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3巻

3-1

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 プロローグ


 フラキウル大陸南西部に広がる砂漠地帯には、点在するオアシスの数だけ民族国家が存在すると言われており、それらが支分国となって、一つの大きな帝国を成している。
 豊かな水源と肥沃ひよくな大地の広がる南東部への進出を目指してまとめ上げられた国、それがナッハトーム帝国であった。

「む、スィル様がお戻りになられたぞ、門を開けろ」
「開門!」

 コウ達のいるグランダール王国が魔導寄りの技術で発展してきたのに対し、ナッハトームは機械化寄りの技術が進んでいる。
 ただし、元々グランダールの魔導兵器に対抗する目的で開発が進められた為か、その技術は軍事用の兵器類にかたよっていた。またそうした事情により、魔術士や戦士など戦闘にけた冒険者が多く輩出される傾向にあった。
 重々しい音を立てて宮殿の大門が開かれると、騎馬隊がそのまま通過できそうなほど広い正面の通りを、一人の戦士が闊歩かっぽしていく。重甲冑じゅうかっちゅうに包まれたその姿に、兵士達は皆、尊敬と憧れの眼差まなざしを向けている。


 門から宮殿に入り、広い廊下を真っすぐ進んだ突き当たりには、扉の付いた大きな柱が並ぶ。塔のようにも見えるその柱の中でも、ひと際大きい中央の柱に、細かい装飾の入った豪華な扉があった。その前に立つ老紳士が戦士を丁寧なお辞儀で迎える。

「お帰りなさいませ、スィルアッカ様。兵達の訓練、お疲れ様です」
「うむ。皆はもう揃っているか?」

 重甲冑のかぶとの奥から、少々くぐもった、しかし確かに女性のものと分かるりんとした声が発せられる。

「はい。皆様、お待ちになっていらっしゃいますよ」

 老紳士はそう答えると、扉を開いて自身が仕える主を中へ促した。この大きな柱は半年程前の改修で宮殿に設置された、機械式の昇降機である。廊下の両側には内向きに階段が伸びているが、今は非常時にしか使われていない。


 各方面から集まったナッハトーム軍の将校達が一斉に立ち上がり、入室してきた重甲冑姿の最高司令官、ナッハトーム帝国の皇帝陛下より全軍の指揮権をゆだねられているスィルアッカ皇女殿下に敬礼を捧げた。

「スィル将軍!」
「皆、ご苦労。早速だが現在の戦況を報告してくれ」

 訓練所から直接宮殿の総司令部にやって来たスィルアッカはそう言って、会議の席では邪魔になる重甲冑をぽいぽいと脱ぎ始めた。司令部付きの使用人達がそれを手伝い、最高級の訓練用重甲冑が手際よく片付けられていく。
 ごつい篭手こての内側からは細く引き締まった健康そうな白い腕が現れ、膝をまもる装甲や脛当すねあてが外されるとスラリとした脚線美があらわになる。兜と一体になっている胴体部分を脱いでようやく身軽になったスィルアッカは、新鮮な空気を吸い込み、伸びをした。
 汗に濡れる火照ほてった身体を使用人から受け取ったタオルで拭きながら、大きな地図の広げられた台座の傍に腰を下ろす。
 僅かな布で胸と腰回りしか覆われていないその姿に、若い将校達は目のやり場に困る。アップにした髪を解き、赤み掛かった金髪が絹糸きぬいとのように滑らかな流動で肩を撫でたところで、重鎮の将校が報告を始めた。
 ――ちなみに、これら一連の扇情的な行動は彼女スィルの計算尽くである。


「ふむ……では、やはりグランダール側にも異世界の技術が伝わっている可能性が高いという訳だな?」
「ハッ、交戦した兵の証言と技術者達の話を纏めると、ほぼ確定ではないかと」
「魔導船なども『例の書物』にある空飛ぶ船そのものと言えますし、先日の戦いで新たに投入された魔導兵器部隊――」
「あれは丸っきり我々側が開発していた〝滑走機〟や〝携帯砲〟と同じ概念を持つ兵器ですぞ」

