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媚薬を飲まないと出れない部屋

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 キャスが作り出した悪趣味な部屋に閉じ込められたあの日から1週間は経った。あの後、俺の腰は逝かれていた。屈辱的だったがシリウスの肩を借りないと歩けないぐらいだった。しかもそれを仲間に見られて揶揄われる始末。上からはキャスを逃したことで叱られるし…
 マジでキャスの奴、次あったら一発ストレートパンチ喰らわせてやる。
 そしてシリウスとヤッてしまったことがいまだに頭から離れられない。時間が経った今思い返すとなんで鍵を開いたのに俺は自分の感情を優先してしまったのか、というかシリウスの奴も断れよ!
 …そういえば、突起してたってことはアイツ俺に興奮してたってことだよな…?あの表情も俺を求めていたような…
 って何を考えてやがる!!忘れろ忘れろ!
 俺は寮の狭い部屋に置かれているベッドで暴れ回る。
 けれども身体は忘れるところが思い出したかのように熱くなる。

「くそっ……」

 仕方なく俺はヌくことして自分の性器を取り出す。アレからほぼ毎日あの時のことを思い出しては興奮してヌくということを繰り返していた。

「……ものたりねぇ……」

 認めたくないけど、あの快楽を味わってしまった以上、ただ擦るだけじゃ物足りなかった。
 俺はズボンと下着を下ろしてベッドに横たわる。そして後孔に指を入れていく。
 流石に自分じゃ前立腺には届きそうにはない。けれどもシリウスの指が、アレが入っていたことを思い出しながら、性器も弄りながら後孔に入れた指も動かしていく。

「くっ……あっ、シリ、うす…」

 あの熱がもう一度欲しい…!
 そう思いながらイクと次は必ず賢者モードに入る。

「……ぐっ、何やってるんだ俺は…」

 羞恥心で染まっていく。
 そして次の日、出勤するとシリウスと鉢合わせする。

「……!」

「おはよう。調子はどうだ?」

 シリウスはあの日の後でもいつもと変わらずにこうして挨拶してくる。以前の俺なら。

『ふん!今日も調子は良いわ!それよりもお前は朝からやる気が無さそうだな、騎士としての態度を改めてたまえ!手合わせしてもらうから今日こそはやる気出せよな?!』

 って嫌味と小言を挟んで言っていた筈だが、今はそれが言えない。だって顔が見れないからだ。
 あの日の事もあるし、何よりもシリウスに抱かれたのを思い出しながらオナってたとか尚更だ!

「あ、あぁ…」

 そう言って俺はすぐさまその場から離れた。
 ヤツの顔を見る度にフラッシュバックしてくる。あぁ、本当に気に食わない。いっそ乱暴か下手くそだったらどんなに良かったか。
 それから訓練の時も俺はシリウスを避けていた。

「あれ、いつもシリウスの奴に手合わせしにいくのに今日はいかないんだな?」

 同期からそう言われてしまう。確かにいつもなら俺は奴に手合わせを願っている。まぁやる気がないから手合わせしてもこっちばかり勝っているのだが。

「あ、あぁ…どうせ結果はわかってるんだ…もういいだろって…」

「ふーん。」

 そうだ、どうせ今日もやる気を出すことなくさっさと勝負が決まるだろう。むしろ今までなんで手合わせを願っていたのか不思議だ。
 俺は奴が嫌いで気に食わない。嫌いなら普通は関わらない。それが当たり前だ…

「………」

 それから夕刻まで時間は流れた。

「おい!キャスの奴!今度は花街で見かけたと通報があったぞ!」

「なに?!」

 今度は花街か、キャスの相手をさせられている娼婦に同情してしまう。
 
「何人かは現場に向かってくれだそうだ!」

「わかった。俺行く、今度こそ奴を捕まえてやる…!」

 という訳でキャスが居ると通報受けた場所に向かう。夕方になり徐々に客が増えてきて店も開き出している。

「あの娼館にキャスが居るらしいな。」

「……何故貴様もいる!シリウス!」

「仕事だからに決まってるだろ。」

 くそぅ、普段はやる気見せないくせにこういう場面ではやる気出しやがって…良いことなのだが今ではないだろ。
 …まぁ良い、一番最初にキャスを見つけてぶん殴れば少しはこの気持ちも晴れるだろう。
 そして俺達はキャスが泊まっている部屋の前に移動する。ここは窓がないからまさに袋のねずみ。
 扉を開けた瞬間だった。突然部屋からピンク色の煙が放出されたのだ。

