【完結/番外編更新】皇国竜王恋物語◆白竜王のツガイだったせいでループn回目、最終的には溺愛されてます◆

オジカヅキ・オボロ

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116 黒竜王のお茶会の後(1)

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「あの怪鳥はレーファ殿を狙うものだったか」

 青大公が深い溜息を吐く。
 皇城の主殿である太極殿の評定場(会議室)である宜陽殿に集まったのは、三人の大公と四人の竜王、そして玉皇上帝とレーファだ。
 会議の空気は重い。居心地は悪かった。

「皇都の結界が破られたことも大問題だが……怪鳥は仕留めたのか?」
「いえ、北西へ向かう素振りでしたが、途中で姿を消しました。トドメを刺したかったのですが、レーファの安全を確保するのが最優先でしたので」
「姿を消した……となると、術を使ったか、怪鳥そのものが術の産物だったか……」

 逃した今となっては、どちらであるのかもわからない。一堂は難しい顔になる。
 空気を破ったのは、紅大公だった。

「白竜王はあの大剛弓を使ったと聞いたが、その姿は見てみたかったな」
「紅二姉、呑気なことを……」
「白竜王の本気は滅多に見られるものではないだろう? ましてあの弓は演武の時くらいしか使わぬのだから。青竜王が大太刀を使うのも、紅竜王が三節棍を使うのも、黒竜王が鞭を使うのも、いつだって見てみたいだろうが」

 それはそうだと大公たちが一様に頷いた。

(清潤はいったい、普段はどんな感じで政務をこなしているんだろう)

 単純に気になった。そんな疑問を口にしてもいい場ではないので大人しくしておく。

「それにしても北西か……また微妙よな……」

 頭痛を堪えるような仕草でこめかみを揉んだ黒大公が渋い顔をする。

「北領や西領が近頃騒がしいのとは無縁ではないでしょう」
「決めつけるには早いように思うが……」
「一度、各地を見極めに行くのはどうだ? 魔物が出現する場所のいくつかは、目星をつけているのだろう?」
「だが……」

 黒大公がちらりと洵澤に視線を走らせる。どこか難色を示したその意味が、レーファにはわからない。

「ふむ。では、私が黒竜王とともに参ろう」
「紅大公。いいのか?」
「南は今のところ平穏だ。洪聖にも不安はない。それに甥の手伝いをしたい伯母の心理だ。察せよ」
「それを言うなら私も甥にいいところを見せたい叔父の心理があるが」
「黒大公には黒竜王に代わって政務を仕切ってもらわねばならんだろう? なら私が行くのがいい」

 紅大公はなかなか強い性質らしい。

(……母様に似てるかも)

 実の姉妹になるとすれば、似ていても不思議はない。紅大公も充分美人と表現できる美貌でもある。少し親近感を覚えながら場を見守った。

「紅大公は伯父であるおれのことを忘れているのは意図的か?」

 青大公が渋い顔をする。紅大公のすぐ下の弟で、彼が長男ということだ。
 紅大公は「では」と代替案を出した。

「手分けするのはどうだ。青大公は西、私と黒竜王が北だ」
「おれはひとりか?」

 眉を顰めた青大公に、紅大公はにやりと笑う。

「白大公を連れて行くのはどうだ? 今不在だが、決まってしまえば文句は言うまいよ」
「正確には、文句を言っても決定は覆らない、だろう。……どうせなら白竜王がよかった」

「皇上。そういうわけで皇都の結界を張り直し次第、北には私と黒竜王が、西には白大公と青大公が視察に参ります。何かご意見はありますか?」
「……余も行きたかった……」
「ないようですので、これで決定、閉廷ということで。何かあればいつものように連絡を」

 実の姉であるせいか、紅大公は玉皇上帝や他の大公の扱いが雑だ。少しばかり不憫な気もしてしまうが、周囲の誰も気にしないところがかえって気になる。
 とはいえこれが普段通りなのかもしれない。
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