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93 お茶会(1)

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「レーファ、茶会の招待状が届いてるけどどうする?」

 ヴェルティスの言葉に、既視感がある。
 前の生でも茶会はあった。だが儀式の順番が変わったことで、そのイベントは消失したのかと思っていた。

(……あるんだな)

 顔が険しくなりかけたのを焼き菓子を口に放り込むことで誤魔化した。

「どなたから?」
「徐侯爵家のご令嬢。皇上の血縁のほうじゃなくて、伯爵位から四百年前の戦争で功績上げて成り上がったほうの侯爵」

 すらすらと回答されて、思わず目を丸くした。

「……勉強したね?」
「従者やるならこれくらいはね」

 目合わせの儀が終わってからヴェルティスの姿を見ない時があったが、どうやら女官や侍女たちや本で貴族のことを学ぶという勤勉さを発揮していたらしい。

 基本的なところはレーファも知識として知っているが、侯爵以下のところは弱い。それどころではなかったのが大きな理由だが。
 これからはヴェルティスにも頼ろうと思った。

「美人だけど気が強くてちょっと夢見がちなお嬢さんらしい。どこにでもそういうお嬢さんはいるんだねぇ」

 レト王国の宰相の娘がそんな感じだった、と噂に聞いたことはある。王太子の婚約者候補のひとりだったはずだ。王太子すら振り回されたという話は聞いた覚えはある。
 その王太子がレーファに愛妾になれなどと言ってきたのは、だからというわけではないだろうけれど。

「どんな竜人族がいるかも見たいから、招待を受けようかな」

 仮に、前生までのようなことがあっても、今なら大丈夫だ。そう言い切れる自信が、今のレーファにはある。

(毒が仕込んであっても……まあなんとかなるだろう)

 見込みが甘いと怒られるか。ちらりとツガイを頭に浮かべるが、彼が悲しむようなことにはならないはず。そのために小さい頃から薬湯を飲んできたのだから。
 そうなると服も用意しないといけない。が、これはヴェルティスと侍女たちが張り切った。
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