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90 目通りの儀(5)
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黒竜王の領地で獲れたエビや魚、アワビなどの高級食材を使ったスープ、炒め物。
白竜王の領地で穫れた穀物で作った酒で漬けた酔蟹という料理は、カニの海くささが抜けて食べやすかった。
その中でも紅竜王の領地で栽培する辛い調味料や味噌を使った手羽先の唐揚げ、麻婆豆腐やエビチリ、麻辣湯、スンドゥブはレーファのお気に入りになった。
(胡椒を使った料理もあればいいな……)
故郷の食材を思い出しつつ、合間に果実酒も頂き、箸は進んだ。
「検分の結果が出ました」
食事の終わり時に、一人の官吏がやってきて告げた。
すぐに、と玉皇上帝の指示に、別の男がやってくる。
皇宮にいるのだから上級官吏なのだろうが、全体的に衣服がよれていて、髪は結い上げたり冠を付けることもなく、後ろでひとつ括っただけ。眼鏡を掛けているのが特徴だろうか。
「術院長シェイユウ、参りました。お寛ぎ中のところ、お騒がせいたします」
「構わぬ。シェイユウ、簡潔に述べよ」
「は」
シェイユウと名乗った男は、胸許から畳んだ紙を取り出し、広げて読み上げる。
「紅大公閣下広利様と白竜王陛下ツガイのレーファ様との血の一致率は三割を超えました。種族違いであれば一致率ゼロ、親子であれば八割、祖父母とであれば六割、ということを考慮すれば、おふたりの間柄は叔母・甥あるいは従姉弟のような関連があるのではないかと思われます」
「姉上の子だな?!」
玉皇上帝の勢いに負けそうなシェイユウが苦笑する。
「……竜吉様の血がないのでそこは検分しかねますが、その可能性は充分ありえます」
竜吉、というのが玉皇上帝の姉の名であるらしい。ということは、レーファの母の本名ということになるだろうか。
一堂の視線がレーファに刺さる。とんでもなく居心地が悪い。ヴェールをつけていたかった。
「だが、レーファ殿は……失礼ながらヒトだろう?」
「おそらく、竜吉様のお相手がヒトであったのでしょう。レーファ殿がレト王国の王子だというなら、国王はヒト。それなら納得できる数値ではないかと思います」
両親が竜人なら竜吉と姉妹だったという紅大公との繋がりはもっと割合が上だったはずだ、とシェイユウは付け足す。大公たちはそれでなんとなく納得した雰囲気があった。
(母様が竜人とか……そんな話、知らないんだけど……?!)
狼狽えながら隣の清潤を振り返る。彼も驚いていたようだが、レーファと目が合うと手を握ってくれた。
(……温かい)
それで少し落ち着ける。
(母様は、自分のことはほとんど話してくれてなかった)
レーファが幼かったから事情を全部は説明しなかった、ということもあるだろう。
今まで生きていたら、教えてくれただろうか。
「…………」
ということは、今ここにいる竜人全員が親戚になるというのか。
不意に気付いたことに、退出するまで、レーファは遠くなりそうな気を保つのに全神経を使わなければならなかった。
白竜王の領地で穫れた穀物で作った酒で漬けた酔蟹という料理は、カニの海くささが抜けて食べやすかった。
その中でも紅竜王の領地で栽培する辛い調味料や味噌を使った手羽先の唐揚げ、麻婆豆腐やエビチリ、麻辣湯、スンドゥブはレーファのお気に入りになった。
(胡椒を使った料理もあればいいな……)
故郷の食材を思い出しつつ、合間に果実酒も頂き、箸は進んだ。
「検分の結果が出ました」
食事の終わり時に、一人の官吏がやってきて告げた。
すぐに、と玉皇上帝の指示に、別の男がやってくる。
皇宮にいるのだから上級官吏なのだろうが、全体的に衣服がよれていて、髪は結い上げたり冠を付けることもなく、後ろでひとつ括っただけ。眼鏡を掛けているのが特徴だろうか。
「術院長シェイユウ、参りました。お寛ぎ中のところ、お騒がせいたします」
「構わぬ。シェイユウ、簡潔に述べよ」
「は」
シェイユウと名乗った男は、胸許から畳んだ紙を取り出し、広げて読み上げる。
「紅大公閣下広利様と白竜王陛下ツガイのレーファ様との血の一致率は三割を超えました。種族違いであれば一致率ゼロ、親子であれば八割、祖父母とであれば六割、ということを考慮すれば、おふたりの間柄は叔母・甥あるいは従姉弟のような関連があるのではないかと思われます」
「姉上の子だな?!」
玉皇上帝の勢いに負けそうなシェイユウが苦笑する。
「……竜吉様の血がないのでそこは検分しかねますが、その可能性は充分ありえます」
竜吉、というのが玉皇上帝の姉の名であるらしい。ということは、レーファの母の本名ということになるだろうか。
一堂の視線がレーファに刺さる。とんでもなく居心地が悪い。ヴェールをつけていたかった。
「だが、レーファ殿は……失礼ながらヒトだろう?」
「おそらく、竜吉様のお相手がヒトであったのでしょう。レーファ殿がレト王国の王子だというなら、国王はヒト。それなら納得できる数値ではないかと思います」
両親が竜人なら竜吉と姉妹だったという紅大公との繋がりはもっと割合が上だったはずだ、とシェイユウは付け足す。大公たちはそれでなんとなく納得した雰囲気があった。
(母様が竜人とか……そんな話、知らないんだけど……?!)
狼狽えながら隣の清潤を振り返る。彼も驚いていたようだが、レーファと目が合うと手を握ってくれた。
(……温かい)
それで少し落ち着ける。
(母様は、自分のことはほとんど話してくれてなかった)
レーファが幼かったから事情を全部は説明しなかった、ということもあるだろう。
今まで生きていたら、教えてくれただろうか。
「…………」
ということは、今ここにいる竜人全員が親戚になるというのか。
不意に気付いたことに、退出するまで、レーファは遠くなりそうな気を保つのに全神経を使わなければならなかった。
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