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60 成人の儀の後(1)
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成人の儀は、厳かに行われた。
基本的には神官が進行の主導権を握り、竜官は立ち会いだ。この時はラージュナも竜官とともに立ち会っていた。王太子の成人の儀や立太の儀には不参加だったと聞いている。
竜人が参加しているというだけで、国内外を問わずレーファが特別扱いされていることがわかってしまうかもしれない。けれど後からツガイの報が届けば納得はしてくれることを期待したい。
衣装は専用のものを着用する必要があるが、レーファのものは新調された。もちろんラージュナが手配したのだ。
他の誰かがそうさせたのであれば王妃あたりが激しく反発したに違いないが、国一番の身分である竜人の施しとあっては反発や断るほうが非礼だと理解するくらいの頭は持ち合わせていたらしい。
出席は近しい王族――王、王妃、他の王子だが、王妃がピリピリしているのは傍目にも明らか。誰も何も言わないのは、言えないというのもあるが、余計なとばっちりを受けるのを避けたからだ。言えるとしたら同席している竜官三人とラージュナだろうが、この四人は王妃の存在を黙殺していた。
胸許や袖に金刺繍が入った裾の長い黒ジャケット、中の白シャツは皺ひとつないシルク。襟のあたりやボタンホールあたりには緻密な刺繍がなされ、サッシュは紗織りで縁や裾に植物や花の刺繍が入っている。
ズボンも黒で、くるぶしのあたりで窄まった裾には、ジャケットと揃いの刺繍が入っている。モジャリと呼ばれる布製のフラットシューズにはビーズ刺繍や刺繍が鮮やかに刺され、ジャケットやズボンの黒と対比されているようだった。
参列していた者たちは、王妃の目があるので表立っては言わないものの、第三王子の姿は物語に出てくる王子や勇者のように神々の寵愛を得た美しさや強さがある、などと囁き合ったという。
儀式の作法はやはり皇国に倣ったものだが、各国でアレンジされている部分もある。危うげなく儀式を済ませたレーファは、正装のまま部屋に戻るとサンディラとヴェルティスに男泣きに泣かれたのだった。
大袈裟だと笑ったが、彼らにしてみれば男親の気持ちだったのかもしれない。
(いよいよ、近付いてきた)
レーファには覚悟を決める日でもあった。この日から数ヶ月後に、皇国から報せがやってくることを知っているからだ。
基本的には神官が進行の主導権を握り、竜官は立ち会いだ。この時はラージュナも竜官とともに立ち会っていた。王太子の成人の儀や立太の儀には不参加だったと聞いている。
竜人が参加しているというだけで、国内外を問わずレーファが特別扱いされていることがわかってしまうかもしれない。けれど後からツガイの報が届けば納得はしてくれることを期待したい。
衣装は専用のものを着用する必要があるが、レーファのものは新調された。もちろんラージュナが手配したのだ。
他の誰かがそうさせたのであれば王妃あたりが激しく反発したに違いないが、国一番の身分である竜人の施しとあっては反発や断るほうが非礼だと理解するくらいの頭は持ち合わせていたらしい。
出席は近しい王族――王、王妃、他の王子だが、王妃がピリピリしているのは傍目にも明らか。誰も何も言わないのは、言えないというのもあるが、余計なとばっちりを受けるのを避けたからだ。言えるとしたら同席している竜官三人とラージュナだろうが、この四人は王妃の存在を黙殺していた。
胸許や袖に金刺繍が入った裾の長い黒ジャケット、中の白シャツは皺ひとつないシルク。襟のあたりやボタンホールあたりには緻密な刺繍がなされ、サッシュは紗織りで縁や裾に植物や花の刺繍が入っている。
ズボンも黒で、くるぶしのあたりで窄まった裾には、ジャケットと揃いの刺繍が入っている。モジャリと呼ばれる布製のフラットシューズにはビーズ刺繍や刺繍が鮮やかに刺され、ジャケットやズボンの黒と対比されているようだった。
参列していた者たちは、王妃の目があるので表立っては言わないものの、第三王子の姿は物語に出てくる王子や勇者のように神々の寵愛を得た美しさや強さがある、などと囁き合ったという。
儀式の作法はやはり皇国に倣ったものだが、各国でアレンジされている部分もある。危うげなく儀式を済ませたレーファは、正装のまま部屋に戻るとサンディラとヴェルティスに男泣きに泣かれたのだった。
大袈裟だと笑ったが、彼らにしてみれば男親の気持ちだったのかもしれない。
(いよいよ、近付いてきた)
レーファには覚悟を決める日でもあった。この日から数ヶ月後に、皇国から報せがやってくることを知っているからだ。
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