雇われるのはダメなのです」
ミラの、俺を働かせないという意志は固い……。
この鉄よりも固い意志のため、ロレーヌが俺を雇うということには強く反対してるのだ。
「そっかぁ……、残念ね。さすがにうちも、雇わずにただで置いておくわけにはいかないのよね。私は良いんだけど……」
ロレーヌが残念そうにつげる。
ロレーヌは良いんだ……。
ただで置いておくだけでも。
もはや、雇う雇われるというよりも、ペットを飼うのを取り合ってるのに近い気がしてきた。
もしくは、どっちが俺をヒモにするかの会話だ。
「ロレーヌちゃんが良ければ、いつでも遊びに行きますから」
「そうね。私の家の場所を教えておくから、今度遊びに来てね。絶対よ!」
ロレーヌは、俺たちが遊びにいって名乗れば会えるようにしておくと言ってくれる。
それから、冒険者ギルドへの紹介、お勧めの宿屋の手配等、俺たちにとって初めてのこの街でも、生活しやすいように準備をしてくれた。
宿屋に行ったときに、すでに一ヵ月分の代金が支払われていて驚くのは、その日の夕方の話である。
ロレーヌ様々だ。
冒険者ギルドで冒険者登録も済んだし、明日は依頼を受けてみようということになった。
ミラが、「レンヤ様は見てるだけで良いからね! わたし頑張るからっ!」と言っていた。
どうやら、ロレーヌとの出会いの影響で、やる気が増してしまったようだ……。
その日、宿は一部屋を二人で使うことになった。
俺はなんとなく照れがあったけど、ミラは当然だとばかりに休む準備を進める。
ベッドが二つあったことが、せめてもの救いだろうか。
ミラとはいつも同じ部屋で寝ていたのに、姿が違うだけでこうも緊張するのは不思議な感じだ。
美少女と同じ部屋ということで凄くドキドキしたけど、疲れのためかいつの間にか眠りに落ちていた。
次の日の仕事のことを考えなくていいって、なんて幸せなのだろう――。
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ん……?
体の上に何かが乗っかっている?
……たしか昨日、異世界にミラと一緒に転移したはずだ。
夢……ではないはずだ。
そう思いながら俺は目を開けた――。
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猫は独占欲が強い個体が多いとの噂ですね。
縄張り意識の名残りでしょうか。
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