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「それで、結果は?」

 本題に戻そう。
 この男のペースに飲まれていると、本題を見失う。
 判断して問いかけると、シェイユウはバリバリと頭を掻く。

「それが……わかりませんでした!」
「……はあ?」

 あっけらかんと言い放ったシェイユウに、思わず呆れる。

「当術院で持っている血液サンプルは、ありとあらゆる種族を網羅しているんです。この大陸には少数ながらも様々な獣人が住んでいますが、そちらも所有しています。ですが、レーファ様の血はそれらのどれとも一致しなかった。これはつまり」
「つまり?」
「サンプルが得られていないごく少数の種族の中に、ルーツがあるのではないかと思われます」
「シェイユウ術院長、サンプルを得られていない種族について答えよ」

 横からの声に驚きそちらを見れば、太極殿へ第上した時の服のままの清潤が小宮に入ってきたところだった。

「清潤! おかえり……そんな顔、っていうか……怒ってたら、シェイユウ術院長が怖がっちゃうだろ」

 レーファの指摘通り、清潤の表情は厳しい。それが何によるものなのかはレーファにはわからない。サンディラやヴェルティスは澄まし顔になっているから、もしかしたらわかったのかもしれないが。
 椅子に座るレーファの隣に立つのは、まるで威嚇しているようだ。

「いえあのレーファ様……恐縮です……大丈夫です……」

 明らかに怯えた顔をしているシェイユウは、ポーズなのか本当に困っているのか虚勢なのか、この三十分ほどの付き合いしかないから迷ってしまう。

「院の者たちが慌ただしく探していた。何かあったのかと思えば……」

 清潤のこの様子、厳しい雰囲気は外向きの顔だろうか。どこかラージュナと、青竜王と似ている気がした。
 そうしてふと閃く。

(……ラージュナ様が滄寧様と雰囲気が似てる自覚があったから、オレが滄寧様と親しくしてると妬いたとか……そ
んなことあるかな……)

 それこそ火柱を上げた時に、滄寧がそんな耳打ちを(ほとんど耳打ちではなかったが)くれたことを思い出す。
 いつか本人に訊いてみたいが、今ではないことはわかっている。

「いえ、そのう……別にサボッていたわけでは……ただわたくしは疑問をですね、解消して、発見をお伝えしたいと思いまして……」

 身を小さくしてぽそぽそと言い訳をしているシェイユウに、清潤は冷たい一瞥をくれる。あまりレーファの前では見せない顔だ。

(仕事の時はこういう顔もするのかな)

 またひとつ清潤を知った、と少し喜んでしまったのは口に出さないでおく。

「……それで? 私の問いに答えなさい、術院長」
「は、はいっ」

 今度はしゃちほこ張って起立直立したシェイユウは、今度はハキハキと回答を述べる。

「麒麟族と鳳凰族です! この二族はこの大陸を住居としておりません! ですので少なくともこの二族は当院でのサンプルがありません!」
「…………なるほど」

 何かを納得したような顔で清潤は頷いた。そうして、

「それで?」

 と続きを促す。

「は?」
「それだけを伝えにわざわざ白竜王宮まで来たわけではないのでしょう? 本題を言いなさい」
「…………よくおわかりで……」

 笑顔を引きつらせているシェイユウに対し、清潤の目はどこまでも冷ややかだ。やはり何か怒っているのかもしれない。
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