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94 お茶会(2)
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数日後。
「侍女はわからんでもないが、なんでおまえまで張り切ってんだ」
サンディラが呆れたように言うが、ヴェルティスの鼻息は荒い。
「そのへんの女がレーファの足許にも及ばないってことを、ちゃーんとわからせてやりたいからだよ」
「……お、おう……そういやおまえ、レーファにラージュナ様がくれた服を着せる時は、やたらと張り切ってたな」
「式典でうちの王子が一番だって見せつけたいじゃないか」
これは何バカと言うのだろう。兄バカだろうか。
サンディラとレーファは顔を見合わせ、苦笑した。
ヴェルティスはどうやら竜人族が好む服の色合わせなども勉強しているらしい。侍女や女官たちがいい教師となっているようだ。
彼女たちもヴェルティスに対して高圧的な態度を取っていることもなく、さらにヴェルティスは色恋などまったく含んでこないのでむしろ安心できる良い生徒――との評は、後年になって聞かされたこと。
今回ヴェルティスがレーファにと選んだ衣装は、柔らかなクリーム色がベースで鬱金色で刺繍された模様が散らされ、襟は濃緑色の絹がアクセントになっている。上品な色合いだし、レーファの橙色の髪色ともよく合う。
アクセサリーは幼い頃にもらった無辜之札の耳飾りを今も気に入って使っているからそれと、透かし模様の金のブレスレットや石をはめ込んだ指輪を着けた。
首には三センチほどの楕円のムーンストーンを使った幅広のチョーカー。どれも清潤に贈られたものだ。
髪は左右を編み込み、ハーフアップにして緩く球状にまとめる。一級品の象牙の簪を挿したり貴石を使った小花のアクセサリーをあちこちに散らしたが、これらはどちらかといえば女性ものではないだろうか。
「……飾りすぎじゃない……? 女の子じゃないんだから」
「俺としちゃあ、まだ足りないくらいだね。白竜王陛下が見たらきっと喜ぶと思うけど」
「…………」
ヴェルティスとサンディラは、まだ清潤と顔合わせしていない。清潤が忙しくしていて、その暇がなかったというのが実情だ。だから、ラージュナが白竜王だとわかった時はどんな反応をするのかわからなくて少し怖いと思う気持ちと、彼らの反応を楽しみにしてしまう気持ちがある。
慌ただしい支度を済ませても、刻限までには充分に時間があった。
「侍女はわからんでもないが、なんでおまえまで張り切ってんだ」
サンディラが呆れたように言うが、ヴェルティスの鼻息は荒い。
「そのへんの女がレーファの足許にも及ばないってことを、ちゃーんとわからせてやりたいからだよ」
「……お、おう……そういやおまえ、レーファにラージュナ様がくれた服を着せる時は、やたらと張り切ってたな」
「式典でうちの王子が一番だって見せつけたいじゃないか」
これは何バカと言うのだろう。兄バカだろうか。
サンディラとレーファは顔を見合わせ、苦笑した。
ヴェルティスはどうやら竜人族が好む服の色合わせなども勉強しているらしい。侍女や女官たちがいい教師となっているようだ。
彼女たちもヴェルティスに対して高圧的な態度を取っていることもなく、さらにヴェルティスは色恋などまったく含んでこないのでむしろ安心できる良い生徒――との評は、後年になって聞かされたこと。
今回ヴェルティスがレーファにと選んだ衣装は、柔らかなクリーム色がベースで鬱金色で刺繍された模様が散らされ、襟は濃緑色の絹がアクセントになっている。上品な色合いだし、レーファの橙色の髪色ともよく合う。
アクセサリーは幼い頃にもらった無辜之札の耳飾りを今も気に入って使っているからそれと、透かし模様の金のブレスレットや石をはめ込んだ指輪を着けた。
首には三センチほどの楕円のムーンストーンを使った幅広のチョーカー。どれも清潤に贈られたものだ。
髪は左右を編み込み、ハーフアップにして緩く球状にまとめる。一級品の象牙の簪を挿したり貴石を使った小花のアクセサリーをあちこちに散らしたが、これらはどちらかといえば女性ものではないだろうか。
「……飾りすぎじゃない……? 女の子じゃないんだから」
「俺としちゃあ、まだ足りないくらいだね。白竜王陛下が見たらきっと喜ぶと思うけど」
「…………」
ヴェルティスとサンディラは、まだ清潤と顔合わせしていない。清潤が忙しくしていて、その暇がなかったというのが実情だ。だから、ラージュナが白竜王だとわかった時はどんな反応をするのかわからなくて少し怖いと思う気持ちと、彼らの反応を楽しみにしてしまう気持ちがある。
慌ただしい支度を済ませても、刻限までには充分に時間があった。
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