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我慢の限界です。
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とある休日、俺は溜めていた家事をしていた。もちろん鈴は仕事だ。人気配信者はほとんど休みはない。動画撮影だけではなくcmや雑誌の撮影などもはやテレビタレントと変わらない。
前までは休日はちゃんと休みとって一緒に出かけてたのに…
普通なら働き詰めの恋人を心配するのが一般的だ。最初は俺だってそうだった。ただあまりにもこういう時間が続くとげんなりしてきてしまう。
あぁダメだダメだ!気分を入れ替えよう。そう思って動画サイトで何か面白い動画ないか探そうと開いたら、おススメに新しくアップされたフルーツバスケットの動画があった。のだが。
【[ご報告]ついに彼女が出来ました?!】
その動画のタイトルを見て俺は目を疑った。それだけじゃない、額に怒筋が出来た。
サムネがリンゴと多分配信者らしき女性が写っている。
長髪の女性とリンゴが仲良く体を寄せ合い指でハートを作っていた。
まだ動画は観てない。わかっている。というか普通に煽り文句のタイトルの後にコラボって書いてあるし。
けれども問題はそこじゃない。いくら隠しているからって、いくらサムネ受けするからってなんでこんな動画を作った。何故りんごである必要があったんだ。
ガチャ。
するとそんな時、玄関から扉が開く音がした。
「ただいまー。今日はめっちゃ久しぶりに早く帰れたわ~」
鈴だった。鈴は腕を回して肩を鳴らしていた。
「鈴…この動画、なんだよ?」
俺はおかえりとも言わずに例の動画を鈴に見せつける。
「ん?あぁそれ、人気チャンネルとコラボした時の動画だよ!観てくれたんだ!」
「…それだけ、か?」
「それだけって…あ。」
鈴はすぐに俺が何が言いたいのか察したようだった。
「違うよ!いわば釣りサムネだよ!別にその人とはただ一緒に撮影しただけだから?!」
何もないからと鈴は焦っている。もちろんわかっている。けれとも…
「本当の恋人が居るのにその配信の方が一緒にいたんだろうな。」
「えっ?何言ってるの一吾さん?しょうがないじゃん、仕事なんだから…」
「仕事、仕事ねぇ…なら仕方がないよな。恋人にいる時間なんかよりもそっちが大切だろうしよ。」
あぁ、ダメだ。これ以上はいけない。鈴を困らせるだけだ。
なのに、今まで押さえてきた不満が口から出てくる。
「なんなんだよそれ?!言ってんじゃん!ただの動画の演出だって!しかも別にすぐにネタバラシしてるし!第一!一吾さん俺が忙しいのわかってるじゃん?!」
「わかっているつもりだ!!だからずっと我慢してきてやったんだろ?!」
「何が我慢?!一吾さんはまだいいじゃん!定時で帰れて、こうやって休日ちゃんと休み取れて、しかも前だってピーチに行ってたんじゃん!オレなんか毎日毎日忙しいのに、普通のサラリーマンにはわからないよ!!」
最後にそう言われて、俺の中に何かが冷たくなった。そして冷静になれた。
「…そうか、じゃあ俺達、もう終わりだな…」
自然と口から出た。鈴は目を丸くしていた。
「えっ、は?」
「正直、前から考えていたんだ。こんな生活が続くなら…別れたいって…」
「い、いち、ごさん?」
それでも別れを切り出さなかったのは、まだ鈴が好きだったから。配信者として頑張る彼を応援していきたかった。
けれどももうここまできたら限界だった。好きだけじゃ持たなかった。
「鈴、別れよう。」
俺は口角を上げた。
きっともう、俺達はおしまいだったんだ。一緒にいる時間がなかったから気づかなかっただけで。
鈴がりんごとして大人気配信者になった時点で、変わってしまった。けれどもそれは鈴が悪いんじゃない。一緒に変えられなかった俺が悪い。
もう俺には鈴の隣に居るのは相応しくない。
