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155 あなたでよかった(終)

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「レーファは竜と麒麟の血を半分ずつ引いているのですから問題ありません。サンディラとヴェルティスについては、潔斎をしているので大丈夫です」
「へ?」
「は?」

 間抜けな顔を晒したふたりに、「おや」と清潤は首を傾げる。

「誰も説明しませんでしたか? あなたたちの潔斎は本式ですし、三十日を勤めた後さらに半年ほど皇国の料理を食べていますから……私たち竜とほぼ同じ時を生きられます」
「……半年で?!」
「竜人と同じ!?」

「ええ。そのための料理はヒトの味覚でかなりつらいものがあったと思いますが……あなたたちは残さず綺麗に食べたと聞きましたし。問題ありません」
「…………」
「…………」

 サンディラとヴェルティスのあの目配せは知っている。「おまえ知ってたか?」「いや、全然」という意味だ。

「……ヴェルティス、今日はふたりの好きな料理をいくつか夕餉に入れるように料理番に伝えておいてもらえる? オレの好きな辛い料理もひとつ追加で」
「えっ?」
「めでたいことは祝うべきだって、昔母様が言ってたからね」

 知らなかったことを知ったのだから、祝ってもいいはずだ。
 何より喜ばしいことなのだから。

「ね、清潤?」

 振り返って問いかければ、清潤もこくりと頷いてくれた。

「あなたたちが知らないとは思っていませんでした。私の怠慢です。……酒も、上等のものを開けましょう。明日は休みにしますから、たくさん飲んでください」
「え……えっと……じゃあ、お言葉に甘えて……?」
「たらふく食べさせてもらうとするかァ」

 嬉しげなふたりを見つつ、昼餉は節制するように伝えておこうと決めた。ふたりは料理番のところへそそくさと行ってしまう。きっとどんな料理が食べたいか、リクエストするのだろう。
 清潤に後ろから抱きしめられる。

「……どうしたの?」
「賑やかなのも良いと思えるようになったのは、あなたたちのお陰です」
「そう……?」
「ええ。その意味でも、あなたが私のツガイで良かった」

 知らないことを知ることができるのは楽しみのひとつだと清潤が微笑む。
 柔らかい声は、きっと本当にそう思ってくれているからなのだろう。
 レーファは体をくるりと反転させ、清潤にぎゅっと抱きついた。

「……オレもそう思ってるよ。……ツガイが清潤でよかった。……好きになってくれて、よかった」

 ここまで何度もやり直しさせられた人生も、無駄ではなかったのだと思える。
 きっと、もう人生をやり直すことはない。
 そう思えた。
 それが一番嬉しい。

「あなたこそ。好きになってくれてありがとうございます。……ずっと一緒ですよ」

 離しませんから、と言う清潤に口付けされて微笑まれる。
 一瞬だけ迷う。
 けれど思い切って口付けを返すと、清潤は宝物を手に入れた子どもより嬉しげにはにかみ、レーファを柔らかな布でくるむように抱きしめた。
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