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個性
しおりを挟む人間の身体をを自由にいじることが出来るようになった時代。子供はみんな同じ顔で産まれてくる。
性別は関係なく紙同様の白い肌にぼうず頭、茶色の瞳が子供の姿だ。例外はなく身長も声も皆平等である。
18歳になって完成に改造出来る身体になれば容姿を自分好みに改造できる。
顔の形、肌の色、髪の色や質感、瞳の色、声のトーン、背の高さ。これらを自由に選ぶことが出来るのだ。
それが大人になった証拠である。
子供が早く大人になりたがるのは、自分の個性を持ちたいからである。
「早くAも大人になりたいわ。」
とある日本の小学校でAは先生にそう言った。子供は皆自分のことを名前で呼ぶ。
先生は大人なので、小柄で黒い髪にぱっちりした茶色の瞳、薄橙色した肌をしている。
「Aさんはどんな大人になりたいのですか?」
「Aはね!オードリーヘップバーン見たいな綺麗な女性になりたいの!」
Aは大昔の大女優の名前をあげた。彼女は後世でもその栄光が引き継がれている。
「まぁ、でもAさんは日本人でしょう?オードリーはイギリス人だった筈ですから。改造するならせめて日本人の女優にしないと。」
「はーい。」
Aは納得してないがとりあえずしたフリをした。
「そういえば先生、どうして大人はみんな同じ顔をしているの?」
「あらAさん、顔は世代によって違うのですよ。私より若い世代は茶髪でしたし。流行ってのがありますから。」
「ふぅん。じゃあママと先生は同じ年なの?先生とママ同じ顔だから。」
「そうでしょうね。」
そう聞いたAはとある疑問を抱いた。
「でも不思議ね、大人って自分が好きな様に容姿を設定できるんでしょう?先生は自分だけの容姿にしたくなかったの?」
「いい質問ですね、Aさんがオードリーヘップバーンに憧れたように、人には必ずなりたい姿というのがあります。それはいつの時代もそうです。そして不思議なことに自分がなりたい姿は他の人もなりたいと思っているということです。そうなると自然に同じ顔が生まれるということですね。ちなみに私とAさんのお母さんの世代は橋本環奈という女優が流行っていたのです。」
Aはそれを聞いて半分納得した。けれども同時に違和感も生まれた。確かに自分はオードリーヘップバーンのような容姿にしたいけど、髪色は金色にしようかなと考えていたからだ。先生も彼女の母親も全く同じで違いはないから。どうせならちょっとだけでもどこか違う部分にすれば良かったのにと思うのだった。
ーーーーー
あれから数年が経ってAは念願の大人になれたので早速自分の容姿を改造することにした。
そして久しぶりに小学校の先生に会いに行った。
「Aさんお久しぶりです。オードリーヘップバーンにはしなかったんですね。」
「お久しぶりです先生。えぇ、流石に…人と違うのって恥ずかしくって…」
「そうでしょう、それが大人なのです。」
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