 グランダールで〝魔導輪まどうりん〟と〝魔導まどう小銃しょうじゅう〟と呼ばれている新型武装がそれだった。完成度はやはり魔導器を使っているグランダールの方が高いようだと、強襲部隊の将校が忌々いまいましそうに顔をしかめる。
 全く同じ時期に同じ概念から成る新しい兵器が現れるなど、偶然とは思えない。『例の書物』に関する情報と新兵器開発については厳重な管理体制が敷かれており、情報が漏れたとも考えにくい。そもそも魔導技術で先行するグランダールが、ナッハトームで極秘開発中の機械化兵器を探って真似るとも思えないのだ。
 となると、ナッハトームが確保している異世界人の書物と同じモノか、或いは書物に書かれてあるような知識を持つ者がグランダールにも居ると考えられる。

「その事ですが、暗部同盟の報告にもそれらしい人物の存在を示す情報があったようです」
「ほう、事前に詳細を掴んでいたと?」
「それが……作戦の進行状況を纏めた定期報告にあった情報でしたので、見落としていたようで」
「そうか、ではもっと詳しく調べさせよう」

 丸被まるかぶりした新兵器の発想の出所については、それで話を終える。それから国境のとりでに対する戦略やエイオア国の動向、グランダール軍の動きに対する確認と対処の指示を一通り済ませ、スィルアッカ最高司令官は総司令部を後にした。


 軍施設の集中する区画を抜けて離宮へと向かう廊下に入ると、控えていた侍女達がわらわらと寄ってきて、スィルアッカに皇族の衣装を着せていく。歩みを止める事なく着衣を済ませるスィルアッカは、これから向かう場所の事についていつもの確認をとった。

「〝彼〟はいつも通りか」
「はい。今日もお変わりございません」

 護衛もこなす側近の侍女から、エイオアより祈祷士きとうしを呼んでいる事などの報告を受けつつ離宮の廊下を進み、スィルアッカは一番奥にある部屋の前に立つ。〝彼〟の世話係達が並んでお辞儀をする中、彼女は部屋へ足を踏み入れた。


 そこそこ豪華な作りをしたこの部屋は、他の部屋と違って壁に窓がなく、天窓から差し込む光も厚いカーテンでさえぎられ、昼間でも薄暗い。一応、要人をす為の部屋ではあるが、まるで隔離部屋に近い印象を与えている。
 入ってすぐの広間は応接スペースとなっており、〝彼〟の容態をる為に呼ばれた医者や薬士達はここで待たされる事になっていた。