「ゲホッゲホッ!!なんだこれも魔術か?!」

「しまった、これじゃ視界が…」

 その時走る足音が遠のいていくのが耳に入った。しくじった!目眩しで脱走されたか?!
 そのピンクの煙は娼館全体に覆われていき騒ぎ声が聞こえてくる。

「っち、まてキャス!!!」

 そう思い壁を伝って追いかけようと壁に手を当てようとしたが触れたのは壁ではなく人だった。

「うわっ!?!」

「げっ、シリウス悪い!」

 どうやらシリウスだったようで俺に押されたことで倒れてしまったようだ。
 俺は慌てて感覚を頼りにシリウスに駆け込んだ時だった。

 背後からガチャンと鍵が閉まる音がして俺は背筋が凍った。
 ピンク色の煙が晴れた先は前に閉じ込められた部屋と全く同じ状態の部屋だった。

「ま、まさかこれ…キャスの魔術が作り出した空間…くそっ、またしても罠にかかっちまったのか!?!」

 何よりも俺が原因でこの空間に入ってしまったことだ。シリウスを押し倒したことで自然に部屋に入ってしまった。

「悪いシリウス…俺のせいで…」

「いや、転んだオレが悪い。それよりもあの時と同じなら条件があるはずだ。」

 俺は一瞬ビクッとなった。もしあの時の様に無茶苦茶な条件と同じだったらと思うと変な汗が出る。
 そう言って俺達はテーブルに置かれていた紙を確認する。

「なに、【媚薬を飲まないと出れない部屋】…だと?」

 テーブルの上には紙とは別に10本の瓶が置かれていた。つまりこれが媚薬で飲めってことか。セックスよりかはマシではあるが随分悪趣味だ。本当に悪趣味だ…

「ライアン、今回は幸い外に他の奴らもいる。この部屋が異常だとわかれば助けが入る筈だ。」

 確かに前回とは違って助けにくる率は高い。けど今娼館はキャスの魔術でパニックだ。

「いや、今パニックでしばらく助けは入らないだろ、それにキャスを追いかけるにしても娼館にいる一般人を落ち着かせる為にも人が必要だ。だから…」

 俺は媚薬を一本取り出してそれを飲む。どろっとしていてミントの風味があるのにあまったるい味だ。

「おい!?!ライアンなにを?!」

「…幸いこれを飲めば出れるんだろ?なら俺が全部飲むからシリウス、部屋から出たらすぐに現場に対応しろ…」

「だからって全部お前が飲む必要はないだろっ。」

「馬鹿野郎、2人揃って身体が思うように動かせませんってなる訳いかねぇだろ。俺のせいでこうなった訳だし…それに冷静になれるお前なら適役だろ…」

  気に食わないがそれしか今は方法が思いつかない。という多分俺自身冷静になれてないからだと思うのだが…

「…わかった、だが無理はするなよ。」

「あぁ…」

 俺はそのまま2、3、4本と飲み続ける。よくよく考えたら媚薬っていうぐらいなんだから薬の多数摂取になるんじゃないかと気づく。というかそれ以前に毒とか入っている可能性もあることも気づく。
 いやもうここまで来たら後戻りは出来ない。俺は飲むことだけを考える。
 段々と身体が熱くなってくるのがわかる。それと同時に足に力が入らなくなり思わず膝をついてしまう。

「おいっ、もう限界だろ…残りはオレが飲むから…」

「ばか、やろう…ナメる、なよ…」

  俺は残りの媚薬を手に取り全て口に入れた。
ガチャ
 10本飲んだことで鍵が開いたようだ。しかし俺の身体はもう限界でその場に倒れてしまう。

「ライアン?!」

「い、いいか…ら早く行け…」

 シリウスは駆け込もうとしてきたが俺にそう言われて拳を握って扉の方に向かう。

「わかった、終わったらすぐ戻る…」

「べつ…に…いい、から…はよいけ…」

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