【完結/番外編更新】皇国竜王恋物語◆白竜王のツガイだったせいでループn回目、最終的には溺愛されてます◆

オジカヅキ・オボロ

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62 成人の儀の後(3)

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「っ!」

 突然視界に逆さまに現れたラージュナの顔に心底から驚き、慌てた結果――浅瀬だというのに溺れそうになった。
 じたばたとみっともなくもがき、ラージュナに腕を掴まれて川から引き上げられ、片腕で抱き上げられてしまった。
 拒否したくても、噎せていてはうまく話せない。

「……大丈夫か?」
「ごほっ、……っ、は……、……なんで、ここに?」

 まったく大丈夫ではないが、詰まりながら問う。誰にも行き先は言わなかったはずだが、どうしてここがわかったのだろう。たまたま散歩でもしていたのだろうか。

(せめてもっと早く声をかけてくれればよかったのに)

 そうであればみっともないところを見せずに済んだ。助けてもらったが少しは恨む気持ちもある。
 ラージュナはレーファを抱えたまま見上げてきた。

「おまえの従者から、おまえの行きそうなところを聞いた。探してくれようとしたようだが、待つ時間も無駄だろう。直接来た」
「…………」

 これは絶対にヴェルティスは悪くない。悪くないのだが、恨んでしまうのも仕方がない。
 タイミングの問題だったと思い込むことにした。

「見事に当たったというわけ……」

 はあ、と溜息を吐く。ようやく呼吸が落ち着いた。

「そういうことになる。……何をしていた?」
「見てそのままだよ。川に浸かっていたんだ。……涼を取りたくて」
「何か呟いていたようだったが、悩み事か?」

 一体いつから見ていたのだろう。冷や汗が出そうなところ、表情を繕いつつ小首を傾げる。

「悩み事というか……祈りや願い、のほうが近い気がする」
「そうか……」

 ラージュナは一度目を伏せたが、もう一度目線をあげるとレーファを見つめる。

「俺にできることはあるか?」
「……もしも、の話だけど」

 わずかの間に考え込んでから、思い切って口を開く。言えば、そうしてもらえるのではないかと少しくらいは思った。
 小さくても、希望は持っていたいから。

「もし、オレが皇国へ行くようなことがあれば。……また、会ってくれるかな」
「ああ。必ずそうしよう」

 即答に、胸のつかえが下りたように気持ちが軽くなる。

「……よかった」

 これで、少なくとも今生の楽しみを見出せることになる。あとは黒竜王と友人になれるように頑張るだけだ。
 心が落ち着くと、今の自分の状態がじわじわと恥ずかしくなってきた。

 成人した男が、竜人に子どものように抱き上げられている。誰かに見られたらどう言い訳をすればいいのだろう。
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