「お前が今回呼ばれた祈祷士か。かなりの腕利きだと聞いている」
「御初に御目に掛かります、スィルアッカ様。エイオアの祈祷士、リンドーラと申します」


 一年程前、ナッハトーム帝国の治癒施設として使われている古い遺跡で、倒れ伏した一人の若者が発見された。その若者は、明らかにナッハトームの人間ではない顔立ちをしており、身に纏う衣服は非常に上質で、近くには高級そうなカバンと極めて精密な絵の描かれた書物が散らばっていた。
 奇妙な事に、この若者は発見された時から意識を失ったままで、どんな治癒術をほどこしても目を覚まさなかった。
 行き倒れの遭難者を発見したとの届け出を受けた治安課の担当官は、若者の身形みなりや所持品にあった書物、見た事もない筆記用具らしき精巧な道具などから、何処どこかの大国の貴族ではないかと考えた。そして軍上層部に大使の行方不明者が居ないか問い合わせたのである。
 その時に持ち込まれた書物や精巧な道具がたまたまスィルアッカ皇女の目に留まった。その際、彼女は皇帝の秘事録にある、〝異邦の地よりも更に遠く異界より迷い込みし者あらばれ必ず確保すべし〟という古い言い伝えを思い出す。
 何処の国から来たのか、はたまた秘事録の一節にあるような異界から迷い込んだのか。いずれにせよこれほど精巧な道具を作り出せる技術を持つ国の人間ならば是非とも厚く保護し、その国と国交を開いてグランダールに対抗し得る技術の援助を求めたい――
 当時、既に皇帝から全軍の指揮権を与えられ、ナッハトームの行く末を任されていたスィルアッカ皇女は、国力の強化を図る為にこの若者、名も分からぬ〝彼〟を持て成すべく離宮に運び込んだ。
 しかし、それから何日経っても〝彼〟はひたすら眠り続けた。スィルアッカは〝彼〟の治癒に高名な医者や術士を呼ぶ一方で〝彼〟の書物を調べ、そこに精巧な絵で記されている様々な兵器類を見て、これを実現できないかと考えた。
 神話や御伽噺おとぎばなしにありそうな天に広がる大地の風景と、そこに描かれた空飛ぶ船。巨大な足をつけた動く砦、城のような甲冑巨人。兵器開発の技術者達は書物から得たアイデアを活かすべく研究にいそしみ、ナッハトームの機械化兵器が開発されていった。
 そして調べど探れど一向に正体の分からない〝彼〟については、やはり異界より迷い込んだ者ではないかと考えられるようになった。
 この異世界人が目を覚ませば、もっと色々な知識を得られるのではないか――今回、エイオアから高名な祈祷士であるリンドーラが呼ばれたのは、そういった流れからである。
 意識不明の異国人男性を覚醒させられないか、状態を診て欲しいとの依頼。
 宙空を漂う魔力を集めて自らに取り込み、特定の流れを作り出して諸現象へ導く魔術士と違い、祈祷士は自然界の魔力の流れに触れ、交流と干渉によってその方向性を定め、諸現象へ導く。
 全ての生ある者は、その身に血肉と同じように魔力を宿している。祈祷士の術は魔力の流れを通してその生命に触れ、相手の本質を感じ取る事ができるのだ。

「では、早速だが診て貰おう。こっちだ」
「はい」

 奥の寝室には、天幕付きのベッドに横たわる若い男性の姿があった。傍に付いていた世話係が外され、部屋にはリンドーラとスィルアッカ、側近の侍女、そして眠り続ける〝彼〟の四人だけとなる。


〝彼〟が異世界人であるかもしれない事は一般的には伏せられているが、リンドーラには治癒に必要な情報として、色々と細かい事情も含めてある程度まで明かされていた。
 そして、対象の心に触れてその者の本質を見抜く熟練祈祷士の能力が発揮される。

「……!」

 リンドーラは〝彼〟の状態をて、一瞬目を見張った。それからその意味に気付かれないよう、〝彼〟の状態についてスィルアッカ達に説明を始める。魂は宿っているが意識が精神諸共もろとも存在していない。この世界に現れる際、落としてきたのかもしれない――と。

「今の状態では一生掛かっても自然に目覚める事はないでしょう。ですが、何かの拍子に精神が戻る事もあるかもしれません」
「祈祷術で精神を呼び戻す事はできんのか?」
「それは……世界が違うので非常に難しいですね」
「ふむ、方法がない訳でもないという事か」

 あごに指をあてて考え込むスィルアッカに、リンドーラは『無理に目覚めさせようとすると本来の精神とは違うモノが入り込んでしまう危険もあるので、迂闊うかつに降神術の類は試さない方が良い』と警告する。

「状態が判明しただけでも良しとするか。ご苦労だった、エイオアの祈祷士よ」
「あまり御役に立てず、申し訳ありません」

 リンドーラが殊勝に頭を下げて退室すると、〝彼〟の世話係が呼ばれて再びベッドの傍に控える。寝室を出る際、スィルアッカは側近の侍女に一瞬の目配せを行った。僅かな動作で承りの意を示す侍女は、他の侍女達に混じっている部下に目線で指示を出す。
 この祈祷士の動向を監視せよ――そんな内容の指示であった。


