【完結/番外編更新】皇国竜王恋物語◆白竜王のツガイだったせいでループn回目、最終的には溺愛されてます◆

オジカヅキ・オボロ

文字の大きさ
上 下
58 / 160

58 義兄……(2)

しおりを挟む
「何の騒ぎだ」

 ある意味、騒ぎを大きくするような人物が現れた。

「ラージュナ様。申し訳ありません、お部屋まで届くような音を立ててしまいましたか」
「いや、たまたま庭に出ていただけだ。物音が聞こえ、ここの扉が開いていたからこちらから入らせてもらったが……」
「ラージュナ様がしたことを咎める者はおりません」

 そうか、と返したラージュナは、どこかホッとした顔をしている。
 それから表情を改め、拘束はされていないものの落ち着かないでいる王太子へ冷たい視線を投げかける。

「王太子がこんな時間に何用だ?」

 第一王子である王太子が平服を着ているのに対し、レーファは夜着を着ている。レーファが寝ている、あるいは寝ようとしていたことはラージュナにもわかるだろう。

 本日二度目のラージュナの冷たい声、問いを食らい、王太子は顔を真っ青にしていた。

 けれどこれは彼の自業自得なので、同情する者は誰もいない。

「いえ、あの……その……た、たまには義弟と語り明かそうかと……」
「真夜中に真っ暗な寝所に忍び込んだくせに?」

 思わずといったようにヴェルティスが声を上げると、王太子は身を縮こまらせる。
 それでだいたい王太子の意図は察せられたのだろう。ラージュナの空気は冬空の下よりずっと冷たい。

「……昼に俺が言ったことを忘れたか?」
「いっ、いえ、滅相もございません!」
「ならば良い。二度はないと思え」
「は、はい!」

 下がれ、と手で追い払うようにすると、サンディラがすぐに脇へどく。王太子は立ち上がると、すぐさまレーファの部屋を後にした。

「……一日に二回も、ごめんね」
「おまえが謝ることではない」

 ラージュナが首を横に振る。それからレーファの頭を撫でた。

「怪我は?」
「ないよ。布団はめくられたけど……義兄上が触れるより先にサンディラが抑えてくれたし、ヴェルティスもいてくれたから」
「では、ふたりには後で酒を贈ろう。何もなくてよかった」
「あ……あの、サンディラもヴェルティスもいるから……!」

 抱きしめられるのは落ち着かない。鼓動が忙しなくなってしまうから。
 けれどいつもラージュナはそれを気にしない。
 振り返ると、いつの間にかふたりはいなくなっていた。

(サンディラ……ヴェルティス……!!)

 後で問い詰めれば気を利かせたとでも言うに違いない。

「……部屋に来るか?」
「えっ?」

 どきりと鼓動が跳ねる。
 けれどラージュナの声は落ち着いていた。

「ひとりで休むには、もう落ち着かないだろう。場所を変えて気分を切り替えるといい」

(あ……なんだ……)

 何かに誘われたのかと思った。いや誘われてはいるのだが。
 ラージュナのこの誘いに含むところはきっとないのだろう。

「じゃあ……お邪魔するよ」

 言われたとおり、今晩このままこの部屋で休むのはできそうにない。小さい頃にも何度か世話になっているし、躊躇うこともないかと考えて頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる

えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。 一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。 しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。 皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

空は遠く

chatetlune
BL
素直になれないひねくれ者同士、力と佑人のこじらせ同級生ラブ♥ 高校では問題児扱いされている力と成績優秀だが過去のトラウマに縛られて殻をかぶってしまった佑人を中心に、切れ者だがあたりのいい坂本や落ちこぼれの東山や啓太らが加わり、積み重ねていく17歳の日々。すれ違いから遠のいていく距離。それでもやっぱり惹かれていく。

空が青ければそれでいい

Jekyll
BL
日々、喧嘩に明け暮れる秋山威乃はある日、学校の屋上で一人の男に出逢う。 年下とは思えぬ態度と風格の男は風間組次期後継者、風間龍大だった。 初対面のはずの龍大は威乃に対して、妙な提案を持ちかけてきて…。そして威乃の母親の失踪で動き出す、二人の関係とは。 【登場人物紹介】 秋山 威乃 Ino Akiyama 目が大きく、可愛らしいというフレーズのピッタリな顔付きをしている女顔である。 だが、その見た目にそぐわず喧嘩っ早く腕っ節も強い。 Height:168/Weight:51/Age:18 風間 龍大Ryudai Kazama 仁流会会長風間組組長、風間龍一の嫡男。 非常に難しい性格をしていて、感情を全く表に出さない上に言葉数が少ないのでコミュニュケーションを取るのが難しい男。 Height:188/Weight:80/Age:17 名取 春一Haruichi Natori 通称ハル。威乃の親友で幼馴染み。腕っ節も強く喧嘩っ早い。 もともと目付きが悪いので、すぐに喧嘩を売られる。 Height:174/Weight:60/Age:18 沢木 彰信Akinobu Sawaki 威乃とハルの幼馴染み。 風間 龍一Ryuichi Kazama 仁流会会長、風間組組長 梶原 秀治Syuji Kaziwara 仁流会鬼塚組若頭補佐。龍大の教育係でもある。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

処理中です...