「っ、なんなんだよそれ!あぁ良いよ!別れたいなら別れてやる!」
鈴は目に沢山の涙を浮かべながらそのまま家から出て行ってしまった。
前までは休日はちゃんと休みとって一緒に出かけてたのに…
普通なら働き詰めの恋人を心配するのが一般的だ。最初は俺だってそうだった。ただあまりにもこういう時間が続くとげんなりしてきてしまう。
あぁダメだダメだ!気分を入れ替えよう。そう思って動画サイトで何か面白い動画ないか探そうと開いたら、おススメに新しくアップされたフルーツバスケットの動画があった。のだが。
【[ご報告]ついに彼女が出来ました?!】
その動画のタイトルを見て俺は目を疑った。それだけじゃない、額に怒筋が出来た。
サムネがリンゴと多分配信者らしき女性が写っている。
長髪の女性とリンゴが仲良く体を寄せ合い指でハートを作っていた。
まだ動画は観てない。わかっている。というか普通に煽り文句のタイトルの後にコラボって書いてあるし。
けれども問題はそこじゃない。いくら隠しているからって、いくらサムネ受けするからってなんでこんな動画を作った。何故りんごである必要があったんだ。
ガチャ。
するとそんな時、玄関から扉が開く音がした。
「ただいまー。今日はめっちゃ久しぶりに早く帰れたわ~」
鈴だった。鈴は腕を回して肩を鳴らしていた。
「鈴…この動画、なんだよ?」
俺はおかえりとも言わずに例の動画を鈴に見せつける。
「ん?あぁそれ、人気チャンネルとコラボした時の動画だよ!観てくれたんだ!」
「…それだけ、か?」
「それだけって…あ。」
鈴はすぐに俺が何が言いたいのか察したようだった。
「違うよ!いわば釣りサムネだよ!別にその人とはただ一緒に撮影しただけだから?!」
何もないからと鈴は焦っている。もちろんわかっている。けれとも…
「本当の恋人が居るのにその配信の方が一緒にいたんだろうな。」
「えっ?何言ってるの一吾さん?しょうがないじゃん、仕事なんだから…」
「仕事、仕事ねぇ…なら仕方がないよな。恋人にいる時間なんかよりもそっちが大切だろうしよ。」
あぁ、ダメだ。これ以上はいけない。鈴を困らせるだけだ。
なのに、今まで押さえてきた不満が口から出てくる。
「なんなんだよそれ?!言ってんじゃん!ただの動画の演出だって!しかも別にすぐにネタバラシしてるし!第一!一吾さん俺が忙しいのわかってるじゃん?!」
「わかっているつもりだ!!だからずっと我慢してきてやったんだろ?!」
「何が我慢?!一吾さんはまだいいじゃん!定時で帰れて、こうやって休日ちゃんと休み取れて、しかも前だってピーチに行ってたんじゃん!オレなんか毎日毎日忙しいのに、普通のサラリーマンにはわからないよ!!」
最後にそう言われて、俺の中に何かが冷たくなった。そして冷静になれた。
「…そうか、じゃあ俺達、もう終わりだな…」
自然と口から出た。鈴は目を丸くしていた。
「えっ、は?」
「正直、前から考えていたんだ。こんな生活が続くなら…別れたいって…」
「い、いち、ごさん?」
それでも別れを切り出さなかったのは、まだ鈴が好きだったから。配信者として頑張る彼を応援していきたかった。
けれどももうここまできたら限界だった。好きだけじゃ持たなかった。
「鈴、別れよう。」
俺は口角を上げた。
きっともう、俺達はおしまいだったんだ。一緒にいる時間がなかったから気づかなかっただけで。
鈴がりんごとして大人気配信者になった時点で、変わってしまった。けれどもそれは鈴が悪いんじゃない。一緒に変えられなかった俺が悪い。
もう俺には鈴の隣に居るのは相応しくない。
「っ、なんなんだよそれ!あぁ良いよ!別れたいなら別れてやる!」
鈴は目に沢山の涙を浮かべながらそのまま家から出て行ってしまった。
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