嫌いなアイツと一緒に○○しないと出れない部屋に閉じ込められたのだが?!

海月さん

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不満

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 「はぁ……」

 シリウスに対する気持ちにモヤモヤし、キャスがあれから現れないことに対するイライラが交差してて俺の頭はパンクしそうだ。
 
 キャスの場合はいつどこで悪さをしているのか冷や汗が出る。でも、指名手配されてるのにいつまでもこの街に留まるとは思えない。最近はもうキャスにストレートパンチ3発喰らわせるのは諦めた方が良いんじゃないかと思い始めた。奴は愚かだがズル賢い奴だ。もしかしたらもうとっくに国外逃走している可能性がある。
 なんかもう、大人しくしてくれるならもう二度と俺の前に現れないで欲しい。そんぐらいまいっている。

 あぁもう、普段の俺なら絶対にこんな思考にならないというのに、どんだけ追いやられてるんだ。
 出来るだけ何も考えないように俺は素振りをする。この時間は誰も訓練所に居ないから気が楽だ。
 
「相変わらず真面目だな、ライアン。」

 が、俺の悩みの種の一つが声をかけて来やがった。

「シリウス…なんだ貴様も自主練しに来たのか?」

「しないってわかってるんだろ?」

「はぁ…じゃあせめて手合わせしろ…」

「…あぁ、いいぜ。」

 そう言って互いに訓練用の木剣を構える。そして俺から先に攻撃を仕掛ける。大きく振りかぶって横薙ぎするが、シリウスはそれを躱していく。その時シリウスは躱わす際に両手に握っていた木剣を右手だけ構えるように持ち直した。その隙を狙って俺はシリウスの右手に木剣を降り注く。
 木剣がカタンと床に落ちた。シリウスは降参するかのように両手を上げた。

「オレの負けだな?」

 乾いた笑いをしながらシリウスはそう言ってきた。

「……お前、前より手を抜いてるだろ。」

「……」

 確かにシリウスはいつも手を抜いている。けど、明らかに前よりも明らかにわざとすぐ負けるように行動していた。
 
 何故だ、何故手を抜く。そんなにも、俺と手合わせしたくないというのか。
 
「俺のこと弱いと思ってるから、わざと手を抜いているのか?」

「な訳あるか。お前は騎士の中でも腕がある方だろ。単純にオレのやる気の問題だから。」

 そう言ってシリウスは俺の肩に手を置こうとしてきた。
 だが俺はその手を払う。

「ふざけるのもいい加減にしろ?!!俺を馬鹿にしやがって!!少しは見直していたがやっぱり根本的にお前は怠慢な奴だな!」

「…」

「俺は、俺はただ…本気のお前と手合わせしたいだけだ。」

 あの時、人を助ける時に見せたあの強さを、この身で感じたかった。
 そんな俺の自分勝手な言葉を聞いたシリウスは困ったように眉を下げて視線を横にしていた。

「……お前のことが好きだから。」

「…は?」

 え、は?この流れで急に何を言い出したんだこいつは?
 というか好きって俺のことを?

「すき、は?」

「ずっと前から、あの部屋に閉じ込められる前から、お前が好きだったんだよ、じゃないと抱かないしプレゼントだってしない。」

 突然の告白に動揺する俺に、シリウスはまっすぐと俺に顔を向けた。
 その表情は真剣そのものだった。冗談を言っていないことぐらい俺にもわかる。
 だから俺は耳まで赤く沸騰したかのように顔に熱が集まった。

「ばばば、馬鹿なことを言うな?!!お前が俺のこと好きって、そんな戯言を!!仮に本当ならなぜそれが本気で来てくれないことと関係あるんだ?!」

 まさか好きで怪我させたくないとかだったら、お前にストレートパンチ3発喰らわせるぞ?!!

「…情け無い話だが、自分に自信がないからだ。」

「自信がない?」

「思えば昔からそうだったのかもな、父上や兄上のようになれない。妹のように器用に出来ない。何やったって無駄だって思っていた。期待されても期待に応じることは出来なかった。」

 シリウスは何か諦めたように顔を曇らせていた。そういえば初めて手合わせ願った時、家がどうのって言われた気がする。
 
「だから、お前に失望されたくなかったんだ。悪かったな。」

 申し訳なさそうにシリウスは微笑んだ。
 要はシリウスは俺に勝てる自信が無いからわざと手を抜いて負けていた。ということか。
 
「……ちなみになんで俺を好きになったんだ?口うるさいし、嫌味ばかり言うし、こんな高圧的な俺なんかを…」

 もし俺がシリウスの立場なら少なくとも好きになる要素なんてない。それこそ嫌いになってもおかしくないぐらいだ。

「そんなの単純だ。お前がシリウスを見てくれてるからだ。」

 まるで当たり前のようにシリウスは答えたが、正直よくわからない。
 俺がシリウスを見ている?
 好意を向けられているの気づかないことを良いように勝手に傲慢な奴だとレッテルを貼り、嫌味ばかり言ってきてシリウス自身を見ようとしてこなかったのに?
 
「意味がわからねぇ…」

「わからなくてもいいさ。」

 しばらく沈黙が続いた。何を言えば良いのかわからなかったのだ。


「おい!ライアン、シリウス!ここに居たか!!」

 そんな時だった。同期が俺達を探しに来たのか若干汗をかいてこっちに来た。

「え、何この空気怖っ。ってそれよりもだ。キャスの件で団長から呼び出しがあったから今すぐ来いよ。」

「キャスのことでか…?」

 俺とシリウスは一旦顔を合わせた後、とりあえず騎士団長の所に向かった。
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