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40 おいでませ生誕祭(3)

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「おまたせしました。みんなにたくさんすてきな贈り物をいただいたので、ここでみんなにお返しをしたいとおもいます」

 お返しになるかわからないけれど、と照れておいて取り出した中身、笛を構える。

 横笛だ。

 レーファはなんという横笛かは知らなかったけれど、いい香りがするので大好きな笛だった。母の形見だから大事に扱っている。
 子どもの手には少し大きいのだけれど、何度か吹いてみてクセや持ち方、運指のコツはわかっていた。

「おどりたくなったらおどってね」

 一吹きして笛の機嫌を確かめると、そのまま演奏を始める。街の定食屋や市場で聞いたことのある、賑やかで明るい曲だ。踊れる場所があるなら、そこで踊る者も出るほど賑やかな曲。
 聞いたことのある曲ならたいていの曲は演奏できるから、レーファが演奏できる曲のレパートリーは広い。

 初めは身分ある竜人の手前で大人しくしていた者たちも、聞き馴染みのある曲が続くからか、次第に表情が明るくなり始める。立ち上がらなくとも、手や上半身が踊り始めていた。
 一番に踊り始めたのはサンディラやヴェルティスだ。これは自分たちが率先して踊らねば踊りにくかろうと判断してくれたのだろう。

 レト王国の国民の気質は総じて明るく、歌や音楽、踊りを愛する。式典でも踊り子は欠かせぬ存在だ。正嫡たちの誕生祭や国王・王妃の生誕祭でも、大勢の踊り子たちが式典を盛り上げる。

 楽しげに踊る者を見るのはレーファも好きだった。母から踊りも習ったが、レト王国のものとは少し違う踊りだ。もちろん街に出た時や式典に参加した時に見た踊りも踊れる。披露する場がないだけで。

 明るく楽しく跳ねる笛の音が三曲目に差し掛かったところで、誰かが歌い始める。おそらく演奏が始まってから飲んだ酒が回ってきたのだろう、赤い顔をしていた。
 街で愛唱されるその歌は誰もが知る、男が美女に片想いをする歌で、レーファもリズムを取りながら吹く。
 時々音が外れるのは皆の様子に笑顔になるからだった。

 五曲を演奏しきると口笛や拍手が鳴り、レーファは少し照れながら「みんな、ありがとう」と礼を言う。

 それからは砕けた雰囲気になり、ラージュナもレーファたちと同じ料理を楽しんだ。時折料理の素材や調理の仕方を質問され、料理番が恐縮しながら答える場面もあった。
 レーファは葡萄、オレンジ、スイカ、メロン、パイナップルなど、果物がたくさん入った果実炭酸水を飲み、好物の激辛タンドリーチキンを頬張って幸せな時間を過ごした。
 本当に、こんなに好物ばかりで明日からの食事は大丈夫かと思うほどの料理や飲み物たちで、幸せな気持ちをたっぷりと味わう。
 ラージュナが差し入れてくれた料理やデザートの卵タルトも、密かにレーファのお気に入りになった。
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