【完結/番外編更新】皇国竜王恋物語◆白竜王のツガイだったせいでループn回目、最終的には溺愛されてます◆

オジカヅキ・オボロ

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82 目合わせの儀(11)

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 初めて出会ったはずの高貴な竜人にそんなものを受ける理由は、好意だとしても今まではわからなかったけれど。先ほど清潤が告白してくれたように、本当にレーファのことを好きになったからという理由なら、本当に嬉しい。
 おまけにレト王国へ来たのは、自分のことを好きになってほしいから、なんて。

(……ある意味、健気なのかな……)

 それまでの過程は健気とは程遠いが、今生の彼は彼なりにレーファに好かれたくて一生懸命でいるのだ、と思うと可愛らしいようにも思える。

(いやでも、そんな簡単に絆されるのは……)

 今まで何度も生きて、死んでいく中で、好きになっていってくれていた。
 それはただ生きて死ぬより、ただツガイを生かしたかっただけだと言われるより、ずっとずっと嬉しい。

(…………)

 ちら、と視線を走らせる。
 清潤はレーファの腰に両腕を回して距離を取れないようにしているものの、強引に顔をこちらへ向けようとはしてこない。
 そして、優しい顔で見つめてくれている。

(……ラージュナ様じゃ、ない、けど……ラージュナ様も、清潤……)

 まだそこが腑に落ちたわけではない。納得できたわけではない。

「……見られてるままだと恥ずかしいから。視線、逸らしてくれる?」
「わかりました」

 清潤は俯いてくれた。そうして、スッと俯く。
 視線が合わないなら、彼の顔を見やすかった。

(……竜人はヒトより美しいって、よく聞くし、竜官閣下たちを見ててもそう思ってたけど。綺麗だな……)

 レーファも綺麗だと言われるし、そうなのかと思うが、竜王にもなるといっそう美しくなるものなのだろうか。

 膝の裏までかかりそうな長くてクセのない黒髪は毛先までつやつやしていて絹糸の束のようだし、伏せたことでわかる長い睫毛、繊細そうな細い眉、切れ長の目許、薄いくちびる、陶器のような肌。
 首は細めでも、肩へのラインはしっかりしているように見える。

 精巧な人形のようにも思える彼の顔へ、気付いたら触れていた。
 あ、と思った時には清潤がじっとレーファを見ている。
 せめて視線を逸らしたかったのに、できなかった。

「……触れてもいいですか?」
「う……」

 いま抱きしめられているから、とっくに触れているだろう。
 そう言い返すこともできた。けれど、清潤の問いはそれだけではないとわかる。彼の目の奥に、炎が見えた気がしたから。
 それはきっと欲の焔だ。

(そんな、顔とか……目で、見られるのは)

 逃げられない。
 逃げられる状態でもなかったが、心理的にも逃げ場を失った。

「…………」

 言葉に出して応じるのは難しい。だから小さく頷いた。
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