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102 お茶会(10)

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「ヴェルティスが、レーファは毎日薬湯を飲んでいると言っていました。あなたの体のどこかが悪いなら皇国の薬もありましたから、何か力になれるのではと思ってあなたの主治医に訊いたのです」
 医師はさぞ怖い思いをしただろう。

(そんなことがあったなんて……)

 清潤の洞察力に感心するところか、あくまでレーファのことを主体として考えられた行動に感心するところか、迷ってしまう。

「なんでまたそんなこと……あ、王妃に盛られることを心配してたのか?」
「たしかにやりやがったからな……あの時は表沙汰にできなかったが」
「楽器も壊して小細工してたし、悪質だ」
「全部ラージュナ様が庇ってくださったから良かったけどよ……」

 理由について、ふたりは勝手に納得してくれた。これは訂正しないでおく。

(ごめんね……)

 まさか皇国で毒殺されたことがあるからその予防に、など言うことはできない。

「それを信頼していなかったわけではありませんが、すぐに解毒をしたのは、わずかでも体に損傷を与えたくなかったからです」
「……ん?」

 清潤の言葉に引っかかった。今度はレーファが清潤を見る。

「解毒、したの? いつ?」
「言ったでしょう? 経口接触でするのが一番早かったので、そうしました」

 悪びれずアッサリと答えた清潤に、レーファは体の力が抜けそうだった。

(あの突然の口付けの意味はそれだったのか……)

 突然のことと、羞恥で清潤が何を言ったのかまで覚えていなかった。
 理解はできても羞恥は消えない。
 そういえば子どもの頃は舌を撫でられたのだったか。
 レーファを思ってしてくれていることにしても、恥ずかしさは拭えない。

「少しだけとはいえ、苦しい思いをさせてしまったのは不本意ですが」
「ん……大丈夫だったからいいよ。清潤がお茶会に来ると思わなかったし……いなくても、結果は一緒だったと思うし」

 食べた後の対応は多少変わったかもしれないが、毒入りであることを告げて食べかけのタルトを持って帰ったのは同じだろう。
 言うと、清潤は大きく頷く。

「すぐに成分を調べさせます。それから、今頃は徐侯爵家で捜索が行われているはずですが……こちらの結果は明日にでもまとめて報告書を上げさせます。元々徐家の周辺で怪しい動きがありましたし……。何かわかれば、あなたにも伝えますね」
「オレは無事だったから、あまり厳しい罰にしないでほしいんだけど?」
「……考えておきましょう」
「あと、人前で抱っこするのは控えてほしいんだけど?」
「私のツガイがこんなに可愛らしくて綺麗であることは皆に見せて知らしめるべきなのでその要望は応えられません」
「…………」
 笑顔のまま一呼吸で要望を一蹴しないで頂きたい。
(……オレが諦めたほうが早い……?)
 だがそれは自身の羞恥心と引き換えになる。それは避けたいのだが。何か良案がないか考えつつ、ヴェルティスが淹れてくれた茶を飲んだ。
「白竜王陛下は過保護か……?」
「むしろ盲目……?」
 とサンディラとヴェルティスが呟いた言葉は聞こえないフリをした。
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