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だそくの章
エピローグ3(おまけ)
しおりを挟む現地入りして五日後くらいには仕事を終えた慈は、本部に任務完了の連絡を入れると、残った日数を観光に当てる。
パナマシティからカスコ・ビエホという古い建物がひしめく旧市街を通って、パナマ・ビエホという遺跡を訪れる。
風化した石造りの建物跡が残る、割と広々とした緑の公園。遠くに白い高層ビル群や、赤い屋根の街並みが見える。
「……」
崩れた石壁と展望塔を見上げると、少しあの世界の風景を思い出して、感傷に浸ったりしてみる。
しばらく黄昏ていた慈は、そろそろ帰ろうかと歩き出す。この辺りは陽が沈むと文字通り真っ暗になるのに加え、昼間でも治安はあまりよろしくない。
遺跡公園を出て宿泊先のホテルに向かおうとしたところで、三人組の男達に絡まれた。
というか、一人が正面から話し掛けて来て注意を惹きつつ、背後からもう一人が荷物を奪おうとバックパックに手を掛けた。少し離れた位置にいるもう一人は見張りのようだ。
慈は極小範囲の無気力化空間を展開して、正面と背後の二人を怠惰に堕とす。
範囲外に居た見張り役は、仲間の二人が一瞬で地面に倒された様を見て一目散に逃げ出した。見張り役が逃げた先には更にもう一人仲間が居たようで、逃走用のバイクに跨って待機している。
「おい、何があった! あいつ等は!?」
「ヤバい、カンフーマスターだ! 逃げろっ!」
約50メートルほど先のフェンスの角でそんなやり取りをしている二人に向かって、慈は無気力化勇者の刃を放つ。
ややあって、逃げた見張り役と逃走用の足役が崩れ落ちるように倒れた。
「放置でいいか」
他に動く仲間が居ない事を確認した慈は、そのままこの場を立ち去った。彼等は明日の朝まではあの状態なので、常習犯だったならパトロール中の警官辺りが見つけて拾っていくだろう。
現代の勇者。慈の平穏で刺激的な日常の一幕であった。
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