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115 黒竜王のお茶会(7)

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「レーファ、大丈夫ですか?!」
「……清潤……?」
「……よかった……」

 大きく息を吐いた清潤に強く抱きしめられる。レーファも助かった安心感から清潤に抱きついたが、ふと気付いた。
 まだ空中だと。

(な……え? え?)

 思わず周囲と足許を見る。足許は地上が遠すぎて怖くなったのですぐ見るのを止めた。抱きつく腕を強くする。

「せ、清潤……浮い、て……?」
「ええ。……ひとまず皇城へ戻りましょう。話はそちらで。掴まっていてくださいね」
「うん」

 こんなところで放すわけがない。
 しっかり清潤の首に腕を回し直して目を閉じて抱きつくと、清潤はレーファを抱き上げたまま空を滑るように進む。そうしてすぐに皇城の政治の中心地である太極殿の前へと降り立った。
 そこにはすでに洵澤を始め、青竜王・紅竜王のほか、サンディラとヴェルティスもいた。すぐに駆け寄ってくれる。

「レーファ! よかった……」
「何もできなくて、すまん……」

 悔しげに落ち込んでいるふたりに首を横へ振る。

「あの状況で何かできるわけないよ。立っていられなかったし……洵澤もそんな顔しないで」

 洵澤は泣き出しそうな顔をしていたが、レーファの言葉に何かをぐっと堪える顔をした。

「経緯は四弟洵澤から聞いた」
評定ひょうじょう(会議)の招集はしてあるぜ。じきに大公たちも集まってくるはずだ」

 青竜王と紅竜王がそれぞれレーファの顔を覗き込む。それから紅竜王がにかっと笑った。人懐こい笑みで、安心感を与えてくれる。

三弟清潤のやつ、すごかったぞ」
「彼の得物は弓だが、滅多に見せない大剛弓であの怪鳥を射たのだ。直径三センチの太さの矢で、よく射抜いたものだ」
「清潤三哥あにうえは符術も得意なのですが、射た後はすぐに神行符で駆け出され……それも矢のごとくの速さで」
「…………大哥、二哥あにうえたち四弟洵澤、そのあたりにして頂けませんか」

 紅竜王の言葉に乗るように青竜王と黒竜王がその時のことを教えてくれる。清潤がレーファを抱えたまま体ごと彼らから顔を背けると、紅竜王は笑いながら「いいじゃないか!」と清潤の背を叩く。
 衝撃が伝わってきたが、なかなか強い力だ。

「レーファ殿にはご挨拶がまだだったな。青竜王の滄寧だ」
「紅竜王の洪聖だ。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします……清潤、いい加減下ろして……ちゃんとご挨拶できないから」
「必要ありません。目通りの時にしました」

 抱き上げられたままでは、体ごと彼らから顔を背けていられると清潤の肩越しにしか挨拶できない。竜王相手に失礼ではないかと思うのだが、清潤にはレーファを下ろす気はないらしい。
 結局、太極殿の中へ入るまで抱き上げられていた。
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