 ナッハトームの王宮を後にしたリンドーラは、心の中で確信していた。離宮の奥深くにかくまわれている精神の抜けた眠れる異世界人――あれは、以前バラッセの街の迷宮で出会ったコウの本体である、と。
 エイオア国としてはグランダールとナッハトーム、どちらが優勢になり過ぎても困る。グランダールの現国王や次期国王とは上手く付き合っていけそうだが、ナッハトームは次代の皇帝がどう動くかまだ未知数だった。
 今回のナッハトームによるグランダール侵攻の再開はある意味、スィルアッカ皇女が現皇帝や民や支分国に自身の次期皇帝としての能力を示す為のものでもある。
 機械化技術を発展させ、国力の強化に尽力したスィルアッカ皇女は現在グランダールとの戦況も、魔導兵器を駆るグランダール軍相手に互角以上に進めており、その力を十分に示している。
 もし、最近なにかと活躍が噂されるコウが本来の身体に戻り、ナッハトームが今以上の力を得るとしたら、戦力バランスが大きく崩れ兼ねない。
 グランダールの魔導技術とどうにか並ぶまでに発展した機械化技術だが、帝国は異世界より持ち込まれた書物を解析して参考にしただけで、あそこまで機械化技術を発展させたのだ。
 以前見たとき、魔獣犬の中にいた精神体のコウは記憶を失っているようだった。そのコウが本来の身体に戻る事で記憶が覚醒した場合、文字も分からない絵付きの書物からのみで進められていた帝国の機械化技術は更に洗練され、魔導技術をも凌駕するほど発展し――ナッハトームは再び覇権を求めて侵攻を始めるかもしれない。

(コウには知らせない方がいい? 或いは……冒険者としてエイオアに呼び込んだ方が確実?)

 帰国したら評議会に報告しなければと一つ予定を立てたリンドーラは、送迎の馬車に乗り込んだ。



 1


 グランダール王国の西域にある街グリデンタは、先にナッハトームに侵攻されたアリアトルネと同じく、ナッハトームとの国境近くにある。だが、砦と兼用の非常に強固な街である為、ナッハトーム軍もここには手を出していない。
 地理的にも国境から馬車で二日分ほど南に位置しているので、距離がありすぎて補給線が延びきってしまう。攻略のリスクが高い為、攻撃対象としての優先度が低いという理由もある。
 グランダールの王都トルトリュスを飛び立ったアリアトルネ行き魔導船の定期便二〇八エスルア号は、このグリデンタを経由してアリアトルネに入る航路を進んでいた。現在はグリデンタまで巡航速度であと半日ほどの地点を夜間航行中である。
 ナッハトーム帝国軍の遠征部隊から国境の街バラッセを防衛する為、ガウィーク隊より特別任務を受けてバラッセに派遣されていたコウは、無事防衛を果たして王都トルトリュスに帰還した。
 そして今、ガウィーク隊はアリアトルネの防衛に就いており、コウも彼等と合流するべく、この定期便に乗船している。

「あら……コウ君、まだ起きてるの?」
「うん、ちょっとね」

 船室で寄り添って眠るお姉さん方に両側を挟まれているコウ。彼女達はアリアトルネで就労予定の使用人である。睡眠をとる必要のないコウは普段、皆が寝静まっている間に魔術の練習をしたり、外を散歩したりするのだが、船に乗っている間は無闇に動き回る訳にもいかないので大人しくしている。

「だめよ~? 子供はちゃんと寝ないと」

 そう言って自分の膝にコウを抱き寄せた使用人の女性は、くるまっていた毛布で一緒に包み込むと、やがて穏やかな寝息を立て始めた。
 船室の小さな窓を見上げれば、そこには月明かりに照らされながら流れていく灰色の千切れ雲。その隙間にまたたく小さな星々。低く唸る魔導機関の稼動音に混じって、僅かに聞こえる風の音。夜間航行の静かなひととき。
 なんとなく懐かしさを覚えたコウは、自分を毛布で包む使用人のお姉さんの鼓動に耳を傾けながら目を閉じた――その時、風の音に何か別の音が混じった。


