【完結／番外編更新】皇国竜王恋物語◆白竜王のツガイだったせいでループｎ回目、最終的には溺愛されてます◆

143 四凶（2）

「このように変えるのです。『楔はいつ現れるか、戦いの前か最中か』と」
「……なるほど、『誰であるか』より『時期はいつか』は、たしかに重要だ。四弟の意見ももっともだ」

　青竜王が何度か頷く。

「戦いの最中までに現れるのであれば、きっと間に合うでしょう。それまでに時間稼ぎをする必要はあるでしょうし、持ちこたえなければなりませんが」
「史書によれば、今までの『楔』は貴族以上の貴人に生じている。事前に諸侯らに通達し、その兆候がある者は速やかに申し出させるようにすればいいのではないか？」

　白大公の言葉に紅竜王が大きく頷く。

「それまでの間、できる限り四凶を弱らせておきたいな。……我ら四海竜王であれば、可能だと信じているが」

　紅大公が口を開いた。

「そういえば皇上、四凶のうち渾沌が鳳凰族のところに顕現すると。かの大陸には渾沌のみ、麒麟のところには檮?、我らのところには窮奇と饕餮がおりますが、窮奇と饕餮のいずれが顕現するのでしょう？」

　窮奇は西、饕餮は北よりに封印されているのだと、教えられて知っている。

「窮奇だ」

　玉皇上帝のきっぱりとした答えに、白大公は苦虫を噛み潰した顔をする。

「やはり西か……」
「……あれはヒトを喰らう。諸侯らには西側の国を中心に護ってもらわねばなりませんな」
「土地を腐らせる饕餮よりマシと言えるかどうか……」
「窮奇は大風も起こすぞ。脆い作りの家ならひとたまりもない。諸侯には念のため民の避難所も作らせねばなるまい」
「封印強化だけでは足りぬとは……」

　白大公や青大公の言葉に、レーファはそんな場合でもないのに感動していた。

（竜人は居丈高でヒトを下に見るというけれど……こういう時は護ってくれようとするんだな……）

　ヒトの間での噂は当てにならない――というより、前回の災厄がヒトの感覚では大昔すぎて、そういった対応について伝わっていない。
　また、以前清潤が言っていた、ヒトの反乱も四凶の影響だということに関連しているのかもしれない。
　ヒトの歴史の中では、四凶のことなど伝えられていないから。

（ちゃんと見て、考えないとダメだって、ここに来てからつくづく思う）

　できれば清潤のツガイとして恥ずかしくないよう、彼に恥をかかせることがないよう、もっとしっかり勉強もしようと心に決めた。