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廃線の町編
プロローグ
しおりを挟む曽野見 景。彼は幼少の頃、家族で田舎の親戚の家を訪れていたある日、バスに突っ込まれる事故に巻き込まれた際、特異な能力に目覚めた。
『石神様』という特定の力ある場に祈る事で記憶を残し、死亡時にその祈った時と場所まで遡る、いわゆる死に戻り能力。
田舎のお婆ちゃん達はケイに能力が目覚めた時、その基本的な使い方と効果を伝承で託した。詳しくは教えられなかったが、曽野見一族の血筋に、稀に現れる能力なのだとか。
『ふつうは女の子に現れるんやけどねぇ。なんでケイちゃんやったんやろうねぇ』
ケイのお婆ちゃんは、当時そんな事を言っていた。
やがて成長して都会の高校に通う事が決まったケイは、家を出て一人暮らしを始めた。
幸いにして、それまで死ぬような事故にも事件にも遭わず、能力が再び発動する事もなく平穏な日々を過ごせていた。
時折、幼少の頃の記憶とセットで思い出す事があったくらいで、自分の血筋に纏わる特異な力の事などすっかり忘れていた。
その力を強く意識し始めたのは、高校生活の中で何度か死に戻りをするような事件や事故に巻き込まれる経験をしてからだった。
(流石に一年以上も巻き戻るのは勘弁だな……)
新しい街に越して来て最初に見つけた『石神様』に何となく祈り、能力発動の印である鐘の響きを聞いてから放置していたのだが、高校二年の時に修学旅行中の事故に巻き込まれた。
その事故で死亡したケイは、街に越して来た日に祈った『石神様』の前で目覚める事になった。
高校一年からやり直す羽目になってしまったケイは、以来、家の近くにある『石神様』で小まめに復帰点を更新するようにしていた。
自身に宿る特異な能力を明確に自覚したが故に引き寄せられるのか、ケイは在学中も様々なトラブルに見舞われた。
死に戻りが発動するほどの大事に巻き込まれた場合、その事件や事故の発生を未然に防ぐよう自発的に働き掛けては、トラブルの芽を摘んで平穏な日々を勝ち取る。
そんな暮らしを続けながら無事高校も卒業して、今年十九歳になるケイは、『石神様』と死に戻り能力で実際の年齢より二年分ほど長く生きている。
色々な経験を積んできたケイだが、そんな彼にして特に不可思議と思える体験と出会いをした事件がある。
それは、いつもの気ままな一人旅での出来事。
利用者の減少や財政難から、今年で廃線になるという片田舎の駅がある町を観光に訪れた時の事であった。
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