89 / 133
89 目通りの儀(4)
しおりを挟む
「そなたの血の一滴をもらえるだろうか。私の血と比較し、血縁であるか、どの程度血が近いかを検査する」
元竜王であるような竜人と、ただのヒトであるレーファが血が近いなどということは、通常であれば考えにくい。だが玉皇上帝がこの有様なので申し訳ない、と説明が続く。
血の採取はレーファ自身より清潤のほうが渋った。体に傷を付けたくないという理由だったが、やむなく従った。玉皇上帝へ貸しひとつということで手打ちになったからだ。
なお、指から血を採った後は秒もたたずに清潤が傷を癒してくれた。
「痛くありませんか?」
「大丈夫だよ。綺麗に治してくれたから。大袈裟だよ」
「一秒でもあなたが傷付くのが嫌なんです」
血を採った手を両手で包み、撫でてくれる。
その様子を見て大公や竜王たちが何やらひそひそと話しているのが気になったが、気にしたら負けだと思って意識の外へ追いやった。
(……大切にしてくれてるんだろう、けど……外ではちょっと恥ずかしい……)
血の検分は術士が別室で行う。その間、目通りの儀はつつがなく進行され、レーファは晴れて白竜王のツガイとして内外に認知されることになった。
儀の後は宴が催される。これは竜人族の、皇族の一員として迎え入れたことを歓迎するものだ。
一連の儀式はおおむね竜王が外の国から花嫁を迎えるものと近似している。今までヒト族からツガイが出たことがなかったから、そのせいもあるらしい。
「たくさん注がれると思いますが、飲まなくて構いませんからね?」
そっと私に渡しなさい、と言われると大人しく頷いておく。酒はあまり飲まないから、自分が弱いのか強いのかもわからないからだ。
料理は当たり前に美味しかった。
今生では月之宮から食べているものに不味いものや口に合わないものはなかったが、今まで食べたものの中でも群を抜いて美味しい。
レーファも王族の端くれだから、出されている料理がいわゆる宮廷料理というご馳走なのだということはわかる。
高価なアヒルを使ったものはパリパリの皮と肉を削ぐように切り、蒸した野菜と一緒に薄焼きの生地に巻いて甘辛いタレに漬けて食べる。
皇都を流れる川の上流で獲った川魚を一尾まるごと使った料理は熱した油を回しかける揚げ方をし、野菜を入れたとろみのある餡で頂く。熱い上に熱いとろみの餡をかけると熱がなかなか逃げず、油断をすればうっかり口の中を火傷してしまいそうだ。
(あっついけど……鱗は綺麗に取られているし、皮がパリパリで美味しい……川はレトの王都にもあったけど、この魚は食べたことがない川魚だ)
元竜王であるような竜人と、ただのヒトであるレーファが血が近いなどということは、通常であれば考えにくい。だが玉皇上帝がこの有様なので申し訳ない、と説明が続く。
血の採取はレーファ自身より清潤のほうが渋った。体に傷を付けたくないという理由だったが、やむなく従った。玉皇上帝へ貸しひとつということで手打ちになったからだ。
なお、指から血を採った後は秒もたたずに清潤が傷を癒してくれた。
「痛くありませんか?」
「大丈夫だよ。綺麗に治してくれたから。大袈裟だよ」
「一秒でもあなたが傷付くのが嫌なんです」
血を採った手を両手で包み、撫でてくれる。
その様子を見て大公や竜王たちが何やらひそひそと話しているのが気になったが、気にしたら負けだと思って意識の外へ追いやった。
(……大切にしてくれてるんだろう、けど……外ではちょっと恥ずかしい……)
血の検分は術士が別室で行う。その間、目通りの儀はつつがなく進行され、レーファは晴れて白竜王のツガイとして内外に認知されることになった。
儀の後は宴が催される。これは竜人族の、皇族の一員として迎え入れたことを歓迎するものだ。
一連の儀式はおおむね竜王が外の国から花嫁を迎えるものと近似している。今までヒト族からツガイが出たことがなかったから、そのせいもあるらしい。
「たくさん注がれると思いますが、飲まなくて構いませんからね?」
そっと私に渡しなさい、と言われると大人しく頷いておく。酒はあまり飲まないから、自分が弱いのか強いのかもわからないからだ。
料理は当たり前に美味しかった。
今生では月之宮から食べているものに不味いものや口に合わないものはなかったが、今まで食べたものの中でも群を抜いて美味しい。
レーファも王族の端くれだから、出されている料理がいわゆる宮廷料理というご馳走なのだということはわかる。
高価なアヒルを使ったものはパリパリの皮と肉を削ぐように切り、蒸した野菜と一緒に薄焼きの生地に巻いて甘辛いタレに漬けて食べる。
皇都を流れる川の上流で獲った川魚を一尾まるごと使った料理は熱した油を回しかける揚げ方をし、野菜を入れたとろみのある餡で頂く。熱い上に熱いとろみの餡をかけると熱がなかなか逃げず、油断をすればうっかり口の中を火傷してしまいそうだ。
(あっついけど……鱗は綺麗に取られているし、皮がパリパリで美味しい……川はレトの王都にもあったけど、この魚は食べたことがない川魚だ)
24
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
子育て騎士の奮闘記~どんぶらこっこと流れてきた卵を拾ってみた結果~
古森きり
BL
孤児院育ちのフェリツェは見習いから昇格して無事に騎士となり一年。
ある魔物討伐の遠征中に川を流れる竜の卵らしきものを拾った。
もしも竜が孵り、手懐けることができたら竜騎士として一気に昇進できる。
そうなれば――と妄想を膨らませ、持ち帰った卵から生まれてきたのは子竜。しかも、人の姿を取る。
さすがに一人で育てるのは厳しいと、幼馴染の同僚騎士エリウスに救助要請をすることに。
アルファポリス、BLoveに先行掲載。
なろう、カクヨム、 Nolaノベルもそのうち掲載する。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
【完結】マジで滅びるんで、俺の為に怒らないで下さい
白井のわ
BL
人外✕人間(人外攻め)体格差有り、人外溺愛もの、基本受け視点です。
村長一家に奴隷扱いされていた受けが、村の為に生贄に捧げられたのをきっかけに、双子の龍の神様に見初められ結婚するお話です。
攻めの二人はひたすら受けを可愛がり、受けは二人の為に立派なお嫁さんになろうと奮闘します。全編全年齢、少し受けが可哀想な描写がありますが基本的にはほのぼのイチャイチャしています。
無気力令息は安らかに眠りたい
餅粉
BL
銃に打たれ死んだはずだった私は目を開けると
『シエル・シャーウッド,君との婚約を破棄する』
シエル・シャーウッドになっていた。
どうやら私は公爵家の醜い子らしい…。
バース性?なんだそれ?安眠できるのか?
そう,私はただ誰にも邪魔されず安らかに眠りたいだけ………。
前半オメガバーズ要素薄めかもです。
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる