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39 おいでませ生誕祭(2)

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 それからラージュナは場の者たちを見回した。

「まず、皆へ酒を持ってきた。これは誰彼構わず飲めるものとする」

 ラージュナの後から王宮付の侍従が数名現れ、各座へ酒壺を置いていく。実に手際がいい。もしかしたら王宮のほうでラージュナが似たような無茶ぶりをしているのかもしれない。
 少しばかり彼らを憐れに思う。

「酒菜も身分問わず食せるものとする。これは量も好きに食べて良い」

 そう言われて馬食できる豪胆は、さすがにサンディラでも無理ではなかろうか。酒が入ってしまえばわからないが。
 各自に新たな膳が配され、一気に賑やかになった。

「また、この場は無辜とする。……無礼非礼は問わぬ。酒の席だからな、そういうこともあるだろう」

 竜人がヒトに対して、考えられる限りの大盤振る舞いではなかろうか。何よりヒトへ施すなどといったことは、少なくとも侍女や料理番は考えられないだろう。

「それから」

 まだあるのかと思いつつラージュナを見ると、彼は侍従を振り返る。心得た侍従がふたり、大箱を抱えて入ってきた。

「誕生日は贈り物があったほうがいい。これは俺からだ。受け取れ」
「あ、ありがとうございます」

 おそらく服だろうと思うが、以前街へ出た時の服と違って、王宮で着ても良いような、式典などでも着られるような良い服のような気がする。
 箱を開けて中を見る許可を得ると、好奇心旺盛な子どものフリで蓋を開けた。

「わ……きれいな服がたくさん! あれ、これは……」

 端のほうに一面刺繍が施された布のくつがあることに気付いた。
 これは式典でも履けるような装飾のものと、普段履けるようなものの二種類がふたつずつだが、どちらも一足ずつはレーファのものにしては大きさが大きすぎる気がする。一足ずつはサイズが程良さそうなのだけれど。

「おとなのサイズ……?」
「大きいほうは大人になってから使え」
「…………」

 そこまで面倒を見たいのですか? と思ったが、そういえばこの竜人は長くて十数年はこの国にいるのだったと思い出す。

「ありがとうございます。この沓のサイズに合うあしになったら、たくさんはきますね」
「ああ」

 そこでようやくラージュナがレーファの隣に座り、宴が再開する。
 ――とはいえ、どこまで盛り上がっていいのか探る空気もあった。これはよろしくないと、今度はレーファが立ち上がる。

「みんな、少し待っていてくださいね」

 部屋を区切った先、寝台のすぐ傍にある引き出し棚へ行くと、迷わず自分の胸の高さの引き出しを開けた。袋に入った五十センチほどの長い何かを取り出すと、また引き出しを閉める。

(とりあえず……盛り上がらないまでも、皆の緊張は解したいな)

 主人として場を沈ませたままではいけない。
 盛り上がらないまでも、和ませたくはあった。
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