「ん? なんだあの光は――」

 見張り役の兵が船のへりから地上の森を見下ろした瞬間、左舷前方で爆発が起きた。エスルア号の船体が大きく揺れる。

「何事だ!」
「分からんっ、敵襲かもしれん!」
「見張りが一人落ちた!」
「くそっ、機関全開! 最大速度で上昇しろっ」

 地上からの攻撃らしいという事で、上昇して回避を試みるエスルア号の船尾を、何かが掠めて飛んでいく。シュルシュルと音を立てながら煙の軌跡を引いて飛翔する筒状の物体が二本、大きく弧を描いてエスルア号に先端を向けた。
 それを見たコウの脳裏に、欠けた記憶から何かのイメージと名称が浮かび上がる。

「あれは……ゆうどうみさいる?」

 見る間に迫る筒状の二つの物体。片方は途中で失速し、噴出していた煙が途切れて落ちていったが、もう一本はエスルア号の後部甲板付近でぜた。船体が衝撃で傾く。
 更に船底付近で起きた爆発によって操舵不能になったエスルア号は、船体をコマのように横回転させながら森へと落下していった。

「駄目だっ、魔導機関がやられた!」
「全員何かにつかまれ! 衝撃に備えろ!」

 甲板では護衛や見張り役の兵達は手摺りや窓枠につかまって踏ん張り、船室では使用人達が悲鳴を上げながら椅子の足などにしがみ付く。この混乱状況の中、皆を護らねばと立ち上がり掛けたコウの意識に別の情景が重なった。
 ――エンジンから煙が出てる――墜落するぞ! ――みなさん落ち着いて、席を立たずにライフジャケットを――

「っ……!」

 その瞬間、コウの存在がぶれた。憑依による支配が解かれて、コウが宿る少年型召喚獣のコントロールが失われる。
 形態の維持に特化しているので召喚が解除される事はなかったが、身体から力が抜けた。ぐったりと崩れ落ちたところを使用人のお姉さん方に抱きかかえられる。

「コウ君しっかり!」
「大丈夫だからね!」

 しっかり抱きしめて励ましながら床に伏せる使用人達。彼女達からすれば、コウは有名討伐集団ガウィーク隊の従者とはいえまだ小さな子供なのだ。やがて森の木々に接触して大きくバランスを崩したエスルア号は、煙を噴き上げながら墜落したのだった。


   ◆ ◆ ◆


「やった! 撃墜成功だ」

 森に潜むナッハトームの強襲機械化部隊で〝魔力探知式・筒型火炎槍つつがたかえんそう〟を操る特殊砲兵が歓声を上げる。
 今回の戦いに、ナッハトーム側は機械化戦車をはじめ滑走機や携帯砲のような小型火器など多くの新兵器を投入していた。グランダール領に侵入中の部隊は各新兵器の性能実験も兼ねている為、激戦区から離れたこのグリデンタにも展開して、様々な環境下で兵器を運用しているのだ。
 グランダールの魔導船は兵や物資を前線まで迅速に運搬できる。陸路を行く馬車など比べ物にならないその輸送力は、ナッハトーム軍にとって常に脅威であった。
 今までは空を行く魔導船に対して有効な攻撃手段がなく、折角包囲した拠点にむざむざ援軍や物資を運び込まれて持ち直されていた。それどころか魔導船から直接爆撃を受けたりと一方的にやられてしまう場面が多かったが、これで対抗手段ができた。
 元は歩兵用の強力な攻城兵器として、機械化戦車と同時に作られた〝筒型火炎槍〟に一定量の魔力を探知して向かっていく機構が付けられたのが、この〝魔力探知式・筒型火炎槍〟だ。その有用性が実証されたと、ナッハトーム兵は喜び勇みながら魔導船の落ちた場所へ向かう。

「魔導船の撃墜は俺達の部隊が初だよな!」
「多分な。これで領地が増えたらこの土地が褒美で貰えるのは確実だぜ」
「俺、こっちに土地を貰ったら穀物育ててエール酒を作るんだ」
「はっはっはっ、気がはぇーよ」

 やいのやいのと浮かれつつも警戒を怠る事なく墜落現場にやって来た彼等は、短剣と携帯砲を構えると、へし折れた木の傍で横転している魔導船に近付いていく。救出作業でもしているのだろうか、そこには残骸の陰でうごめく乗組員らしき姿が見えた。


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