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100 お茶会(8)

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 白竜王宮の鴛鴦殿えんおうでんは居間のような部屋で、サンディラとヴェルティスもよく来る部屋だ。その部屋から左右にレーファと清潤の個人の部屋があり、奥がそれぞれの部屋から行ける寝室になっている。寝室は居間からも行けた。

 その鴛鴦殿の隣にある少し小さい殿舎である白月殿はくげつでんは、サンディラ、ヴェルティスのための殿舎であり居間でもある。今はその部屋にレーファと清潤もいた。
 青がアクセントになった白い絨毯にそれぞれ好きに座り込み、各自の膳へレト風の茶も出されて菓子も盆に盛られ、ちょっとしたお茶会のよう。
 なのに、ふたりときたら茶会に似合わぬ間抜け面を晒している。

「白竜王陛下とラージュナ様が同一人物」
「……何故……?」

 サンディラとヴェルティスが同時に同じ方向に首を傾げるのがおかしい。いや、ここで笑ってはいけない。
 ふたりの疑問は以前のレーファと同じ疑問だ。

 たしかに、清潤の行動の理由がわからないと意味がわからないだろう。

 だからといってレーファが何度も死んで、そのたびに清潤が何度も生き返らせて……などということは言わないほうがいいのでは。
 ちらりと清潤を見れば、彼は相変わらず澄ましている。

「レーファがツガイだとわかった卜占は、今年行われたものではなく、本当はずっと前に行われていたのです」
「えっ」
「レーファが産まれた頃でしょうか。ですが、まさかその歳から迎えるわけにはいかないので、発表はレーファが成人を迎えた頃にしようということになりました」

 ありそうなことだな、とレーファでも理解できるので頷いておく。

「ですが私はすぐにでも迎えたくて……揉めましたし調整は大変でしたが、迎えるのではなく私が直接レト王国へ向かうことで他の竜王、皇上に納得を頂きました」

 嘘なのにもっともらしく聞こえるところがすごいと思う。

(これで丸め込まれた竜人もいるんじゃないかな……)

 白皙秀麗の男が真面目な顔で告白する内容が、まさか嘘だとは思わないだろう。
 清潤が詐欺師などでなくて良かったと、明後日のことを思う。

「ツガイは惹かれ合うものですし、自分にツガイがいるとわかってしまえば会いたくなるものです。その証拠に、卜占の後ではすでに政務に支障が出そうでした。なので、身分を偽ってレト王国へ向かうことを決めたのです」

 その時に使った名前が皇城の外で使う通り名であるラージュナなのだとふたりへ説明する。

「さすがに竜王自らが公式にヒトの一王国へ何年も滞在するのは過去に例がありませんからね。身分を偽り貴族の子弟ということにして……口調や雰囲気を変えたのはわざとです。竜官の中には私を知る者もいましたから、意識させないためにも」

 どおりで竜官たちがラージュナに配慮していたわけだ。
 それにレーファたちにしてみれば、卜占が本当はいつ行われていたのかなど知りようがない。当時の玉皇上帝と竜王たちくらいしかわからないのではないだろうか。
 だから言葉は真実味がある。レーファも、本当はそうだったのではないかと思ってしまえるほどに。
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