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36 月明かりの下で(4)

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(すっかり子ども扱いされてる……!)

 子どもだからそれはそうなのだが、中身が子どもではないレーファとしてはまったくの不本意。大人しく抵抗せずにいれば、可愛い子どもでいられたのかもしれないが、相手はただ可愛くしていていいだけの人ではない。

「あ、あの、それでしたらこの絨毯じゅうたんで充分です……!」
「そこは眠るのに適した場所ではない」
「ですが……、今わたしは無辜之札むこのふだを持っておりませんし!」

 良い言い訳を思いついたと思ったが、ラージュナはふるりと頭を振った。

「与えた事実があるのだから所持不所持は問わぬ」

 言い切る顔は腹が立つほど毅然としている。こんな時でなければ、見惚れていたかもしれないのが余計に腹立たしい。

(どういう理論……?!)

 何を考えているのか、本当に、まったく、わからない。

(く、そ……!)

 抱き上げられていて暴れるわけにもいかず、結果としておとなしく寝台に運ばれてしまった。下ろされると、ラージュナの夜衣の袖を掴む。

「ラージュナさまのお休みされる場所をうばうわけには……!」
「ならば、一緒に眠ればいいだろう」
「は?!」

 聞き返し方としてははなはだ不適切だと後から思ったが、ラージュナの寝台で眠ることが不敬ということでいっぱいだった頭では、そこまで考えられなかった。

「ほら」

 寝具用の布をめくられると、抱きしめられたまま横になる。つまり今のレーファはラージュナの腕の中だ。

(かえって眠れないと思うんだけど……?!)

 整った顔が、すぐ間近にある。なるべく顔を上げないようにしたい。
 大きな手がレーファの頭を撫でた。そうして、背も。

(……いつぶりだろう)

 誰かに優しく抱きしめられて眠るのは、今の体よりもっと子どもの頃のことだ。そうしてくれたのは、母以外にいない。母に抱きしめられて、あたたかく柔らかい手に撫でられて眠るのは、そういえば好きだった。

(きもちいい……)

 ラージュナの手は柔らかいわけではないが、優しい。だからつい眠気を誘われてしまうのかもしれない。
 森の中にいるような、よい香りも眠気を呼ぶ。心も体もほぐれていくような。

(後で絶対、面倒なことになりそうなのに)

 もう意識が保てない。

「……ん……」

 すぅ、と寝入ってしまった。
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